政府の金は国内の景気対策に使え


 経済について書く場合、本ブログの書き出しはいつも同様である。すなわち、私は経済に関するド素人だと言ってよいが、しかしそのド素人であっても、書きたいこと、書かなければならないと思うこともあるのである。


 国の恥である麻生太郎首相が、今回のG20金融サミット閉幕後の記者会見で「今回の会合は、歴史的なものだったと後世言われると思う」などと愚かなことを言っているが、今回の金融サミットが何らかの意味で評価に値するなどと語っている識者の声を私は未だ目にしていない。だいたい、「歴史的なものだったと後世言われると思う」などという発言は、当事者の発言としては全くふさわしくない(このような言い方は傍観者或いは物見遊山の観光客にこそふさわしい)。麻生の阿呆は自分が当事者性を欠いていることを自ら暴露したも同然である。


 加えて、日本政府は今回のサミットでIMFへの最大千億ドル(約10兆円)融資ということをぶち上げたとのことだが、そんなことに回す金があるならむしろ国内の景気対策に回せと言いたい。だいたい、10兆円ものカネを国会での決定を経ずに融通できると思いこんでいるこの思い上がりを何としたものか。もしそれが合法であるのなら日本の政治システムには重大な欠陥があると言わざるをえないし、もしそれが違法であるのなら、当然、法を犯した犯罪者たる首相は逮捕されるべきである。


 私は麻生ばかりをこき下ろしているように見られるかもしれないが、もちろんそうではないのであって、麻生や中川昭一だけでなく(特に経済問題に関しては、この連中にはさるぐつわをはめることがふさわしいということは、本ブログの過去記事で既に述べた)、それをサポートするべき財務省や特に外務省の連中がダメだから、日本の政治はダメなのである。


 今の日本経済に必要なのは、あらゆる方法で景気を振興するべく、大型の財政出動の可能性も含めて検討を行なうことである。もちろん、政策の実施に当たっては、効率が良いと思われるものから手をつけていくべきであって、例えば、評論家の森田実氏が最近主張しているような「港湾の整備」は投資効率が低いので、少なくとも直ちに行なうべきではない(これについては末尾に引用する記事を参照)。まず実施するべきは、民主党が年来主張している高速道路料金の無料化だろうと思われる。物価の低減に寄与する可能性が高いからである。また、失業手当等の充実によって、今後予想される失業者の増加の対策に万全を期するべきである。今朝の朝日新聞ではノーベル経済学賞受賞者のPaul Krugman氏のインタビュー記事が載っており、氏は大規模な財政出動の必要性を主張していた。確かにそのとおりではないかと思う。とにかく、日本政府はまず日本のことにかかずらうべきである。国際金融秩序の安定が重要でないとは言わないが、金融危機は基本的にアメリカ(或いはその関連で、ヨーロッパ)に端を発する問題であり、解決にかかわるべきは欧米諸国自身である。


 というようなことを、麻生の阿呆はわかっているのかね? 見るだにそう思えないところがなんとも情けなく、なんとも腹立たしい。何しろ「ふしゅう」の士だからなあ。


 本文中で触れた港湾の整備に関する朝日新聞の記事は次のとおり。

重要128港湾、半数が「赤字」 税金で穴埋め
2008年11月15日10時57分


 全国に128ある「重要港湾」のうち、施設使用料など自力での収入で維持管理費といった支出をまかなえない「赤字」の港が半分近くの58に及ぶことが、国土交通省の資料でわかった。不足分は地方自治体や国の財政支出で補っている。「赤字港」をなくすには、全国への分散投資を続けてきた港湾整備を見直す必要がある。



 資料は、港湾を管理する地方自治体などが国交省に提出した06年度収支決算報告書。港湾は港湾法で独立採算が求められ、自治体などが公営企業会計方式で運営している。全国約1千ある港湾のうち「重要な物流拠点」として重要港湾に指定された128港が対象。報告書によると、支出は人件費や維持補修費など。一方の収入は、自ら稼いだ施設使用料や水域占用料が中心。貨物船などが港に寄らなければ入ってこない。


 収支バランスが最も悪かったのは岩手県北部の久慈港。支出に対する収入の割合はわずか3.6%だった。9割近くの10億円は岩手県が穴埋めしていた。21の港で5割を下回った。いずれも自治体などが税で穴埋めしていた。


 さらに防波堤建設や浚渫(しゅんせつ)など建設関連費用を合わせた支出でみると、収入でまかなえる港湾はひとつもなかった。この比率は、国交省が国際競争力がある重要港として「スーパー中枢港湾」に指定している京浜(東京、横浜)、阪神(大阪、神戸)、伊勢湾(名古屋、四日市)などでも3割以下にとどまっている。


 日本の港湾は、アジアの主要港に差をつけられている。06年コンテナ取扱量は京浜港が約720万TEU(1TEUは20フィートコンテナ1個分)だが、シンガポールは約2480万TEUと3倍以上。上海は約2170万TEU、釜山も約1200万TEUだ。(佐藤章)