次期米大統領はオバマで決まり――そして日本は自主独立の政治、独自外交を進めるべき


 つい先日「当方は予想屋ではない」と書いたばかりなので、こういうことを書くのは明らかに矛盾しているが、まあ論理矛盾というような話ではないので、この程度は許すことにする。ともあれ、次期米大統領オバマで決まりである。すべからくアメリカ人はオバマを大統領に選ばなければならない。


 聞くところによると、白人が投票する際に、世論調査には黒人候補支持と答えておいて、実際は白人候補に投票するという投票行動を指して「ブラッドリー効果」と呼ぶなどという話もあるようだが(これに関する毎日新聞の記事としてこちらを参照)、しかしそれにしても今回の共和党側の候補は悪すぎる。ペイリンなどは史上最悪の米副大統領候補であり(これについては末尾に引用した朝日新聞のこの記事を参照)、かつ大統領候補たるマケイン自身も、もともとは、候補者争いに出ては負けるという、日本の小泉純一郎に優るとも劣らない常連泡沫候補だった。そういう輩が大統領候補に据えられること自体が共和党の現在のていたらくを示していると言ってよく(片や日本は、小泉のような不適格者を首相にしてしまった結果、政治がいかにひどいものとなったか――これは今さら言うまでもあるまい)、それゆえ、共和党は日本の現在の自民党に優るとも劣らない危機的状況にあると言ってよいのではなかろうか。


 但し、こう書いたからといって、以前に本ブログで書いたオバマという政治家に関する評価が変わるわけでは全くない。オバマは大統領になるや否や、大変苦労することとなろう。人種問題然り、イラクアフガニスタンでの軍事行動然り(オバマは対アフガニスタン政策――オバマが軍隊の増派を主張していることはよく知られている――では失敗する可能性が高い)、加えて近ごろ表面化した金融危機然り。特に、金融危機は必ずや実体経済の危機にまで広がり、アメリカは今後著しい経済的後退(recession、すなわち大不況)を経験することとなろう(これは予測云々の話ではなく、ほぼ確実なことである)。アメリカが相当程度内向きの国になることも我々は想定の範囲内としなければなるまい。



 そこで、アメリカがそうなることを踏まえて、我が日本である。日本政府の現在の首相である麻生の馬鹿(念のため言うが、一々日本の首相を馬鹿呼ばわりするのを喜んでやっているわけでは全くない)は、「踏襲」という単語を「ふしゅう」と読むどうしようもない低能・魯鈍だが(10月15日の参院予算委員会での福島瑞穂議員(社民党)への答弁での出来事)、それにとどまらず、とんだパフォーマンスもやってくれている。朝日新聞の記事がよく伝えているので、以下に引用するが、

物価高を実感? 首相がスーパー視察、夕食は帝国ホテル
2008年10月19日20時51分


 麻生首相が19日、東京都新宿区でスーパーを視察した。「物価の話とか品切れの話とか、値段が同じだけど量が減ったとか、現実にどうかなと関心があった」という。財閥一家で育っただけに、市井の暮らしを肌で感じたかったようだ。


 鮮魚や冷凍食品などを15分ほど見て回り、「最近バター品切れらしいけど、今日はあるね」「(実質的な値段が)3割上がったの?」。視察後は記者団に「パスタとかは値段は同じで量が減り、魚は値段がほとんど変わっていない。ものによって違う」。


 首相はこのあと、都内の帝国ホテルで秘書官と夕食をともにした。

麻生の馬鹿さ加減は最後の一文によく現れている。所詮はお金持ちのお坊ちゃんということだ。だいたい、「物価の話とか品切れの話とか、値段が同じだけど量が減ったとか、現実にどうかなと関心があった」という言葉自体が、麻生が如何に生活感覚を持っていないかを示している。「語るに落ちる」である。


 こういう馬鹿はとっとと首相を辞めて、ついでに政治家も辞めてほしい。要するに、何とかは死ななきゃ治らないのである。
(さらに末尾の追記を参照。)



 そこで、日本は馬鹿な麻生もろとも自民党を野に下らせたとして、次にどうするべきか。アメリカはこれからさらに大変なことになるのだから、日本は今後アメリカとはほどほどにつき合うように心がけるべきである。


 政治家ならぬ政治屋の中には、100兆円ある日本の外貨準備の半分をアメリカの金融危機対策のために提供するべきだと言っている連中がいるとのことである(植草一秀氏のブログの記事による)。冗談ではない。いったい誰の金だと政治屋連中は思っているのか。お前らの金ではなく、ましてアメリカ人のものではない。日本政府が保有している米国債を米金融機関の株式と交換することなど、ドブに金を捨てるたぐいの話であり全く論外、あってはならない。そもそも米国債ですら、今後一層のドル安によって目減りする可能性が少なくないのだから。言うまでもなく、そもそも(円安誘導のためにだろうが)外貨準備を100兆円までも積み上げたこと自体が失政だと言ってよく、今後はこの金額を圧縮するべきだろうが、しかし間違っても政治屋連中の言うようなことのために使うべきではない。


 要するに、前回の記事でも言ったことだが、アメリカがこれから大きく変わろうとしている。したがって日本は、今後は自主独立の政治を行ない、かつ独自の外交を模索するべきである。ここではこれ以上ぐだぐだ書くことはしないが、アメリカに頼りきりという時代は終わりつつあるのである。



 ペイリンを酷評した米紙について報じた上述の朝日新聞の記事は以下のとおり。

共和党寄り米2紙、オバマ氏支持社説 LAタイムズなど
2008年10月18日18時23分


 【ワシントン=梅原季哉】米大統領選で、伝統的に共和党寄りの姿勢を示してきた米大手2紙が17日、民主党オバマ候補を支持する異例の社説を相次いで掲載した。支持率で苦境に立たされている共和党のマケイン候補にとっては、耳の痛いニュースがまた増えた形だ。


