政府・与党が暫定税率を復活させようとすることの意味


 なるほど、納得である。既に報道で、山口二区の補欠選挙の結果如何にかかわらず政府・与党は暫定税率の復活のための再議決を4月30日にも行なう方針だということが伝えられているが(関連記事は末尾に引用)、その意味の解説として、民主党前衆議院議員の生方幸夫氏の見立ては実にわかりやすい。つまり、多くの国民がまさに大移動をしようという連休の前に、政府・与党はガソリン代を値上げしたいのである。生方氏の主張の一部を引用しておくことにする。

「連休前にガソリン代値上げは許せない」


4月25日(金)
 政府は早々と暫定税率の復活を5月1日からと決定しました。山口の衆議院補選で民意が下される前に、決定をする、いかにも福田政権らしい姑息なやり方です。世論調査を見ても暫定税率復活に賛成は少数です。補選で正式に民意が示されれば、それに従うというのが民主主義のルールです。もはやルールも何も無くなっているのがいまの自民党政権です。これから連休が始まるというときに、ガソリン代を値上げする心が知れません。
 福田総理は道路特定財源一般財源化すると言っておきながら、来月12日には道路特定財源10年延長案を盛り込んだ特例法を再度、衆議院の3分の2を使って可決しようというのですから、これほど国民をバカにした話もありません。一般財源化するというのなら、同時に10年計画を見直す案を提出しなければならないのに、その逆の法案をだすのですから、呆れます。

 必ずしもよく理解されていないようなので、生方氏が触れているもう1つの点をも復唱しておかなければならないが、福田首相道路特定財源を一般化する意気込みだという。そりゃ結構。しかしそれならなぜ、それと全く矛盾する法案を政府・与党は出しっぱなしにしておき、のみならず、それも再議決に付して成立させようとしている、と報じられるのか(関連記事を末尾に引用)。国民をこれ以上馬鹿にした話はない。


 このような政府・与党のひどさを伝える言葉が、果たして山口二区の選挙民に伝わるかどうかわからないが、しかし今回の補欠選挙でもし自民党の候補が当選するようなことがあれば、山口二区の有権者は最大級の軽蔑に値すると言わなければならない。自民党は今にも、白昼堂々と有権者を欺く挙に打ってでようというのだから。


 繰り返すが、政府・与党(特に自民党)は、これ以上ないくらいに国民を愚弄しているのである。


 朝日新聞の関連する記事は以下のとおり。

http://www.asahi.com/politics/update/0423/TKY200804220360.html
与党、暫定税率30日に再可決 ガソリン値上げへ
2008年04月23日03時01分


 政府・与党は22日、ガソリン税などの暫定税率を元に戻すため、政府提出の税制改正関連法案を30日に衆院の3分の2で再可決する方針を決めた。暫定税率が期限切れのままでは国と地方で年間約2兆6千億円の歳入が不足するため、再可決で道路整備や地方財政への影響を最小限に抑える狙いだ。これを受け、5月中にガソリン代の値上がりが確実な状況になった。


 与党が30日に衆院で再議決した場合、参院で主導権を握る民主党など野党側は、首相問責決議案を提出することを検討している。参院で可決されれば、国会審議の空転も招きかねず、30日以降は与野党対立が激しくなりそうだ。


 政府の税制改正関連法案は2月29日に衆院を通過し、参院に送付された。現在は参院財政金融委員会で審議中で、今月28日までに採決されなければ、憲法の規定で否決したとみなす「60日ルール」によって29日以降に衆院で再議決できる。29日は祝日のため、与党は翌30日に衆院本会議を開き、再議決する。


 福田首相は22日、3月末に期限切れとなった暫定税率への対応について、自民党伊吹文明幹事長、町村官房長官と官邸で話し合った。伊吹氏は協議後、「政権をあずかっている限り、地方を放っておくわけにはいかない。赤字国債は避けるべきだとの共通認識はお互いに持っていた」と記者団に語った。


 伊吹氏はこれに先立ち、大島理森国会対策委員長二階俊博総務会長、中川秀直武部勤両元幹事長らと国会内で会談。税制改正関連法案が28日までに参院で採決されなければ、衆院で30日に再議決するべきだという考えで一致した。大島氏は記者団に「(参院で)採決しないという結果が出れば、ただちに(再議決の)準備に入らないといけない」と述べた。


