やはり出てきた羽生「挑戦者」――第21期竜王戦


 本ブログの以前の記事で、羽生は再び7冠全冠制覇を狙っているに相違ないと書いた。どうやら事態はその方向に進展しつつあるようである。9月12日に行なわれた竜王戦挑戦者決定戦3番勝負第3局の結果、果たして羽生が挑戦者となった。また、現在同時並行で進んでいる王位戦も、深浦王位を相手に1勝3敗の戦績だったところから羽生が連勝して五分にまで星を戻し、9月下旬に最終決戦の第7局が行なわれる。


 この王位戦第6局は壮絶な戦いで、たとえて言えば、延々両者が力の限り殴り合いを続けた感じの将棋だった。第5局が羽生のほぼ完勝と言ってよい将棋だっただけに(将棋指しにとって、完敗、すなわちどの手が悪かったかがわからないような負け方は、一番いやなものだろうと想像される)、深浦は何としてでもそのいやな気分を振り払いたかったのではないか。そんな感想を持たせるような第6局ではあった。しかし結果は羽生の勝ち。3勝3敗だが、勢いから言えば、羽生のほうが既に優位にあると言えよう。現在、将棋界の中で対羽生の成績が最も良いのは深浦王位(と森内九段)であるだけに、深浦には第7局で是非とも頑張ってもらいたいと思う。ともあれ、王位戦の第7局は第6局にもまして壮絶な戦いとなるであろうことが、今から期待できると言えよう。


 今の羽生を突き動かしているものは何か。思うにそれは、当然ながら自分が将棋界の第一人者であるという自負と、永世名人位に関して森内に先を越されたくやしさと、そしてそのくやしさを竜王位では決して味わいたくないという負けん気なのではないか。将棋指しが一人残らず負けず嫌いであることは自明だが、羽生の場合、その負けん気をどのようにして闘争心・エネルギーへと変えているのか。このあたりは非常に興味があるところである。


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