石原慎太郎の「類は友を呼ぶ」

 知らなかったが、石原慎太郎には、東京都知事としてのWebサイトだけでなく個人のサイトもあるらしい。


 そしてこれをを見ると、なるほど石原の考えはよくわかるように見える。確かに、「Noと言える日本」を書いた著者の一人だから、例えばこのページにあるように、「アメリカにもはっきりものをいうべきだ」と言う資格は石原にはあるのだろう。ただ、日本が「いつまでもアメリカの言いなりになっている」状況にあるとして、そういう状況をこれまで長年作ってきているのはいったいどの政党の政治家なのかという点を、石原であれ石原を支持する人々であれ、いったいどう考えているのだろうか。当然ながら、自民党以外ではありえないはずなのだが。


 また、同じく国際関係について石原は「アジアとの付き合いを主張し」ていると言うが、こと中国に対しては主張せよ主張せよと繰り返す。中国に対して時として主張するべき必要性を否定するつもりはないが、石原が言う「アジアとの付き合い」の中では、中国との良好な関係というのは眼中にないかのごとくである。そのくせ、「韓国、台湾、シンガポールなど経済がうまくいっている国々は、日本が戦前に統治したことのあるところばかりです」などと(該当ページはこちら)、あたかも日本が戦前に統治したことがそれぞれの地域の戦後の経済発展をもたらしたかのごとくに言っている。大変身勝手な言い分だと言わざるをえず、アジアとの関係を真剣に考えた上で発言しているとは到底認められない。


 結局のところ、安手のナショナリズム(ショーヴィニズムとも言う)を喧伝しているというのが石原の実体だと言ってよい。


 ウェブサイト中の「石原都知事の政策」については、現職の強み(ずるさ)で、官僚が立案したものまでも自分の手柄に仕立てているのは、これは石原に限ったことではないので、ここではとやかく言うまい。ただ、文飾にだまされてはいけないのであって、例えば「東京ER」と題された、医療改革に関するページを見ると、今の東京都の施策があたかも「理想の救急医療体制」の構築に向かって邁進しているかのごとき印象を読者は受けるかもしれない。しかし現実には、起こりつつある(或いは既に起こった)のは、救急医療体制の整った病院がこれまでよりも集中され(つまり少なくなり)、また保健所も合併によって数が減らされているという事態である。だまされてはならない。


 もう1つ。石原は「日本の正式国名」とやらを募集し、そしてこのページでそのベスト40を発表している。アイディア自体は100%石原のものとは言えないだろうが、何を「ベスト」としているかは石原の考えによっているわけで、石原本人がどういう人間であり、また石原を支持する人々がどういう人間であるかを、ふたつながら窺わせる内容だと言えよう。その国名とやらの例は実に馬鹿げており、そもそも論評に値しないが、石原慎太郎はこれをたいそう喜んだらしい。「類は友を呼ぶ」、この程度の友を呼んで喜んでいるのが石原慎太郎という人間なのだと、改めて思わされた。