 再議決直前の27日には、自民新顔と民主前職との一騎打ちとなる衆院山口2区補選の投開票がある。町村官房長官は22日の記者会見で「選挙結果にかかわりなく、必要なことはしっかりとやっていかなければいけない」と強調。さらに「暫定税率は維持されてしかるべきという政府と与党の考え方は完全に一致している」と語り、補選の勝敗にかかわらず再議決に踏み切る姿勢を鮮明にした。


 税制改正関連法案のほかにも、大型連休明けの5月12日以降には、ガソリン税収などを今後10年間道路財源にあてることなどを定めた道路整備財源特例法改正案も再議決が可能となり、政府・与党幹部は同改正案も再議決する考えだ。しかし同法案は、首相が提案した09年度からの全額一般財源化と道路整備中期計画の見直しの方針と矛盾するため、与党の中堅・若手の中には、反発する声もある。

http://www.asahi.com/politics/update/0423/TKY200804230116.html
ガソリン値上げ 自公幹部、30日再議決を確認
2008年04月23日12時05分


 自民党伊吹文明公明党北側一雄両幹事長ら与党幹部は23日、東京都内で会談し、ガソリン税などの暫定税率を元に戻す税制改正関連法案を、30日に衆院で再議決する方針を正式に確認した。同日中に施行する。27日の衆院山口2区補選の結果にかかわらず再議決し、地方財政への影響を最小限にすることで一致した。


 会談では、5月12日以降に再議決が可能になる道路整備財源特例法改正案について、自民党の中堅・若手に「福田首相の方針と矛盾する」との声が目立つことについて、北側氏が「再議決に反対の行動を取ることがないよう党内を説得してほしい」と要請。伊吹氏は「責任を持ってやる」と応じた。


 一方、民主党山岡賢次国会対策委員長は23日、記者団に対し、「非常手段に訴えてでもそういう暴挙をやらせない」と述べた。

http://www.asahi.com/politics/update/0424/TKY200804240266.html
暫定税率復活「30日再議決」へ自民結束 各派組織固め
2008年04月24日22時35分


 ガソリン税暫定税率などを復活させる税制改正関連法案を30日に衆院で再議決する時に備え、自民党の各派閥は24日、造反議員が出ないように組織固めを進めた。中堅・若手議員の不満を抑えるため、道路特定財源一般財源化方針をより明確に確認する方法も模索している。


 自民党きっての「道路族」で知られる二階俊博総務会長が率いる二階派は24日、臨時総会で率先して再議決を支持する決議をした。「(法案の)速やかな成立を図り、与党として国家・国民に対する責任を果たすべきである」とする決議文には「全員が喜んで署名した」(中堅議員)という。


 他派閥でも一様に30日の衆院再議決を支持する声が相次いだ。「ポスト福田」の最右翼とされる麻生太郎前幹事長でさえ、麻生派の会合で「やらねばならぬ時は、きっちりと泥をかぶってでもやる」と歩調を合わせた。


 派閥ごとに再議決方針を確認するのは、執行部が党内を固め切れていないからだ。福田首相の出身派閥である町村派会合では、代表世話人中川秀直元幹事長が「福田総理のもと、一糸乱れず正しい行動を」とあいさつ。すると、下村博文官房副長官山本一太参院議員らが「首相提案を確実にするため、党内手続きではより一層の担保がほしい」といった声を上げた。


 こうした声に応える手立ての検討も始まった。谷垣禎一政調会長はこの日の派閥会合で「一般財源化の方針を総務会で了承することも必要なのではないか」と語った。町村派の中川氏も「党内で総務会という話もある」と紹介した。政府・与党決定に自民党総務会の了承という「お墨付き」を与え、一般財源化を確実にする狙いだ。


 「国会決議も一つの案だ」(閣僚経験者)という声もある。30日の再議決に合わせ、衆院本会議で09年度からの一般財源化を柱とした決議を採択する案だ。再議決に合わせて首相が改めて記者会見を開く案も浮かんでいる。


