第67期名人戦第5局――今度は名人のジリ貧負け


 名人戦に関する前回の書き込みでは私は羽生のことを将棋界の「第一人者」と呼んで書いたが、そのような評価は早晩改めなければならなくなるかもしれない。今回の名人戦第5局で羽生は実にみっともない、プロしかも名人として最もやってはならないジリ貧負けを喫したからである。


 敗因については、もちろんいろいろあるだろうが、やはり74手目だろう。ここで後手は△3二龍と龍を自陣に引いたが、この後この龍を活かすことが全くできていない。よって、ここはどうあっても△1四龍と頑張るべきだったのではないかと思われる。


 ただ、羽生の勝ち負けを超えて一言言うとすれば、今回の第5局は、将棋の有段者が見れば力の入った将棋、力相撲ならぬ力将棋として鑑賞に値するのかもしれないが、終局までのそれら数十手は(というのは、確かに出だしは極めて華やかな指しっぷりではあったので)、素人目にはとてもとても、鑑賞して楽しめる代物ではない。棋士はファンをわくわくさせる棋譜を作ることができて初めてなんぼのものである。そういう観点からすれば、今回の第5局は両対局者の極めて不出来な作であり、両者にはこういうへぼ将棋(といってももちろん、ふつう言う意味でのへぼ将棋とは異なるのだが)を作ったことを反省してもらいたいと願う。


 ではどういう将棋がへぼ将棋でない好局、名局かって? それについては、本ブログでも以前に様々な棋譜に触れており、その中には現在でも閲覧可能なものもあるので、記事一覧の「文化」の項目でご覧いただきたいと思う。個人的には第48期王位戦第7局(この記事にリンクを掲げてある)と第32期棋王戦第1局(この記事にリンクを掲げてある)がお勧めだが。


 今回のようなみっともない将棋で名人戦の決着がつくことのないよう願うのみである。