遅すぎ、ピントはずれの「生活防衛のための緊急対策」


 経済について書く場合、本ブログの書き出しはいつも同様である。すなわち、私は経済に関するド素人だと言ってよいが、しかしそのド素人であっても、書きたいこと、書かなければならないと思うこともあるのである。


 今日の夕方、テレビのニュースが変わっており緊急記者会見だという。見ていると、麻生が何やら話をしていたが、要するに内容は、表題に書いたような話だという。末尾に関連記事を引用しておくことにする。


 今ごろ雇用対策だそうだが、はっきり言って遅すぎである。もしこれが10月30日時点で出ていれば日本の政治もまだ捨てたものではなかっただろうし、11月中に出ていても、遅くはあるかもしれないが、会期延長をして12月中に法案を成立させて速やかに実行に移せれば、まだしも意味があるかもしれない。しかし今回麻生が言っている話は、実際に法案となるのは来年1月以降の話であり、しかも今日の話は「08年度第2次補正予算と09年度予算に盛り込む」とのことだから、少なくとも一部の実施は4月以降ということになる。これでは全く遅すぎである。


 私の素人目から見ても、雇用対策の実施はまずこの年末までに必要なのであり、この時期を逃すことは政治の重大な失態だと言ってよい。そして今打ち出すべきは、「離職者の住宅確保のための事業主への助成や住宅入居費用の貸し付けなどの住宅対策」などといったものではない(これらはとうの昔に打ち出されているべきものである)。今打ち出すべきは、政府がどうやって新たな雇用を創出するか、ということに関する政策である。


 ではどうやって新たな雇用を創出するか。道路工事に代表される公共事業が良いとは思わないが、しかし「誠橋」のような極めつけの無駄な代物でなければ、特に都市部を中心に実施する意味はあるかもしれない(具体的には、過去記事で書いたが、都市部の道路に自転車道を設けるというような道路工事は社会的にも大きな意味があるように思われる)。そして、これに必要な金は、足りなければ国債発行によって賄ってよいだろう。


 ただ、それだけでなく、いわゆるワークシェアリングの考え方に基づく「雇用創出」もこの際重要だろう。今回の不況は近年にないものだということは、誰しもが口を揃えて言っているところであり、つまり、容易には需要の創出はできないだろうということが大方の予想だと言える。であるなら、パイを増やせない以上は、既に在るパイを分け合うよりほかに方法はあるまい、ということになる。


 では具体的にどうするか。私は、公務員の人件費の総額を増やさないままで、一人当たりの給与を減らして、減らした分で雇用を創出するのが良いと考える。つまり、公的部門においてワークシェアリングを率先して実施すべきだというのが私の意見である。


 公務員は安定しているので不況時には就職先として好まれるなどという話がよく聞かれる。安定しているのが悪いと言うわけではないが、しかし元来、公務員は国民の税金で禄を食んでいるのだ、ということがあまりにも忘れられていないだろうか。民間では首切りが横行しているのに公務員はのほほんと、給与だけでなく賞与までもらい、しかもその公務員が運営する自治体は巨額の財政赤字を抱えており、などというのはどう考えても話がおかしいのであって、赤字の民間企業なら、当然賞与のカットさらには給与のカットと来て、そのうち人員整理が始まるなど、人件費の抑制という話が当然出てくる。私自身は、人をむやみやたらと解雇する今の日本の企業のあり方には非常に批判的だが、しかし今の日本の公務員のあり方はあまりにも対極的であり、それもまたおかしいと言わざるをえない。しかも地方では、民間企業に働く人間より公務員のほうが給与水準が高いなどという話も聞く。言語道断である。


 こう言うと、ならばおまえは公務員の人減らしを主張するべきだと言う人があるだろうか。しかし私はそうは言わない。特に今のような不況時に、雇用を創出できる最大の経済セクターは公的部門だからである。だから、公的部門よ、今やるべきことをちゃんとやれ――私はこう言っているにすぎないのである。


 「生活防衛のための緊急対策」に関する毎日新聞の記事は次のとおり。

麻生首相:雇用対策など23兆円の緊急対策発表 

 麻生太郎首相は12日、首相官邸で記者会見し、新たな雇用対策などを盛り込んだ23兆円規模の「生活防衛のための緊急対策」を発表した。首相は「3年後の消費税引き上げ」を税制改正の道筋を示す「中期プログラム」に盛り込む考えを強調した。対策には概算要求基準(シーリング)の枠外となる1兆円の「経済緊急対応予備費」が盛り込まれ、小泉政権以来の財政再建路線を転換することが明確となった。


 民主党小沢一郎代表が「話し合い解散」に言及することに首相は「話し合うつもりはない。(解散時期は)私が判断させていただく」と語った。


 首相は「100年に一度の危機だが、被害を最小限に抑えることは可能」と緊急対策に理解を求めた。そのうえで「大胆な財政出動をするからには、中期の財政責任も示すことが責任政党の原点、矜持(きょうじ)だ」とし、3年後の消費税増税を中期プログラムに書き込む必要性を強調した。ただ、公明党は首相方針に反発しており、与党との調整は難航が予想される。


 緊急対策は(1)公共事業や住宅減税などからなる財政上の対応10兆円(2)資金繰り対策などの金融対策13兆円−−の2本柱。08年度第2次補正予算と09年度予算に盛り込む。


 緊急対策のうち雇用対策では、離職者の住宅確保のための事業主への助成や住宅入居費用の貸し付けなどの住宅対策などに計1兆円。地方対策の目玉で掲げていた地方交付税の増額は、公共事業拡充による雇用創出を名目に、1兆円を交付する。さらに「経済緊急対応予備費」として、シーリングにとらわれず柔軟に支出できる予算1兆円を確保する。


 金融対策では、2兆円規模で企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)を日本政策投資銀行を通じて買い取るほか、日本政策金融公庫による1兆円規模の低利融資を実施。金融機能強化法による金融機関への資本注入枠(現行2兆円)を12兆円に拡充する。【古本陽荘、清水憲司】