 しかし、総務会案には「開く必要はない」(党4役の一人)との異論がくすぶり、全会一致が慣例の国会決議案も「民主党が乗ってくる保証はない」(党国対幹部)と疑問視される。首相周辺は「政府・与党がここまで表で公言するのに、なぜ信用しないのか」といら立っている。

http://www.asahi.com/politics/update/0425/TKY200804250319.html
道路財源法案、来月12日にも成立
2008年04月26日03時07分


 政府・与党は25日、道路整備財源特例法改正案について憲法の「60日ルール」に基づくみなし否決を適用し、5月12日に衆院で再可決して成立させる方針を固めた。自公党首会談や福田首相による記者会見のほか、閣議自民党総務会でも「09年度からの一般財源化」を報告し、与党内の異論を抑えた上で踏み切る。

  
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 福田首相は28日、公明党の太田代表と与党党首会談を開き、首相が掲げた道路特定財源を09年度から全額一般財源化する方針を再確認する。与党国対幹部によると、11日に決めた8項目の政府・与党決定に加え、道路関連公益法人の削減や特別会計改革について方向性を打ち出すという。


 また、自民党は28日中にも臨時総務会を開く。伊吹文明幹事長は25日の総務会で「再議決前には総務会に報告させていただきたい」と述べ、総務会による担保を求める声に配慮した。複数の政府関係者は「閣議にも首相方針を報告する方向だ」と指摘する。


 最終的に、30日に税制改正関連法案を衆院で再可決した後、首相は臨時記者会見に臨む。ガソリン税などの暫定税率を元に戻すにあたり、政府・与党として一般財源化に取り組み、道路関連支出の無駄を排除するための具体策を国民に向かって説明する。


 こうした手続きを取るのは30日に再議決する税制改正関連法案よりも、ガソリン税収を今後10年間、道路整備に充てることを定めた道路整備財源特例法改正案について、中堅・若手から「一般財源化の首相方針と矛盾する」との異論が強いためだ。民主党からは、首相方針が「閣議決定自民党総務会決定を経ていない」として、改正特例法が成立すれば一般財源化も立ち消えになるとの批判を浴びている。


 一方、政府・与党は地方財政への影響を小さくするために「できるだけ早く成立させたい。(再議決は)12日がいい」(首相周辺)と、衆院再議決が可能となる5月12日にただちに再議決する考えだ。そこで、一般財源化は揺るがないと強調し、批判の芽を摘もうとしている。


 民主党には、政府・与党の足並みの乱れを突くべきだという声もある。30日の衆院再議決を控え、参院への首相問責決議案の提出に向けて党内の意見集約を進めているが、5月12日に繰り返される特例法改正案での再議決に合わせるべきだとの意見も党内に根強い。政府・与党の方針決定は、民主党の判断に影響を与える可能性もある。


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 与党が30日と5月12日の2回にわたって再議決すれば、野党との対立は決定的になる。野党が反発して国会審議を拒否することを見越して、与党は残された法案処理のため、6月15日の会期末を小幅延長する検討も始めた。


 延長幅は、6月末までの2週間程度で調整している。憲法の「60日ルール」により、25日までに衆院を通過した法案の成立を担保する狙いだ。


 今国会に政府が提出した計79件の法案のうち、与党が督励していた4月15日までに衆院を通過したのは28件。その後、法案の衆院通過はさらに加速し、25日までの間に17件を加えた。会期を6月末まで延長すれば、17件の法案も救われるというわけだ。


 自民党大島理森国会対策委員長は25日の記者会見で「やらなければならない審議はたくさんある。それを粛々と進めていく」と述べ、参院で法案審議が行われなくなっても成立を図る考えを強調した。執行部の一人は「いくつかを選び出すことはするかもしれない」と語り、重要法案について再議決を辞さない構えを示した。


 ただ、会期を延長すれば、それだけ政府・与党が野党からの批判にさらされる機会も増える。そのため、与党内では「余計なリスクを少しでも減らすため、早く閉じてしまった方がいい」(幹部)という慎重論も出ている。また、ある閣僚経験者は「その時になって本当に再議決を連発できるパワーがあるのか」と疑問視する。与党は野党側の出方や世論の反応を見極めたうえで、会期を延長するかどうか最終的に判断をする方針だ。