国民投票法案についての政治家の意見

 ビデオニュース・ドットコムでアップされた政治家へのインタビュー「インタビュー・国民投票法案の是非を問う」の抄録を掲載することにする。著作権の問題がどうかわからないが、内容に鑑み、大目に見てもらえることを期待する次第。問題があれば、コメント欄ででも指摘をいただければ幸いである。但し念のため、必ずしも一言一句を再現したものではないので、そこまでの正確さを保証するわけではない。


中山太郎
・どの程度細かい仕分けを想定しているのか。例えば憲法9条に関して、個別の論点に分けるのか。
→現在の憲法特別委員会ではそのような議論はしていない。国民投票法案が成立してから次の国会で憲法審査会が設けられ、その中で議論が展開されるはず。3年間は憲法改正は行なわない。


・委員長としての見解は。
憲法自身が難しいから、一般の人々に理解してもらうためには時間が必要。しかし、国民投票法案は成立すると、国民が選んだ議員の3分の2が原案を作成して承認する。そして承認したらそれを国民投票にかけるというもの。そこで、内容が大量になると、投票がうまくいかない。EU憲法草案が出たが、内容は470項目。主権者が内容を読んでいない。こういうことは避けなければならない。今の憲法でも103条ある。憲法1条から8条までについてはNoという政党はいない。国民が経験したことのないことをやるわけだから、それをやるための準備をしっかりしなければならない。


国民投票に関する広報手段について、例えば広報協議会の設置があり、それが議席比例となっている。また、メディアの使用は原則自由で、広告が自由(2週間前まで)。したがって、広報協議会でもメディア上での宣伝でも(資金力のある)与党が圧倒的に有利になるのではないか。両論が提示されないと意見が左右されるのではないか。
→印刷物については無制限。CMだけが投票2週間前以降禁止。原則自由と言ってよい。議論は全部公開してきた。


・(今の改憲論議には)愛国を国から押し付けようという批判があるが。
→国をよくしておけば、そこに住む国民は国を愛するようになる。国を愛するということよりも、まず投票権者の年齢を18歳まで下げたので、少なくとも憲法を義務教育で教えるようにしなければならない。義務教育課程で憲法を十分教えることが必要。


・与党案はあくまで改憲のための法案。しかし、それに限らず国民投票制度を整備すべきとの考えもある。
→まず憲法国民投票を経験してからその点について考えたい。国民投票には820億円かかる。だから、どの程度重要な案件について国民投票にかけるかを考える必要がある。条件について知恵を絞る必要がある。


国民投票という画期的制度との関連で、日本には国民投票をしっかり受け止めるだけの民度があると議員は考えるか。
→備わりつつある。いろいろなところで住民投票は行なわれている。ただ、その判断が正しいかどうかは、事前説明の多寡とも関連している。


・感情的反応が出る可能性については。
→徹底的に広報を行なうことで対応。国民が主権者であるということを自覚してもらわなければならない(その自覚が足りない)。


・具体的な日程をどのように考えているか。
→今国会で国民投票法案が成立すると、次の国会では憲法審査会が設置され、そこで3年間調査が行なわれる。それと並行して、各政党の中で、次の憲法をどうするかという議論が沸騰し、それが支持者の中に流れていく。安全保障の問題も、いろいろなことが国民から要請されるのではないか。


憲法調査会をやってきて、いわゆる護憲派は議員にはどう映っているか。どういうメッセージを伝えるか。
→一番大事なことは、自分の国のまわりに絶えず注意すること。報道に注意すること。政治家の話を聞く機会が案外少ない。そういうことをよく知っている国民はよく判断するのではないか。テレビの問題は、質問できないこと。一方向。双方向のためにはタウンミーティングしかない。


・広報のためにタウンミーティングが始まるということか。
→始まる。


憲法改正には賛成か。
→賛成。


・感情的な議論が国民の間に起こる懸念はないか。
→外国の情報操作が心配。周辺の国々は自分の国のことを考えて情報を流すだろう。私自身は「侵略国家にはならない」ということが大事。法案が通れば、かつて被害を与えた国を訪れて説明したい。



