北朝鮮問題で始まっている「日本外し」

 今日の記事は朝日新聞のこれと毎日新聞のこれだが、まず朝日新聞のから引用しておくと

朝鮮半島の平和協定協議は「初期段階後」に ヒル氏言及
2007年06月26日13時27分


 北朝鮮核問題の6者協議で米首席代表を務めるヒル国務次官補は25日、国務省で記者会見し、「核施設の無能力化の段階に入れば、朝鮮半島の平和体制協議も始めることが出来る」と述べた。現在の朝鮮戦争の休戦協定から平和協定への移行を目指す話し合いを非核化の「初期段階」に続く「次の段階」で始める考えを示したものだ。


 6者協議の2月合意は「直接の当事者が、適当な話し合いの場で朝鮮半島における恒久的な平和体制を協議する」としている。協議は南北朝鮮と米国、中国の4者による枠組みとなる見通しだヒル氏によると、訪朝の際にこの問題についても話し合ったという。


 北朝鮮は「初期段階」として、寧辺(ヨンビョン)にある核施設の稼働停止・封印を行うことになっており、26日には具体的な手順や監視方法を話し合う国際原子力機関IAEA)の代表団が北朝鮮入りする。初期段階の「次の段階」で、核施設の無能力化、すべての核計画の申告に取り組む手はずで、ヒル氏はこの段階を年内に終えたい考えだ。


 また、訪朝時の会談で北朝鮮が高濃縮ウラン(HEU)による核開発計画について「(米朝)双方が満足する形で解決する必要がある」と表明したという。


 次に毎日新聞の記事の引用。

ヒル米国務次官補:4カ国和平プロセス「年内開始を」
 【ワシントン笠原敏彦】6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補は25日の記者会見で、朝鮮半島の平和体制構築を話し合う韓国と北朝鮮、米国、中国の4カ国による和平プロセスを年内に始めたい意向を示した。また、8月初めに開かれる東南アジア諸国連合地域フォーラム前後の開催を目指す6カ国外相会議を機に、北東アジア全体の安全保障問題を話し合う機構を創設することに意欲をみせた。


毎日新聞 2007年6月27日 東京朝刊


 いずれの記事でもポイントは、問題の和平プロセスの当事国として4カ国のみが挙げられ、日本が入っていないことである。日本の国内は今でもまだ、安倍政権による目くらましが効いてか、拉致問題解決というのが言わば金科玉条となっていることが是とされており、その結果、日本の対アジア外交が硬直化・手詰まりに陥っていることが国民にまだまだ理解されていない。


 誤解のないように直ちに付け加えておくが、もちろん私は、拉致問題が問題でないなどと思っているわけでは毛頭ない。ただ、拉致問題を本当に解決したいのなら、何を以て解決とするのかを明確にしておく必要がある。拉致被害者の全員帰国を可能にすることが解決であるのなら(そしてふつうは、これこそが解決だとみなされるように思われるが)、考え方によっては、北朝鮮と国交を正常化することが解決の早道かもしれないのである。


 こう言うと、北朝鮮と国交正常化をすることは良くないと考える人もいるだろう。北朝鮮憎しで凝り固まっている連中は論外として、確かに、いわゆる平壌宣言を日本が有効とみなしている状況下では、国交正常化はその後に日本による北朝鮮に対する経済援助を帰結することになるのでよくない、という考えはありうるだろう。私もそれはそう思う。北朝鮮が核開発をやったことを公言している今となっては、平壌宣言はもはや破棄するのが妥当である。そして白紙の状態からでなら、国交正常化交渉を始めることがあってよいのではないか。そうすれば、国交正常化したからといって、日本が北朝鮮に対して経済援助をしなければならないということにはならない。両者は全く別のことなのだから。


 北朝鮮の現体制を肯定するつもりはもちろん毛頭ない。しかし、では日本は北朝鮮の体制転覆のために策動するべきかと言えば、そういうことをするのは、一般的に言ってよろしくないだろう。無論、アメリカがイラクフセイン体制を転覆したのも誤りだった。むしろ、国際社会が圧力をかけて独裁体制を裸にしていきつつ、その体制を残し、当該国の国民自身による体制改革を可能にするように誘導するべきだったろうと思われる。今の北朝鮮でも話は同じである(もちろん、北朝鮮の独裁体制の方が、フセイン体制よりも遥かに強固だろうと思われるが)。


 ともかく、今の日本のアジア外交は手詰まりに陥っている。安倍政権のやり方は明らかに行き詰まっている。このことを、国民はもっともっとよく知る必要があるだろう。


 それにつけても、議員の世襲は政治から駆逐されなければならない。