石原都知事は自腹を切って直ちに新銀行東京を清算せよ


 今回の記事で言いたいことは表題の一文で尽きているが、石原都知事の所業については昨年の都知事選の際にかなりいろいろ取り上げたことがあるので、それらを振り返る意味で少し書いておきたい。まず、今般取りざたされている追加出資をめぐる朝日新聞の記事と、それに関連する同じく朝日新聞の記事とを引用しておく。

400億円、新銀行東京に 東京都、追加出資案を提出
2008年02月20日15時15分


 東京都は20日、1000億円を出資して設立しながら経営難に陥っている新銀行東京に、400億円を追加出資する議案を都議会に提出した。銀行の資本強化を図るが、経営再建につながるか不透明で、新たな都税投入に都議会から反発があがりそうだ。


 同日午前、都は議会運営委員会に来年度予算の補正予算案を提示。石原慎太郎知事はこれまで追加出資を否定してきたが、銀行側が経営計画の見直しを前提に当初300億円程度の増資を都に要請。調整を進め、都は経営安定化のため400億円の拠出を決めた。


 関係者によると、新銀行東京は現在の6店舗を1店に統合し、約450人の従業員を約120人に減らして経費削減を図る。現在約4000億円の預金残高を圧縮する一方、融資も大幅に減らす。都の公共事業を請け負う企業への貸し付けを拡大するなど都の政策との連動も強化し、11年度の単年度黒字を目指すという。


 新銀行東京は石原知事が中小企業支援策として2期目の公約に掲げ、05年に営業開始。無担保無保証融資を売りにしたが審査が甘く、多くの貸し倒れが発生。昨年9月中間決算で累積赤字が936億円に膨らんでいた。同日会見した新銀行東京は、3月期末決算で累積赤字が1000億円程度になる見込みを示し、将来は減資も検討する方針を示した。

石原知事「発案者として責任痛感」 経営難の新銀行東京
2008年02月26日22時53分


 東京都が1000億円を出資し、経営難に陥っている新銀行東京に対し、400億円の追加出資案を都議会に提出した石原慎太郎都知事は26日、都議会で「発案者として責任を痛感している」と語った。追加出資は清算より負担が小さいとの見方を示し、「ほかに選択肢がない」と述べた。


 議会からは「追加出資は現状では認められない。条件は再建計画の信頼性」(公明)、「経営悪化を旧経営陣に責任転嫁している。知事の責任は?」(民主)、「私財を投げ打ってでも責任を取るべきだ」(共産)と、与野党から厳しい指摘が相次いだ。知事は「まことに残念無念で、歯ぎしりする思い。慚愧(ざんき)に堪えない」と釈明を重ねた。


 知事は(1)清算(2)預金保険法に基づく破綻(はたん)処理(3)追加出資――を検討したと表明。(1)や(2)では「融資先1万3000社に甚大な負担を与え、都民にも膨大な負担を求める」とした。しかし、具体的な算定額は示さなかった。


 追加出資について、都産業労働局長は「事業展開のうえで避けられないリスクに対応する資本を確保する」と述べた。年度末に累積赤字が約1000億円に上る見込みで、資本金を補充しなければ再建計画に盛り込んだ融資が実行できないという。経営再建に「金融ノウハウを有する銀行などとの連携を視野に入れ、事業の充実を図る」とした。


 まず、2番目の記事で石原は「発案者として責任を痛感している」と自分の責任をごまかしているが、石原は単なる「発案者」以上の存在だった。すなわち、本ブログのこの記事の中の「「新銀行東京」に関する発言」で紹介したように、「新銀行の経営陣にすぐれた人材を各界から」迎えたのは、誰あろう、他ならぬ石原都知事本人である(石原の号令のもと人集めがなされたという意味で)。そして、同じ「「新銀行東京」に関する発言」の中で紹介しているように、2007年2月の石原自身の発言によれば、その「すぐれた人材」とやらが、実際には「ふなれな仕事をふなれな人にさせた」というていたらくだったのである。


