民主党政権初の予算――問題も見えてきた


 民主党政権初の予算ができあがったという。朝日新聞の記事をまず見ておくことにする。

92.3兆円の政府予算案決定 人を重視、公共事業圧縮
2009年12月25日20時46分


 鳩山政権は25日、2010年度政府予算案を閣議で決定した。「コンクリートから人へ」を掲げ、公共事業の削減率を過去最大とする一方、社会保障は手厚く配分した。一般会計総額は92兆2992億円と過去最大に膨らむなか、予算の組み替えは進まず、借金頼みが加速。マニフェスト政権公約)関連予算も圧縮を迫られた。


 「コンクリート」の代表格である公共事業費は09年度当初比18.3%減の5兆7731億円と1978年以来の6兆円割れ。削減率は小泉政権下の02年度当初予算の10.7%をはるかにしのぐ。道路や港湾は25%も削減した。


 一方、「人」に関連する社会保障費は同9.8%増の27兆2686億円と急拡大した。中学生以下の子ども1人あたり月2万6千円(10年度は半額)を支給する子ども手当に国費1.7兆円も計上。医師不足対策として診療報酬も0.19%増と10年ぶりにアップ。年金や介護、雇用のための予算も増えた。


 この結果、社会保障費は、各省庁が政策に使う一般歳出(53兆4542億円)の半分を初めて超えた。高校の実質無償化の費用増で文教費も同8.2%増の4兆2538億円に急増した。


 「地域主権」を掲げる立場から地方税収の落ち込みを補うため、地方自治体に配る地方交付税など地方への配分額は5.5%増の17兆4777億円と過去最大になった。


 このため、歳出総額は09年度当初予算より3兆7512億円(4.2%)も増えた。


 歳入面は、火の車だ。


 景気低迷で10年度の税収は18.9%減の37兆3960億円。新規国債の発行額は過去最大の44兆3030億円に上り、目標とした「約44兆円以内」はかろうじて守ったが、当初予算段階としては戦後初めて借金が税収を上回った。


 鳩山政権は公約実現に必要な財源は、一般会計と特別会計の予算の全面組み替えでひねり出すとしてきた。「霞が関埋蔵金」と呼ばれる特会の剰余金などによる税外収入を15.8%増の10兆6002億円まで確保した。財政投融資特会と外国為替資金特会を中心に計8特会から7.9兆円を一般会計に繰り入れた。外為特会では、本来は計上できない10年度分の剰余金を法改正して計上するという異例の措置でつじつまをあわせた。


 しかし、行政刷新会議の「事業仕分け」による削減額は約7千億円どまりとなったこともあり、公約関連予算の圧縮を迫られた。ガソリン税などの暫定税率の廃止は見送り、子ども手当は現行の児童手当の仕組みを残して地方自治体や事業主に負担を求める。公約で7.1兆円としていた必要財源は、減税分を含めて計3.1兆円に減った。


 公約の工程表通りなら、11年度は12.6兆円の財源が必要になる。10年度末の国と地方の長期債務残高は862兆円と、国内総生産(GDP)の1.8倍に達する見通しで、中長期的な財政再建目標の設定も急務だ。(福間大介)


 ところで、さきほどNHKで、政権発足から今回の予算政府案決定までを追う番組をやっていたが、その中で、障害者(障碍者)関係で厚労省が300億円を要求したところ、3分の1しか認められず、200億円を削られたというような話があった。この後で見た記事だから余計に強く印象を受けたということもあるのだが、民主党の平岡議員の「今日の一言」の最新記事をここで紹介しておきたい。

12月25日 岩国基地関係の来年度予算


 本日、鳩山政権で初めての当初予算となる平成22年度予算の閣議決定が行われました。当初予算としては最大規模の92兆円余の予算となりましたが、この予算の中には、米軍岩国基地関係の予算が含まれています。その中で、岩国市民の皆さんにとって特に関心の高いのが、米軍再編(空母艦載機の厚木から岩国への移駐)予算で、防衛省所管で約470億円(契約ベース)、国土交通省で約20億円(民空関係)ありました。


 一般的には、予算が計上されることは有難いことなのですが、今回の予算計上には、大いに問題があります。特に、愛宕山用地買取経費約200億円については、地元の住民の皆さんに事前に何らの説明の機会が設けられることもなく計上されました。ある記者から、以前「前政権時代に既定路線になっている」と聞いたことがありますが、地元住民の皆さんへの説明もなく、官僚が敷いていた路線をそのまま踏襲してしまったと言えると思います。


 私としては、新政権発足時に21項目の要確認事項(「空母艦載機の移駐問題に関する要確認事項」、9月30日付の「今日の一言・在日米軍再編見直し」に掲載)を防衛大臣外務大臣等に提示して検証を求めていたにも拘らず、このような事態に至ったことを大変申し訳なく思っています。そして、今回の件については次の通りコメントさせて戴くこととし、防衛省及び外務省の政務三役(大臣、副大臣大臣政務官)にも伝えました。


『1、民間空港再開に必要な事業に係る予算計上は、政府も「空母艦載機の受入れが条件となっているものでない」ことを認めているところであり、米軍再編問題発生のずっと前から地元の要請であったことに応えるものと理解している。


2、しかしながら、空母艦載機移駐関係の予算(特に、愛宕山地域開発の土地買取り、岩国基地内施設整備等)については、私が新政権発足時に21項目の要確認事項(「空母艦載機の移駐問題に関する要確認事項」)を防衛省及び外務省に提示し回答を求めていたにも拘らず、地元住民の皆さんに対する説明の機会を作ることもなく今回多額に計上されたことは、極めて遺憾である。


