石原都知事のいわゆる「実行力」

　昨日もそうしたが、本論に入る前に一言書いておきたい。30日から浅野史郎候補の陣営が民主党や社民党など政党の応援を解禁したようで、これについてとりあえず、nikkansports.comとSANSPO.COMの２つの記事を目にした。どちらともただの赤新聞なので、記事に見識を期待するべくもないし、こういう記事それ自体はどうでも良いのだが、しかし候補の支持者の中にも、政党（特に民主党）の応援を快くなく思う人が少なくないのではないかと思われる。そこで、老婆心ながら一言記しておきたい。言いたいのはただ一言、どーでもいーじゃねーの、である。応援したいと言っている人を排除する理由は全くないのである。民主党も社民党も、可能なら共産党も自民党も公明党も諸種の地方政党も、さらには左党も甘党も、応援したければ応援すればよいではないか。私が選対なら、小異を捨てて大同につく、我が陣営の候補は皆さんから担いでいただいている候補です、と売り込むだろう。

　いずれにせよ、浅野氏を支持する人々は、浅野陣営が相当厳しい選挙戦を戦っていることに思いを致すべきだろう。この週末で世論調査の結果が発表されるはずであり、それは浅野陣営にとって相当厳しい結果となる可能性が高いと思われる。浅野氏を支持する人々は、内輪もめをしている時ではないのである。石原氏を支持する人々はどうするかって？　それは、創価文化会館関係者にでも尋ねられるがよい。彼らが自分の信条を大事にするかどうかが、今回の都知事選の動向を決める要因の一つだろうから。

　ところで、石原都知事のいわゆる「実行力」、である。

　世評では、石原都知事は「実行力がある」とか「トップダウンだ」とか言われる。それが全く当たっていないなどとは言うまい。確かに、例の東京マラソン（石原氏本人は「大東京マラソン」と呼びたかったという話を聞いたことがあるが、もしそうなら、少なくとも私にとっては、その価値は半減以下になるだろう・・・というのも、「大東京」なんて、くそみっともないではないか）を大規模な形で開催したのは、石原氏がごね通したからなのだろう。また、ディーゼル自動車の排ガス規制も、これは業績として評価されて良いだろう。ただ、思うに、排ガス規制の問題はディーゼルにとどまるわけではないはずである。ガソリン車もまた、規制がかけられるのでなければならない（東京大気汚染公害裁判はようやく、都知事選直前になって解決の方向へと動き出したようだが）。

　しかし、トップダウンのその実行力がとんでもない結果を生むこともあることに、もっと注意が払われるべきではないだろうか。その好例は銀行に対する課税の問題である。ウィキペディアの記事によれば、敗訴した都側は銀行に2344億円を返還することになったという（全くの余談だが、こういう事典の記事は、可能ならインターネット上で然るべき典拠を見つけてそこへのリンクをつけるのが望ましいだろう）。これはまあ、もともと課税した分を返還する話だから、実損は徴収と返還にかかる事務費ということになるのだろう。

　しかし、もう一つの「トップダウン実行力」（換言すれば、思いつき）の結果は、周知のように新銀行東京の大赤字である。本ブログの先日の記事の中で引用したこの記事によれば、累積赤字は開業１年半で456億円とのこと。１年当たり300億円の赤字を出している計算になる。

　さらに言えば、今回の都知事選の重要な争点となりつつある築地市場移転の是非をめぐる問題だが、これについては石原はひたすら他人事を装っている。曰く、自分より以前に始まった話だと。しかしもちろん、このような逃げ口上は許されるものではない。やめるつもりなら、自分が任期の間にやめると決めさえすればよかったのだから。「実行力」の知事にしてこの不作為、なのである。石原都知事が再選されれば、このまま他人事を装いながら、汚染された豊洲への移転が強行されることが予想される。

　これらすべてをひっくるめて、石原都知事の実行力は語られ論評されるのでなければならないだろう。

　また、東京新聞でもさらに次のような記事が出ている（なお、この間に東京新聞のWebサイトが模様替えされ、残念ながら１週間以上前の記事は閲覧できないようになったようだ）。
　３月30日：現場０７都知事選▼１　木密地域　震災への不安進まぬ対策
　３月31日：現場０７都知事選▼２　築地市場　移転に揺れる『日本の台所』
　３月30日：都知事選、中盤迎え２候補会見
　３月31日：都知事選、中盤迎え２候補会見　石原氏　国との対峙強調

　と、こうして探していて気づいたのだが、読売新聞のWebサイトには、都知事選関連の特集記事が全く見当たらないようである（私の探し方が悪いのでなければ）。なるべく触れたくない話題なのだろうか。理由はともあれ（また、紙面上では異なっているのかもしれないが）、興味深い現象ではある。