浅野候補の講演録

 都知事選も押し詰まってきたが、候補の一人浅野史郎氏が4月3日に都内某所で行なった講演の記録が手に入った。選挙期間中は、逆にインターネット上での発信が制限されるなど、むしろ候補者に関する情報が選挙前よりも得にくくなっている。その意味では、貴重な資料の一つと言えるのではなかろうか。


 以下、入手した浅野氏の講演の記録である。なお、一部で誤字の修正や、読みやすさを考慮して句読点を修正するといったことを、当方の責任において行なったことを付け加えておく。

 マイクを持った浅野さんの口からは、ぽんぽんと小気味良く跳ねるように話が次々と飛び出した。(中略)


 “宮城県の知事を3期やって、卒業しました”
 “嫌になって止めたのではなく、新しい生活に入ったのです”
 “収入も2倍になりました。・・・あまり言うと嫌味になりますが(笑)”


 “なんで宮城県知事をやっていた人が東京都知事に? おかしいでしょう、といわれます。私のほうが唐突なんです(笑)”


 “なぜ、そうなってしまったのか。それは石原都政の問題なんです。石原知事が続くのは勘弁して欲しいというのは、東京の人だけじゃなかったんです”


 “そして最後に私のハートに火をつけたのは、石原は嫌だけど、でもねやっぱりダメなんでしょうという人の言葉だったんです”
 “政治に対しての無力感ですね。私は学校で若い人に、<地方自治は民主主義の学校です。半径10km以内の自治体の生活に興味を持たないものは国政や国際政治をあれこれいっても本物ではない>と言ってきたのです。
 ところが、日本の最大の自治体 東京 に対しての無力感が広がっていることを放置できなかったんですね”
 “東京は、日本のための東京。東京での無力感は日本の政治に対しての無力感なんです”
 “どうせ政治なんてという風に引いていったら、どうなるのですか”


 “東京都知事は栄光の座ではないのです。大変なんです。宮城県の人口の5倍だから、3倍くらいの給料がもらえると思っていたら・・・石原知事が週に3回のパートタイムでもそれだけもらえるのだから(笑)”
 “お金ではないんです。義を見てせざるはといったところなんですね、宮城県の方言では「おっちょこちょい」ということなんですね(笑)”


 “明日の天気は変えられないが、明日の政治は変えられる。政治をあきらめないということです”



 “では何をやるのか。
 ①当たり前のことをやるということです。
 毎日学校に行くことです。 週に2〜3回だけ行くということではないのです(笑)”


 “全身全霊でやるということです。 危機管理の上でこのことは大事になります。知事は災害などで必要なのは、現場に陣頭指揮で立つということです。


 しかし、こんな当たり前のことをマニフェストに書く人なんていません(笑)”



 ②“昨日4月2日は入庁式です。法律を守ると宣誓して公務員になります。法律の最上位が憲法です。私が知事になるにあたって、憲法を守りますとマニフェストに書かないのは、当たり前だからです。


 ところが、あの知事は今の憲法は米国から押し付けられたものだから無視してよいと。これでは困るのです”



 ③“憲法で大事なのは人権の問題であります。
 政治は弱い人のためにあるんです。お金を持っている人や権力をもっている人はどうぞ勝手におやりくださいということです。


 ところが、石原さんはそうした立場の人になんとひどい言葉をなげかけているんでしょう。言葉の暴力です。しかも首都東京の知事という公の立場にある人の発言です。
 これはものすごい人権侵害です。そこで私は人権派知事になりますといっていますが、これもマニフェストにのせることではないのですね(笑)”



 ④“次に情報公開の問題です。情報公開というのは、覆っている洋服をぬぎ、裸になるということです。私の方の方言で恥部といいます(笑)”
 “誰も見せたいと思う人はいないですが、見せなければいけないとなれば、きれいにしておくことになります。転ばぬ先の杖ということなんです。
 広報というのは、行政のいい事を並べている報告です。


 過去のこと、知られたくないこと、見られて嫌なこと、それを出すのが情報公開です。


 宮城県は7年連続情報公開No.1になりましたが、幹部を集めてそれを訓示したことなどありません。
 ただ、過去裏金問題がでて、管理職手当てから77ヶ月に渡って、天引きされたということがあって、隠したってダメ、隠したってこうなる、そういうことがあったから、情報公開が根付きました。これも当たり前のことです。


 東京は、9年連続欄外となって・・・・・・東京都政を変えるとは、こういう当たり前のことをまずやって行くということなんです”


 なるほど、浅野節というのはこういうものかと、改めて感じ入った次第。あまりつべこべ言わずに、とにかくご覧に供することとする。