 さらに言えば、「ふなれな仕事をふなれな人にさせた」どころではない、横領・背任と見られても仕方のない事例も存在するようである。朝日新聞のこの記事によると

新銀行東京、「役員友人」の会社に3億円融資 直後破綻
2008年02月26日15時01分


 東京都が1000億円を出資し、経営難に陥っている新銀行東京が、06年に民事再生法の適用を申請したベンチャー企業に対し、申請の約2カ月前に3億円を融資していたことが分かった。融資直後の貸付先の経営破綻(はたん)は与信審査をする銀行経営では異例のこと。こうした甘い審査が経営難を招く一因になったとして、新銀行東京は旧経営陣の責任を追及する方針だ。


 複数の銀行関係者によると新銀行は06年夏、ICタグなど情報通信システムの研究・運営に携わる都内の企業に3億円を融資。同社は約2カ月後の06年10月、民事再生法の適用を東京地裁に申請し、融資は焦げ付いた。民間信用調査会社の調べでは、同社は従業員約50人で、06年3月期決算で91億円の売り上げに対し、借入金は167億円だった。開発費用がかさみ、経営を圧迫したとされる。


 当時の新銀行幹部によると、この案件は本来は役員会に諮る融資額だったが、役員会にかけられなかった。別の幹部に問いただしたところ「役員の友人の会社だからいいんだ」と言われたという。


 民間信用調査会社は「普通は売り上げの6割の債務があると危険水域で、ベンチャー企業相手の融資でも論外。ただ、売り上げの伸びを評価したのかも知れない」と指摘する。


 新銀行東京は05年4月の開業当初の融資残高目標は9306億円だったが、この融資を実行した当時は2千億円程度。景気回復で大手銀行が中小企業支援を拡大したため、優良な貸付先を確保できず、融資実績を上げようと必死になっていた時期とされる。関係者によると、融資先を開拓した行員には「報奨金」を出していたという。こうした経営実態について、出資者の都も見過ごしていたとみられる。


 昨年11月に都局長から就任した新銀行の津島隆一代表執行役は20日、「デフォルト(債務不履行)を容認するような業務執行など旧経営陣の非常識な経営が明らかになってきている」と語り、法的措置を含めて対応するとしている。ただ、個別の案件については新銀行側は「話せない」としている。

 こういうでたらめがまかりとおるようではこの「新銀行」とやらに未来は全くない。最善の策は、どう考えても、直ちに清算すること以外にありえない。


 そして当然ながら、清算は早いほど良かったのであって(昨年の都知事選の直後が一つのタイミングだったと思われる)、それを逃して赤字のさらなる拡大を招いた点で、石原都知事の責任は極めて重い。東京都民でありかつ先の都知事選で石原氏に一票を入れなかった者として、少なくとも昨年の都知事選以後に増えた赤字分については、石原氏自身が負担してもらわなければ到底納得がいかない。石原都知事は自腹を切って直ちに新銀行東京清算せよ。これ以外に、この問題に決着をつける方法はないのである。


 最後に、先ごろ大阪でポピュリスト知事が誕生してしまったこととの関連で、元祖ポピュリスト知事である石原のこの所業についてコメントを加えておきたい。定義上、ポピュリストは人気取りをつねに図ろうとするわけだが、大阪の橋下とやらは現在公的支出の無駄の削減というやり方で人気取りを図ろうとしている。しかし、経費削減だけやっていれば人気取りを続けられるわけではない。経費削減とは事業の縮小を意味するのであり、要するにそれは景気の良い話ではないからである。したがって、橋下とやらもそのうち必ず、何らかの大盤振る舞いを行なう人気取りに打って出るはずである。しかし、これまた定義上、ポピュリストには理念がない(理念に従って行動することがつねに人気取りと合致することはありえないので)。とすると、まさに石原が人気取りを図って、(銀行業務などろくに知りもしないくせに)「新銀行」を設立したのと同じ末路を、財政支出を伴う人気取り行為はたどることになるのではないかと予想することができる。


 今東京都民は、選挙でポピュリスト知事を当選させたことの帰結として、ポピュリストがやらかした大損害という結果を刈り取りつつあり、そして、その後始末がどうなるか(今後損害がさらに拡大しないかどうか)をきちんと見届ける義務を有する。これは、同じくポピュリスト知事を当選させてしまった大阪や、その他の自治体にも当てはまることなのである。