3、地元住民の皆さんに対する説明の機会が新政権発足後今日まで作れなかったことは、政府が普天間基地の移転先問題に奔走していたこともその原因の一つであると思われるが、説明の機会がこれまで十分に作れなかったことからすれば、今回の空母艦載機移駐関係予算は、辺野古関係予算と同様、「計上はするけれど執行は見合わせる」とすべきである。


4、私としては、「空母艦載機移駐関係予算は、21項目の要確認事項に関する説明も含め、あくまでも地元住民の皆さんに対する説明責任が果たされた後でなければ執行すべきではない」と考えており、政府に説明責任を果たすための行動を速やかにとるよう強く要請したい。』


 防衛大臣は、予算の閣議決定前ではありましたが、「できる限り早い機会に、地元の皆さんに説明をする機会を持ちたい。」との意向を示していましたので、是非その機会を早く作りたいと思っています。



 ところで、上記の21項目の要確認事項については、昨日(24日)、防衛省から「回答」をもらいました。末尾に添付していますのでご覧になって戴きたいと思いますが、はっきり言って、「これまでの政権が行ってきたことを正当化しよう」という意識が強く出すぎており、新政権の防衛省・外務省の政務三役による十分な検証がされていないのではないか、と私は思っています。


 例えば、「厚木から岩国への移駐は日米両国のどちら側からの提案か」の問に対して、「日米のどちらかが提案したというものではない」(1、(1)?)と回答していますが、守屋・元防衛事務次官は、07年11月号の「月刊現代」で、「岩国への移駐は自分(守屋)の発案であり、当時の国務次官補が、『それは良い案でやってみる価値がある』と言った」旨の記述を行っています。その事実を全く知らない素振りです。


 また、「岩国への移駐以外の選択肢はあり得ないのか」の問に対しては、防衛省が自分達で勝手に条件を作って「他の基地においてこれらの条件を満たしているところは、存在しませんでした」(1、(1)?・?)と回答しています。私が具体的に尋ねた「グアム」については一応の説明があるものの、現在、空母艦載機の夜間離発着訓練を行っており、かつ、これらの条件を満たしていると考えられる「硫黄島」についての言及は全くありません。


 更に、「防衛省が岩国市役所建替え経費の補助金をカットしたこと」についての質問に対し、「4 最後に」で「強引な方法により、市民の間に混乱や迷惑をかけたり、行政に対する不信感を募らせるようなことは決してあってはならないと考えています。」と言いながら、他方で、そのカットを正当化するための言い訳を展開しています(1、(2)?)。岡田外務大臣が10月27日の記者会見で防衛省補助金カットのやり方を批判しているにも拘らず、です。


 更に、「愛宕山用地の買取り要請に応じる場合、その土地利用策定はどのように行うつもりか」との問に対しては、「買取り後の土地利用は地元の意向も十分考慮して、決定することとしています」(2、(2)?・?)と回答していますが、その前段で「買取の経緯」を述べる中で、「米軍家族住宅用地としてなら、山口県と岩国市からの買取り要請に応じる」ものであることを明らかにしています。


 いずれにしても、普天間基地の移設問題で多大の時間と労力を費やしてしまった新政権ですから、岩国への空母艦載機移駐問題については、今から本格的な検証を行ってほしいと思っています。その観点からも、政府による現地の住民説明をできる限り早く実現して行きたいと考えています。
(以下、防衛省からの回答書が掲載されている――ここでは略)

 こういうところで、無駄なことに金がつけられている。しかも、「愛宕山用地買取経費約200億円」は、これをそのまま上記の障碍者関係に回せば、少なくとも2010年度は厚労省の要求どおりの資金の手当てがつく規模の金額である。


 しかも、平岡議員のこの記事によれば、民主党政権が少なくとも防衛に関しては前政権の方針を踏襲しようとしているかのごとき印象を与えているという。これは単にこの一事にとどまらない重大な問題である。言うまでもなく、民主党政権の使命は、前政権と異なることをするという点にこそあるのであり、それは防衛という分野にも当てはまるはずなのだから。


 だいたい、今回の予算政府案でも防衛関係の予算総額は4兆7903億円だとのことだが、そんなに必要なのか。防衛予算ではよく、高いものを購入して後年度負担などという形がよく使われるやに聞いているが、こここそまさに予算削減のメスが入れられるべき領域なのではないか。鳩山政権が防衛大臣に北沢などという輩を当てたことに私は失望しており、果たしてこの北沢とやらは、グアムにちょっとさわってきたぐらいで「海兵隊のグアム移転は無理だ」などと抜かすような、全く役に立たない(その意味で、予想どおりの)活躍をしてくれているが、これはやはり(平野とやらを官房長官に当てたことと並んで)人選ミスだったと言わざるをえない。


 平岡議員は今後は国家戦略室入りをして、政府内部から予算の問題にも携われることになるようだ。同議員は、共謀罪創設防止などで活躍したこともあり、また安全保障に関しても総合雑誌に論文を発表するなどしており、大変期待のできる政治家である。理想的には、こういう政治家をこそ、例えば防衛大臣に据えるべきだと私などは思うが、仮にそうならないとしても、同議員には活躍を期待したい。そして、平岡議員だけでなく、政府に入っていない民主党の政治家たちは、これから行なわれるであろう予算審議において、実のある審議を行なって予算を修正し、民主党政権によりふさわしい予算案を作り上げるよう努力してもらいたいものである。