社会をましにするために我々にできることとは――すかいらーくをめぐる報道に接して


 [社会]と題する記事を書くことが最近増えてきた。政治がどうしようもないていたらくであることもあるが(言うまでもなく、その原因の大半は政府・与党のどうしようもなさに求められる)、それだけでなく、社会の問題がいろいろな形で噴き出しているように思えるからでもあろう。噴き出し始めているのかどうかまでは、私には判断しかねるが。


 引用したいメディアの記事(朝日新聞の記事)は次のとおり。

すかいらーく非正規社員の店長に過労死認定
2008年7月17日19時57分


 外食大手「すかいらーく」(本社・東京都武蔵野市)の店長で、昨年10月に脳出血で死亡した前沢隆之さん(当時32)=埼玉県加須市=について、春日部労働基準監督署が過労死と認定していたことが17日わかった。前沢さんは契約社員で、過酷な長時間労働が正社員だけでなく非正規社員にも及んでいる実態が浮かび上がった。


 同日会見した遺族らによると、前沢さんは91年、高校2年のときに自宅近くのすかいらーくでアルバイトを始め、卒業後も働き続けた。


 06年3月に1年更新の契約社員になり、栗橋店(埼玉県栗橋町)の店長を任されてから過重労働が始まった。


 店舗は朝5〜8時を除く21時間営業。店長以外は全員がアルバイトやパートだったため、毎日朝7時〜深夜2時ごろまでの勤務が続き、休みは月に数日程度。アルバイトが急に休んだときは穴埋めで働いた。遺族の計算では、亡くなる直前の3カ月間の残業時間は、月平均200時間を超えていたという。


 今年4月に遺族が全国一般東京東部労組の支援を得て労災を申請。残業時間は会社のタイムカードなどでは月40時間程度になっていたが、労基署は遺族や関係者からの聞き取りの結果、過労死の認定基準である月80時間を超えると判断し、6月13日に労災認定した。労基署は、店長としての責任の重さも認定の根拠として挙げたという。


 母親の笑美子さん(59)は「息子は責任感が強く、頼まれたら断れない性格。そんな性格を会社にいいように使われた。上司が誰も息子の健康に心を配ってくれなかったのが悔しい」と話した。


 同労組によると、最近は「アルバイト店長」のような人から長時間労働の相談を受けるケースが増えてきたという。書記次長の須田光照さんは「低賃金で不安定雇用の非正規社員の店長に、長時間労働と責任まで押しつけているのが実態だ」と批判する。


 すかいらーく広報室は「事実関係を確認していないので現時点ではコメントできない」としている。同社では04年8月にも、正社員の店長だった神奈川県の男性(当時48)が過労死している。

 この記事を読んで理解できないことは少なくない。例えば、店長が非正規雇用であるなどということが一体全体どうして可能なのだろうか。また、「残業時間は会社のタイムカードなどでは月40時間程度になっていた」という。記事から明らかなように、このタイムカードの情報は明らかに嘘なのだが、なぜこのような嘘がタイムカードに記されていたのか。当然そこには、会社からの何らかの締め付けが働いていたはずであり、それがどのようなものだったかが私にはわからない。


 ところで私などは、こういう記事を目にして日本社会の悲惨さに心を痛める多くの人の一人だが、もちろん社会的影響力のかけらすら持っているわけでは少しもない。そのような私のような人間に、こういう記事を目にして何ができるか。できることは多くはないが、しかし何もないわけではない。


 まず、このように人間を非人間的にこき使うすかいらーくのようなところを決して利用しないことである。同じようなことを以前マクドナルドについても書いたが(その記事はこちら)、我々にまずできることはこれである。こういうことをすると、その企業が減益などを通じて業績悪化に陥り、そこで働いている人に迷惑をかけると思う人もあるかもしれない。確かに短期的にはそうかもしれない。しかし中長期的には、そのようにして反人間的・反社会的な企業が退場していけば、そのことは、働く人々にとっても必ずやプラスであるはずである。また、夜遅く(或いはむしろ、朝早く)まで営業しているようなレストランのスタイルも変わるのではなかろうか。夜遅くの営業に便利さが全くないとは言わないが、しかし、どう見てもそれは、人間的な営業スタイルではない。


 そして、そのような反人間的・反社会的な企業を批判する声を上げることである。本ブログのような場末のブログが一つだけ書いてみても意味はないだろうが、しかし諺に「ちりも積もれば山となる」と言うとおり、そのような声が数百、数千、さらには数万となってくれば、世の中も多少は良い方向に変わっていくのではなかろうか。