立法府の役割−−特に、議長の役割

 最終盤にある今臨時国会では、教育基本法改正政府案の採決をめぐって、現在与野党の協議が続いている状況のようである(http://www.stop-ner.jp/を参照)。


 ここで想起されるのは、今年前半の通常国会でぎりぎりの審議・やりとりが行なわれた、共謀罪創設法案をめぐる動きである。あの時には、議長から要請が入り、その結果与党が採決を断念するという場面が見られた。立法府が、単に行政府提出の法案の成立マシンではないことを再確認させた出来事だった。(なお、あの時の議長要請については、官邸すなわち当時の小泉首相からの働きかけがあったという話もあったが、その真偽は定かでない。というよりも、もしそれが事実だったなら、政府は自ら提出している法案の成立を自ら妨げたことになり、きわめておかしな話になると言えよう。)


 既に例えば次の記事
公聴会のあり方について、衆院議会制度協議会が議論開始>http://www.asahi.com/politics/update/1213/007.html
で伝えられているように、河野議長は今の微妙な時期に

「各党の(法案への)賛否の結論が出てしまった段階で公聴会を開くのはどういうことか。公聴会のあり方をもう一度議論する必要がある」と指摘

したとのことである。この指摘は、それ自体では両刃の剣に見えるが(つまり、形式的な公聴会ならなくしてしまえ、というような暴論をもはらみうる)、ともあれしかし、今のタイミングで出されたことは注目に値する。可能な範囲内で、河野衆院議長は、よりまともな国会運営に尽力しているように見える。


 ただ、現在の政治の舞台は参議院にある。参院議長は扇千景女史のはずだが、女史はどう出るのだろうか。残念ながらこれまでのところ、議会のあり方に関して女史から何か注目に値する発言が飛び出したということは、少なくとも私の記憶の限りでは一度もない。政治家としても、確か以前保守党の党首だった時に、選挙で露骨な利益誘導的発言を行なったこともあった。その意味で、見識ある政治家とは言いがたいところである。しかしながら、器が人を作るという面もあると、この際あえて期待したい。不正常な決議を容認する、しかも国家の将来に大きくかかわる法案をめぐる不正常な決議を容認することは、歴史に汚名を残すことだと、扇女史は自覚されるべきだろう。


追記
 今しがた参院教育基本法特別委員会で、教育基本法改正政府案の採決が強行された。委員長に対して出されたはずの動議の声はほとんど聞こえなかったが、速記者は書き留めることができたのだろうか。聞こえないのに委員長が議事を進めたのであれば、それは言わば談合であり、公平中立に議事を進めるべき委員長として失格だと言わざるをえない。・・・こういう悪業は、自民党は何十回となく行なってきているから、やり方があるのだろうが、念のため疑義を記しておきたい。いずれにせよ、与党の横暴ここにきわまれりである。与党の横暴に対する怒りを粘り強く持ち続け、怒りを批判のエネルギーに変えて、批判を続けていくことが重要だろう。