ひどいのは麻生首相だけではない――「財界総理」は即刻退陣せよ(追記あり)


 今では経団連会長を「財界総理」とは呼ばないようなので、今回の記事の見出しはやや不適切かもしれないが、あえて、政治の総理大臣と「経済界の総理」の両方がろくでもない輩であることを強調するために、こういう見出しとした次第である。


 とにかく、言うまでもないが、まず麻生首相には即刻辞めていただきたいものである。ここへ来てメディアの世論調査で揃って低支持率が発表され、ようやく麻生のケツには火がついたようだが、それだけではまだ、首相の座に恋々とする馬鹿者の退治・駆逐・駆除はできない。さらに世論が盛り上がり、麻生が辞めるところにまで至ってほしいものである。というのも、アメリカのオバマ政権が誕生するより以前に麻生のバカに辞めてもらわなければ、日本は今後、(私の見立てではオバマ大統領の就任以後直ちに)激動期に入るであろう国際政治の中で、バカな指導者を抱えているばっかりに途方もない失敗をしてしまう可能性があるように思われるからである。


 しかし、日本でひどいのは首相だけではない。もちろん、ああいう欠陥首相を輩出した与党自民党も当然ひどいのだが(今自民党には重大なる製造物責任が問われている)、それだけでなく、経済界のリーダーも実にひどい。経団連の前会長、トヨタの奥田氏なる人物がろくでもない輩であることは本ブログのこの過去記事で既に述べたが、それに輪をかけてと言ってよいだろう、現会長の御手洗はもっとひどい。キヤノンという企業がより一層劣悪だからである。


 周知のように、大分のキャノン関連会社(というよりむしろ、キャノンという会社の一部と言ってよい――単に分社化をしているにすぎないのだから)が請負・派遣労働者を1200人削減するということが報じられている。この話題に関する朝日新聞の記事を引用しておくと、

請負・派遣1200人削減 大分キヤノン、デジカメ不振
2008年12月4日7時6分


 キヤノンのカメラ生産子会社、大分キヤノン大分県国東市)が製造現場で働く1千人超について、請負会社などとの契約を解除することがわかった。デジタルカメラ販売が伸び悩んでいることに対応する。厚生労働省関係者によると、年内にも実施され、多くの人が職を失うことになる見込みだ。


 大分キヤノンが解除を検討しているのは、ライン生産などに従事する請負会社8社(従業員計1131人)との請負契約や、派遣会社13社(計46人)との派遣契約。請負・派遣会社の従業員とも、契約解除が直ちに解雇につながるわけではない。


 一方、大分キヤノンはホームページで、自社で直接雇用する期間従業員を募集しているが、人数について親会社のキヤノンは「決まっていない」としている。


 デジカメ市場はここ数年、年率2〜3割と右肩上がりで伸びてきた。だが、金融危機で海外需要が伸び悩み、08年の世界の出荷台数は初めて前年実績を下回る見込みだ。デジカメ各社は相次いで販売計画を下方修正。最大手のキヤノンは10月末、コンパクト型を2500万台から2350万台に改めた。


 競争激化で、コンパクト型の販売価格は落ち込んでおり、「消耗戦が加速している」(アナリスト)という。


 今回の人員削減計画について、親会社のキヤノンは「こちらで出した数字ではないので把握していない」(広報)と話している。

 この記事で驚くべきは最後の一文であって、すなわちキヤノン自体は、今回の解雇について「こちらで出した数字ではないので把握していない」と言い、これで自らは免罪されるとでも思っているらしい、ということである。とんでもない。形式的には、大分で労働の場を提供してきたのはキヤノン自体ではなく大分キヤノンであり、かつそこに労働者を派遣していた会社が今回の人員削減の数字を直接的には算出しているのだろうが、しかしそれはあくまで形式的な話であり、実質的には、人を相当数減らせと言ってきているのは間違いなく大分キヤノンであり、そして大分キヤノンは単に分社化の結果キヤノンと別会社になっているだけであって、実際にはキヤノンという会社の中の一部門にすぎない。であるから、実際に人減らしを実行しているのは、ほかでもないキヤノン自身なのである。それを、「把握していない」はないだろう。この会社は人間でなく鬼畜の集まりかと思ってしまう。


 この件に関しては、御手洗自身もキヤノン広報部と同じ答えを繰り返しているようである。それを伝える朝日新聞の記事を引用しておくと、

派遣・請負切り 御手洗会長「苦渋の選択」
2008年12月8日21時15分


 日本経団連御手洗冨士夫会長は8日、定例会見で、非正規雇用者を削減する動きが企業側に相次いでいることについて、「世界的な景気の落ち込みで各社が減産に追い込まれ、苦渋の選択として雇用調整が行われている」と述べた。


 そのうえで、雇用回復には「一日も早く景気を浮揚させるのが大事だ」との認識を示した。


 また、御手洗氏が会長を務めるキヤノンデジタルカメラ生産子会社、大分キヤノンが請負会社などとの契約を更新せず請負社員ら1千人規模が削減される見通しとなったことについては、「(報道には)かなり誤解があった」と述べたが、「一企業の会見の場ではない」として説明しなかった。


