羽生、わざと負けたか?−−第25回朝日オープン第2局

 政治の日程がたてこんでおり、与党が相変わらず暴走を続けているのに、何を将棋にうつつを抜かしているのかという読者がおられるだろうか(そんな人、居やしないか)。しかし、今回の朝日オープン第2局の将棋棋譜こちら)はどうにも解せない将棋である。というのも、解説にあるような手順、すなわち

△4二金では単に△1五角と打つ順がまさった。羽生は(A)▲8四桂と打たれてまずいと錯覚した。
 (中略)
 しかし強く△3七角成▲7二桂成△3八馬と進めれば後手勝ち。羽生はこの局面で自玉が詰むと思っていたのだが、▲6一銀△4二玉▲3二と△同玉▲2三金△4二玉で詰まない。

という程度の手順は、羽生三冠のレベルであればたぶん一目で映る範囲内だからである。

正確無比を誇る羽生の読みに、大きな穴が開いていた

などということはまずありえないし、もし万一それが真実だとすれば、羽生の天下は今後確実に崩壊するだろう。そういうことはないだろうから(一将棋ファンとして、羽生にはまだまだ強くあってほしいという思いももちろんある)、だとすれば、羽生はわざと負けたのだと考えざるをえなくなる。


 この推測が当たっているとして、では、なぜわざと負けたのか。見るところどうも、朝日新聞社に対しては将棋界の中にかなりの反発があるように見える。その昔名人戦が朝日から毎日に移ったことと、それは関係があるのかもしれないが、どうも理由はわからない。いずれにせよ、そのような反感との関係でか、この朝日オープンの棋戦では以前から時々、有力棋士が途中で投げやりになったような格好で負けるケースが見られるのである(確か、杉本と堀口が選手権者を争った回の、羽生の負けた将棋も、極めて不自然な負け方だった記憶がある)。


 いかに最近の阿久津の調子が良かろうとも、本来実力から言って、羽生が阿久津に負け越すことはありえない(羽生が苦手にしているのは、森内などごく少数の棋士にすぎず、その他の棋士に対しては2勝1敗以上の成績で勝ち越しているはずである−−でなければ、通算成績が7割を超える水準を保ち続けることは不可能である)。もしここで羽生が選手権者の座を明け渡すようなことがあれば、それは実力によるというよりも、羽生がわざと負けた結果であると見てよいだろう。そしてそうなったなら、それは、スポーツ界で時として見られるような八百長のたぐいだと評さざるをえず、極めて残念なことである。八百長は、断じてすべきではない。特に、トッププロとしての自覚があるならば。
(以上、本文敬称略)