新政権が真っ先に直面する問題――現在の大不況


 少し前の記事で書いたとおり、もし民主党が政権をとったとして、その評価は民主党が政権奪取後に速やかにしかるべき行動に移れるかどうかに大きく左右されるだろうと思われる。


 それに加えてもう1つ、やはり現在の大不況にどう対処するかということが、待ったなしの課題として新政権には突きつけられるだろう。この関連で、4−6月期の実質GDPが年率3.7%という大本営発表(景気実感により近い名目成長率は年率で−0.7%)が、確か今回の総選挙の公示当日ごろに出されたが、これに対して
7月失業率、過去最悪の5.7% 有効求人倍率も最低
失業率、近畿は5年ぶりに6%超える 7月6.3%
という、経済の実態をより正確に反映している数字が今になって出てきたのは、今後の政治を考える上で意味深長だと思われる。


 現在の状況を大不況とする見方に対しては、アメリFRB議長のバーナンキ氏が先日「景気後退はいま終局を迎えている」と言ったではないかとの反論があるかもしれない。しかし、例えば経済学者の斎藤精一郎氏は「今夏の「景気回復の動き」が「インディアン・サマー」にも似た、勢いに乏しくかつ持続性に欠くものであると考える」と述べている(リンクはこちら)。


 より黙示録的な見方を知りたければ、こういうWebサイトもある(ふだん私自身は話半分に見ているが)。


 では、仮に民主党が政権を取ったならどうするべきか。私ごときに大した知恵があるはずもないが、しかしともあれ、民主党は自らが選挙で約束した公約を実行するべく努力すべきだと思われる。その根拠は、元日銀金融研究所所長の鈴木淑夫氏の見方である。
民主党には成長戦略がある
詳しくは読者自身でご覧になるのが良いだろうが、要するに鈴木氏によれば、民主党の成長戦略とは、家計を直接潤すことによって内需を刺激し、それによって経済成長を目指すというものだと言ってよい。実際、家計でなく企業を潤すことによって家計にもその恩恵が及ぶことを期した自民党の成長戦略が破綻していることは既に明白なのだから、良くも悪くも、日本には民主党流の成長戦略を取って景気回復を目指す他に道はないのである。


 もう一言。以上述べたことに加えて、やはり新政権は、今の経済状況がそれこそ未曾有(みぞう)の不況なのだということに改めて思いを致すべきだろう。そして、過去の経験、より具体的に言えば、1930年代の大不況時に当時の政府が高橋是清蔵相のもと何を行なったかを、改めて学ぶべきではないだろうか。尋常な方法では間に合わないという可能性を真剣に考える必要があるように私には思えてならない。