 会見後のキヤノン広報部の説明によると、大分キヤノンが、デジカメの世界的な販売台数の落ち込みなどで減産することを請負会社に通知した。削減人数については雇用主である請負会社が決めるため、キヤノン側としては「把握できない」といい、御手洗氏の発言は、キヤノン側が直接、請負社員らの削減を指示したのではないことを述べたものという。

 御手洗が「(報道には)かなり誤解があった」と言い、会見後にキヤノンの広報部が会長の発言の意図を説明して「御手洗氏の発言は、キヤノン側が直接、請負社員らの削減を指示したのではないことを述べたもの」だと言ったという。つまり、これら連中は、上で指摘した形式論によって、自らは人員削減の責めを免れるとでも思っているらしい。ふざけるなと言いたい。日本の経済界は、こういう破廉恥なことを平気で言う会社のトップを自分たちのリーダーに据えるほどにまで、落ちぶれてしまったのか。


 しかも、キヤノンは一方で人員削減をやりながら、他方で新たな期間工を募集することもしていたのである。これに関しては社民党の保坂展人議員のブログの記事が詳しい。つまり、3年継続して雇ったら正規雇用の申し込みをしなければならないという法律の規定を何とかして免れようと、はっきり言って法の趣旨を全く曲げた脱法行為的な経営をキヤノンは行なっているのである。


 そもそも、忘れてはならないが、御手洗が日本経団連の会長になった時(2006年5月)、キヤノンという企業への外資の出資比率は50%を超えていた(これに関しては本ブログのこの過去記事で引用した朝日新聞の記事<外資50%超、政治献金OKへ 改正案が衆院委で可決>をも参照)。つまり、本来的な意味でキヤノンは日本の経済界を代表しない(代表するべきでない)企業だったのに、その企業のトップが日本経団連の会長に就任したのである(その後、2006年6月末になってようやく外資の出資比率が50%を割り込んだということである)。このことからも、キヤノンという企業がいかに滅茶苦茶かがわかろうというものである。否、日本経団連という団体がいかに滅茶苦茶かがわかろうというものである。


 昨晩NHKのBS−1「きょうの世界」で、日本の自動車メーカーがアメリカで工場を作ってビッグ3を脅かしつつある云々という話をやっていたが、その中で見た数字では、アメリカで日本の自動車メーカーの工場に務める人の給与は時給換算だと4000円を若干超すとのことだった(私の記憶違いでなければ)。話では、それでもビッグ3の労働者よりは安いという方向で進んでいたのだが、しかしこの数字は、たぶん間違いなく、日本で派遣・期間工として働いている人々の賃金水準よりは高いだろうと思われる。ネット上でよく言われているとおり、日本の自動車メーカーは外国で雇う労働者たちよりも日本で雇う日本人の労働者を冷遇しているようである。これが、日本経済を支えてきたとかいう輸出産業とやらの現在の実態なのではあるまいか。日本経団連は、そういう輸出企業のトップが、つまり日本人労働者を虐げる企業のトップが、代々リーダーとなってきた団体であると言ってよいだろう。このような事態は何としても改められるべきである。


 輸出企業に対してバッシングをするべきだと言いたいわけではない。しかし、輸出企業の言い分(=日本経団連の言い分)だけを聞いているようでは日本経済には将来の希望はないだろうと思う。内需拡大をするというか、それよりむしろ、国内で賄えるものは国内で賄い、しかもそのような割合を高めていくことによって、日本経済に占める輸出企業の重要性を相対的に下げていくことが今の日本には必要だと思われる。そうしないでは、日本人(特に労働者、中でも特に、非正規の労働者)は浮かばれない。


 ともあれ、キヤノンはひどすぎる。御手洗には即刻経団連会長を退いてもらいたいものである。



 追記(12月24日)
 キヤノンがいかにひどい企業であるか、上でも書いたが、その具体的な手口が保坂展人社民党衆議院議員のブログで紹介されている(リンクはこちら)。以下一部引用しておくと、

(前略)
 キヤノンは06年に「偽装請負」で問題となってから、表向きはキヤノンが生産工程に指揮・命令・監督を加えない「完全請負」に見えるように巧妙な工夫を凝らしてきた。従って、
キヤノンの工場内に別会社(下請け会社)あって、キヤノンは発注伝票を出して、製品を受け取るだけという仕組みに近づけた。だから、キヤノンが行なったのは伝票に記してきた「発注数」を「1000→100」と減産しただけであって、「解雇」は下請け会社が勝手にやったことで、まったく関知しないという理屈だ。


 この「キヤノン式無責任首切りシステム」をやめさせるには、下請け会社で働く請負労働者に対しての発注元(キヤノン)の雇用責任を明記する新たな「労働者保護法制」を提出・成立させる以外にない。実は、野党間で準備している製造現場への派遣禁止を盛りこんだ労働者派遣法改正案を成立させても、このキヤノンの巧妙な下請け生産方式は生き残り、規制を受けない。さっそく野党間で協議する必要があるだろう。

 労働者の解雇を、発注減という、あたかも物減らしか何かのように行なうわけである。これは単なる偽装ではなく、遥かにより悪質な、非人間的欺瞞と評してよいのではないだろうか。つくづく、キヤノンという会社のひどさと、こんな会社のトップを会長に据えている経団連という組織の劣悪さとを思わざるをえない。