儲けることは無条件に良いことなのか


 民主党の代表選は鳩山由紀夫氏を選出して終わり、新たな執行部が、小沢氏を選挙担当の代表代行とし、野田氏を幹事長代理にし、その他代表室長が交代したほかは、従前と同様の体制を維持するという形でまとまった。一々コメントをするつもりはないが、ともあれ民主党はこれからが勝負であり、政権交代に向けて頑張ってもらわなければならない。


 ところで、今朝は経済関連のニュースが2つ並んで目についた。言うまでもなく、本ブログは経済専門などでは全くなく、むしろ経済に関しては全くの素人だと言ってよいが、そのような者でも書きたくなることがあり、それで経済の話を書いているのである。本ブログではこのような言辞を事あるごとに繰り返しているが、今回もまずこのことを言っておきたい。


 目についたニュースの1つは「GDP15.2%減 戦後最悪のマイナス幅 1〜3月期」というものである。

GDP15.2%減 戦後最悪のマイナス幅 1〜3月期
2009年5月20日8時59分


 内閣府が20日発表した09年1〜3月期の国内総生産(GDP)速報によると、物価変動の影響を除いた実質GDP(季節調整済み)は前期比4.0%減、年率換算では15.2%減だった。08年10〜12月期(年率換算14.4%減)を超す戦後最悪のマイナス幅。四半期ベースでは4期連続の前期比マイナスで、戦後初の連続記録となった。


 08年度の実質GDPも戦後最悪の前年度比3.5%減で、01年度以来7年ぶりのマイナス。米金融不安に端を発した世界的な景気後退で、昨秋から輸出が急減。基幹産業の自動車や電機などの生産に急ブレーキがかかった。外需に加えて個人消費など内需も悪化。記録ずくめのマイナス成長となった。

朝日新聞のこの記事のリンクはこちら


 08年10〜12月期が年率換算で14.4%減という話は迂闊にして知らなかった(もちろん、落ち込みがひどいものだろうことは自明だったが)。しかしそれに輪をかけて今回はひどい落ち込みようである。このニュース自体が景気に対して暗い影を投げかけるであろうことは想像にかたくない。


 とはいえ、あまりネガティヴなことばかり書かないよう、例えば元日銀金融研究所所長の鈴木淑夫氏の景気展望によれば、この1〜3月期が「今回景気後退の最悪期となり、4〜6月期以降は輸出の回復と在庫調整の一巡、および財政刺激の効果も加わって、最悪局面を脱していくと思われる」とあることも、ここで記しておくことにする。


 このような認識が共有されるかどうか自体が、今後の景気回復を展望する上で一つのカギとなると言ってよいのではないだろうか。


 ただ、ここで書きたいのはむしろ2つ目の記事についてである。その記事とは

メガバンク、強みと弱みは…09年3月期決算
2009年5月20日1時34分


 3メガバンクの09年3月期決算を見ると、各グループの強みと弱みが鮮明だ。


 財務の健全性が最も高いのは三菱UFJだ。米金融当局が特別検査で米銀のふるいわけに使った「普通株主体の自己資本比率」は5.3%。米当局が最低基準とした4%を上回り、他の2メガを引き離した。不良債権処理費用の割合も最も少ない。


 一方、収益力では三井住友が断トツだ。本業のもうけである業務純益を従業員1人当たりでみると3827万円。他の約2倍だ。規模では3番手だが、日興コーディアル証券の買収を決め、大手行として初めて大手証券を手に入れたのも好材料だ。


 課題が目立つのがみずほ。支店や従業員の多さの割に、利益が十分伴っていない。連結自己資本比率は10.55%で、公式な国際ルールの最低基準の8%を大きく超えるが、米当局の「普通株主体の比率」では1.3%にとどまる。保有株も他より多く、財務体質が株安に左右されやすい。

朝日新聞のこの記事のリンクはこちら


 この記事は企業の経営状況を単に収益性の高低だけで判断しているように読めるが、企業の経営というものは、果たしてそのようにのみ判断していてよいのだろうか。言い換えるなら、儲けることは無条件に良いことなのだろうか。


 この低金利時代――十年以上続く低金利の結果、もはやこれが常態になってしまった観があるが――において、銀行が高収益を図ることができるとはいったいどういうことなのか。言うまでもなく、大企業はなるべく金を借りようとせず、また借りるにしても直接金融という手段を持っている。中小企業は金を必要とするが、これに対しては、特に今のような猛烈な不況下においては、銀行は金を貸そうとしない。となれば、儲ける手段はどこにあるかと言えば、主として対個人の融資で儲けることがそれであり、つまりそれは、昔であればいわゆるサラ金がやっていたことである。昔の銀行はまだしも、高利貸しには手を染めないという矜持を持っていたが、今では銀行にはそのような矜持はかけらも見受けられない。


 ついでに言えば、役者も、昔はその種の広告には出演しないという矜持を持っていた人が少なからずいたと思うが、今では誰彼なく、見境なしにそのような広告に役者たちが出てくる。金のため、生きるためだというのはもちろん理解はできるが、しかし決して賛成はできない。


 こう考えてくると、三井住友銀行が収益性が高いというのは、要するにそういう部門でこの銀行は収益を上げているということだ、と言ってよいのではあるまいか。果たしてこれはほめられた話なのかどうか。極めて疑問である。


 今の世の中では、富を手にするのは、言わば金の流れに手を突っ込む連中(投資であれ、金融であれ)というのが相場になっているように思われる。しかしそれで良いのだろうか。極めて疑問である。