深浦、タイトル奪取の予感――第48期王位戦――


 第48期王位戦7番勝負は、第1局第2局とも力のこもった将棋で、大変に見ごたえがある。そしてそれだけに、この2局をいずれも挑戦者の深浦八段が勝ちきった(しかも即詰みで勝った)ことは意味深長である。生涯勝率が7割を超える(つまり、3局指せば2局は勝つ)羽生三冠に対してほぼ指し分けの成績を残している数少ない棋士の一人が深浦であることは将棋ファンには周知の事実だが、今や羽生にとって深浦は(森内と並んで)最も苦手な相手になりつつあるのではなかろうか。生涯勝率約7割を誇る深浦はタイトルホルダーに値する実力を十分に有する棋士であり、彼がこれまで無冠だったことがむしろ異常だったのである。この際ぜひともタイトルを奪取して、かつA級への復帰を果たして、将棋界をリードする棋士の一人として活躍してもらいたいものである。


 こう書くと羽生を貶めているように思われるかもしれないが、そのようなつもりは無論毛頭ない。羽生が現在の将棋界の第一人者であることは、ここで云々するまでもなく自明なことである(実際にも、2007年7月27日対局分までで羽生の今年度勝率は0.6667、つまり相変わらず、3局やれば2局は勝っているのである)。強者は強くあってもらわなければならない。それが、羽生に課せられた運命なのではあるまいか。


 それにつけても、議員の世襲は政治から駆逐されなければならない。


追記(7月28日)
 今日の囲碁将棋ジャーナル王位戦第2局が取り上げられていた。どこがこの将棋のポイントだったか、どの手が勝因または敗因だったかなどの説明が一切ない、解説としては極めて不出来な取り上げ方だったが、しかしあえて深読みするなら、この王位戦第2局はプロ棋士の目にも、どこが悪かったかが一目ではわからないような将棋だったのではないだろうか。とすれば、指された手にはほとんど間違いがなかった、つまりほぼ必然の進行の結果、深浦は勝ち、羽生は負けたことになる。そういう「必然」の結果としての敗北ほどにプロ棋士にとって重苦しいこと(悪夢)はないだろうと思われる。この重圧を羽生はどうやってはね返すのか。ますます以て第3局が注目される。