辻元清美
国民投票法案のどこが一番問題か。
→動機が不純。なぜ国民投票法案を今ごろ言うのか。「国民投票法案を作らなかったのは議会の怠慢」との声があるが、むしろ議会の意志だった。立法府の意志としてこの憲法のもとでやるということで、作らなかった。歴史的な経緯から見て、今憲法を変える必要があるかどうか。不純その1は「手続法だ」。しかし安倍総理の野望が背景にある。果たして日本の社会が、イラク問題についての総括もせずに決めてよいものかどうか。今早急に作る必要がない。
 中身もひどい。第1は、国会が発議して、その後は国民が決めるというものが国民投票のはず。しかし発議後も、広報協議会を作り、議席配分によってメンバーを構成するとしていた。発議した後は賛成も反対も国民に任せるべき。第2は最低投票率。与党案も民主党案も最低投票率を定めていない。イギリスでは最低投票率を定めている。そういう議論が不十分。中身の議論がまだまだある。


・メディア報道に関しては一応自由になっており、辻元氏の主張はその点では受け入れられているのではないか。
→がんがん言った。メディア規制については、規制されるべき対象は政府。また、賛否両論を平等に扱うべきと主張している。


・広報の部分はどうするのが望ましいと考えるか。
→広報協議会は作らずに、国会は発議までとする。後は、第三者的な機関が中立な立場から広報活動を行なうべき(選挙公報のようなものを配る)。メディアは賛否を戦わせる討論会を開いてほしい。


・法案の内容についての批判を聞きたい。個別については。
→個別と言いながら、関連している項目は一括する「ユニット方式」と言っている。自民党草案には自衛隊自衛軍とするとあり、次の項で自衛隊が海外で活動できるとあるが、改憲を可とする人の中でも、自衛隊の海外活動に対しては反対という人は少なくない。アメリカで行なわれているsingle subject方式がよい。


国民投票法案を与党だけで通すことはないのではないか。
→わからんでえ。
 もう1点、安倍首相が早く法案を通したいのは、国民投票法案の中に国会法改正が入っているから。その中には憲法審査会の設置が入っており、秋から憲法審査会ができるという「中から狼が出てくる話」になっている。改憲案を作れる常設機関が国会にできるという話。安倍首相は早く議論をレールに乗せたいのだ。
 今の質問については、与党だけで通す危険性を感じている。与党だけで通すことに否定的だった公明党も「時期を見極めなければならない」と言い出している。安倍は支持率が下がっているだけに余計危険。自分の支持率が落ちているので、なりふり構わずやってくる可能性あり。民主党も、国民投票法案は早くやってしまいたいと考えている向きがあった。ただ、今そういう勢力は落ちてきていて、むしろ安倍に「憲法改正」を言わせて浮かせようという考えが強まりつつあり、民主党が強硬に出てくる可能性がある。そこで与党は採決に踏み切る可能性がある。ただ、衆院で採決されても参議院があるので、むしろ参議院選挙での争点になった方がよい。
 最初は「手続き法だから」という話が強かったが、中身を知れば知るほどうさんくささを感じる人が増えてきており、NHKの世論調査でも慎重審議を求める声が7割。


・辻元氏はそもそも改憲に賛成か反対か。
→反対。憲法を変えることはよほどのこと。支障があるとすれば9条だが、突き詰めていくと日米関係にぶち当たる。北朝鮮の問題も出ているが、6者協議という話し合いで解決するほかない。臨検などすれば笑いものになっていただろう。今日アフガニスタンの問題を国会でやったが、軍を出している国は嫌われるようになってきている。日本はそうでもない。なぜかというと、自衛隊を出しておらず、中立的とみなされているから。このポジションはアメリカにはできない。これを放棄するのは宝をドブに捨てるようなもの。今の憲法にさらに磨きをかけた方が良い。