今の官僚制度がダメな理由――国家公務員のボーナス支給の報道――


 まず朝日新聞の記事の引用から始めることにする。

国家公務員の夏ボーナス「0.2カ月減」 人事院が勧告
2009年5月1日22時24分


 人事院は1日、6月に支給される国家公務員の夏のボーナス(期末・勤勉手当)について、一般職で0.2カ月分引き下げるよう内閣と国会に勧告した。35年ぶりの臨時調査による民間企業の支給額を反映。臨時勧告で引き下げを求めるのは初めてで、99年度の「年間0.3カ月減」以来の大幅な引き下げ勧告となった。


 勧告によると、夏のボーナスの支給基準は一般職員や幹部職員で1.95カ月分(前年比0.2カ月減)、本省の審議官級以上で1.45カ月分(同0.15カ月減)とした。完全実施されれば1割近くの減額で、行政職1人当たり平均約8万円減ることになる。


 配偶者と子供が2人いる世帯で見ると、支給額は40歳の係長で63万6千円(同6万6千円減)、45歳の本省課長で152万1千円(同15万8千円減)で、引き下げ幅はいずれも約9.4%。本省の局長の支給額は22万8千円(9.6%)減って213万4千円になる。


 例年8月ごろに行う勧告の一部を前倒しした。

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 今の不況で、日銀などは今年の日本経済がマイナス3%超の経済成長、つまり経済規模の3%強の縮小を予測している。そのような中にあって公務員に対してはボーナスがきちんと支給され、しかもたったの「0.2か月減」だという。この記事を読んで何も思わない人がいれば、私はその感覚を心底疑わざるをえない。なぜ、人々から集めた税金を食んでいる公務員が、民間の会社が軒並み赤字などで人件費削減に追い込まれている中で、この程度の人件費減(ほとんど減少と言えないほどの微差)で済んでよいだろうか。良いわけがない。


 しかも、今回政府はバラマキをやり財政赤字が相当膨らみそうな形勢である。しかも周知のように、政府の抱える財政赤字の膨大さは今に始まった話ではなく、以前からのものである。であれば、行政部門を一つの経営体として見るなら、行政(つまり国家公務員部門)は遥か以前から人件費削減を行なっていなければならないはずである。ところが、今回の記事によれば、今回の人事院勧告が「99年度の「年間0.3カ月減」以来の大幅な引き下げ勧告」なのだそうだから、つまりこれまでろくすっぽ、人件費削減は行なっていなかったのである。


 公務員に関して以前本ブログに書いた記事(こちらこちらこちら)との整合性を図る意味で付け加えると、もし公務員部門が総人件費を増やさずにワークシェアリングを行なうのなら(その場合、当然ながら、公務員一人当たりの人件費は減ることになり、つまり公務員の給料は減ることになる)、まだしも評価に値しよう。しかしどうも、そういうことにはなっていないようである(これまで、公務員部門でワークシェアリングを大々的に行なうなどという話は聞いたことがない)。


 この人事院勧告こそが今の官僚制度のダメさ加減を象徴している。こう言って、少しも言いすぎでないと私は思う。日本の官僚制度は改められなければならない。そしてもちろんそのためには、政権交代が不可欠である。



追記(2009年12月22日)
 もう数か月以前に書いたこの記事がなぜか11月末ごろからコメントの対象となった。おおよそ、2ちゃんねるかそのたぐいのところで、軽蔑的な形で言及されたのだろうが(一々調べる気もしないが)、コメントは見てのとおり、ろくでもないものばかりだったと言ってよい。特にしつこかったのが、最後にそのIPアドレスを公開することにした投稿者である。議論をする中で国家公務員とおぼしき輩と推測されたが、IPアドレスから判明したところによると、ウクライナ日本大使館に勤務している者らしい。外務省と言えば、専門調査員でなく外務省職員なら、給与の二重取りが可能になる立場だろうと思われる。別にうらやましいとも思わないが、こういう場末のブログのコメント欄に繰り返し書き込みをする(しかも、大使館のPCからすらアクセスして)その執拗さには、ただただ呆れるほかない。


 この際言っておくと、今から二十年前ぐらいであれば、公務員は安月給だが年金は充実している職だ、という認識を私は持っていたように思う。そしてたぶん、当時はその認識が的外れではなかったのだろうと思われる。が、その後バブル崩壊以降、民間の職が不安定になり(なお、言うまでもないが、民間での現在の雇用慣行・雇用状況に対して、特に経営側のやり方に対して、私は極めて批判的である)、不安定雇用か長時間のサービス残業かの二者択一が広まっていった中で、相対的に公務員の待遇の良さが際立ってきたように思われる。そのことは例えば、くだんの執拗な投稿者に加勢するつもりで他の投稿者が引用した記事からもわかる。


 「643社を対象に集計した」とあるが、その643社がおおむね大企業或いはそれに準ずる規模の企業であることは想像にかたくない。そのことは、経団連が発表した2009年冬の賞与妥結額(こちらは「調査対象は主要21業種、大手253社。東証一部上場、従業員500人以上が原則」とある)と、金額が大差ないことから窺える。つまり、先の新聞記事が書いている賞与額は加重平均で70万1571円であり、経団連の発表による賞与額は、加重平均で755628円、単純平均で671507円である。国家公務員の2009年冬の賞与は64万7200円だそうだから、私の感覚では大差ないと言わざるをえない。しかも、民間の場合は賞与の減少率が、日経の記事の場合には前年比14.81%、経団連の発表の場合には加重平均で15.01%、単純平均で13.47%であり、これに対して国家公務員は昨冬と比べて6.6%減である。全く大甘であり、やはり公務員は、国家公務員であれ(そして地方公務員はなおさら)、給料をもらいすぎているという印象を私は否定できない。


 ただ、繰り返しになるが、国家公務員よりもさらにひどいのは地方公務員であり、そして日本国民はよく理解していないが、地方公務員の状況を改めるには、国レベルの政権交代だけでは不充分なのである。地方の政治は、地方議会の議員は(ごく少数を除いて)ろくすっぽ仕事をしておらず、首長は(ごく少数を除いて)下から上がってくる予算その他をろくに修正せずに議会にかけて通し、という具合で、国政よりさらにひどいのである。そして政治がそうだから、政治に仕える行政部門(つまり地方公務員)は全くたるみっぱなしとなる。だから、退職金支払いのために地方債を起債するなどという話が出てくるのである。既に書いたように、多少でも経営感覚を持っていれば、人件費に手をつけずに行政改革を行なうなどということは考えられないし、そして手をつけると言っても、ブログの元記事で見たようなわずかな人件費減などというのでは、やったことにはならない。大幅に削減して、身を削って改革に取り組むという姿勢が当然求められる。


 他方で、これも繰り返しになるが、人件費を減らせと言ったからとて、私は雇用の不安定化を奨励しているわけでは決してない。その逆である。みなが給料を安くせよ、そうすることによって危機を乗り越えるべきだ、ということを私は言っているにすぎない。だいたい、そうでなければ、公務員のワークシェアリングを推進せよなどという主張がどうして意味を持ちうるだろうか?


 相手の主張を理解しない輩との議論ぐらい無意味なものはないということを、今回改めて思わせられた次第である。