 シカゴ・トリビューン紙はオバマ氏の地元イリノイ州発行だが、創刊から161年間の歴史で民主党の大統領候補支持は初めて。米経済がかつてない危機に直面する中、オバマ氏なら「苦難の時でも、国としてのまとまった目的意識を抱くよう我々を導くことができる」と認めた。


 マケイン氏については「我々は好意を持っており、共和党予備選の段階では支持表明していた」としつつも、ペイリン・アラスカ州知事を副大統領候補に選んだことを「彼女は万が一の時に、大統領職を務める準備ができていないのは明らかだ。マケイン氏は国家よりも自分の選挙戦を優先した」と批判した。


 ロサンゼルス・タイムズ紙も72年以来、共和党候補を支持し続け、大統領選での民主党支持は40年ぶり。ペイリン知事を「我々の記憶する限り二大政党の副大統領候補として最も資質に欠ける」とみなし、マケイン氏の選択は「無責任だ」とこきおろした。


追記(11月11日)
 周知のように、麻生のバー通いはその後いろいろと問題になったが、その中で出色だったのは、麻生との記者のやりとりを逐語的に報じた毎日新聞の記事である。備忘のため、以下に引用しておくことにする。

麻生首相:あす就任1カ月 連夜の「会合」批判にキレる


 ◇有名ホテル、高級飲食店…密談説も


 麻生太郎首相が就任してから24日で1カ月。連夜のような有名ホテルや高級飲食店での会合について「庶民感覚とかけ離れている」と記者団から質問を受けた首相は22日、「ホテルは安い」「自分のお金」などと強く反論し、「変えるつもりはない」とこだわりを見せた。一方で、会合の相手が首相官邸の発表と違うことも発覚し、夜な夜な密談を重ねているとの見方もある。【西田進一郎、木下訓明】


 「高級料亭、毎晩みたいな(話に)作り替えていますが、それは違う」「ホテルのバーは安全で安いとこだという意識があります」


 首相は22日昼、記者団に独自の認識を強調。「安いところに行ったとして、(新聞記者らが店の前に立つことで)営業妨害って言われたらなんて答える? 店の妨害して平気ですか。聞いてんだよ。答えろよ」と、逆に詰問する場面もあった。


 麻生首相の夜会合の多さは、福田康夫前首相と比べ際立つ。公務を終えそのまま私邸に戻ったのは就任から21日までの28日間で4日だけ。インドのシン首相との夕食会があった22日はさすがにそのまま帰宅したが、「はしご酒」の日も多い。民主党簗瀬進参院国対委員長が22日の記者会見で「そういう所で本当の庶民の心はわからない」と指摘するなど野党の批判もあり、側近の松本純官房副長官は自らのブログに、首相が会員制バーでハンバーガーをほおばる写真を掲載し「庶民派」をアピールする。


 一方、夜の会合は「密談の場」との見方もある。例えば広報担当の首相秘書官の発表では16日夜、首相は東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテルの中華料理店で「秘書官と食事」をしたはずだった。しかし首相が店を出た後、店内から中川昭一財務相甘利明行革担当相、菅義偉自民党選対副委員長が現れ、首相と一緒だったと認めた。他にも「首相に会うので、ばれないようホテルにはいつもと違う車で入った」(自民党幹部周辺)という証言もある。


 出入り口が多く密談には便利なホテル。衆院解散をにらみ夜の会合は当分続きそうだ。


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 ◆22日昼の首相と記者団とのやり取り
 ◇引っかけるような言い方はやめろ/ホテルは安い所だと思う/スタイルは変えない
 22日昼の首相と記者団との主なやり取りは次の通り。
 記者 夜の会合、連日で、一晩で何万円もするような高級店に行っているが、庶民感覚とかけ離れている。
 首相 僕はこれまでホテルが一番多いと思いますけれどもね。あなたは今、高級料亭、毎晩みたいな作り替えていますが、それは違うだろうが。引っかけるような言い方はやめろって。もうちょっと事実だけ言え、事実だけ。馬尻(就任後3回行った東京・六本木の飲食店)がいつから高級料亭になった? 言ってみろ、言ってみろ。だからそういう卑劣な言い方はだめ。いかにも作り替えるような話はやめたがいい。
 記者 一晩に一般の国民からすると高いお金を払って食事をするという意味で私は申し上げました。
 首相 きちんとそれ定義言ってね。あなたの質問、時々代表して聞いているけれども、いつもなんとなーく、妙にひねて聞いているように聞こえるんだね。
 記者 そういった批判があることについてどう思うか。
 首相 僕はこれまでもずっと、あのー、少なくともホテルというところは安い所だと思っていますね。たくさんの人と会うというのは、ホテルのバーっていうのは安全で安い所だという意識が僕にはあります。正直なところです。だけど、ちょっと聞きますけれども、例えば安いとこ行ったとしますよ。周りに30人からの新聞記者いるのよ。あなた含めて。警察官もいるのよ。営業妨害って言われたらなんて答える? 「あなたのおかげで営業妨害です」って言われたら、新聞記者として「私たちの権利です」って言って、ずーっと立って店の妨害して平気ですか? まあ、聞いてんだよ。答えろよ。ふっふっふっふっふ。
 記者 私がうかがいたいのは……。
 首相 いや、おれの質問に答えてくれ。だから、おれもそれ答えてるんだから、今。おれが質問している。平気ですか?
 記者 我々は営業妨害はしないように取材をしている。
 首相 いや、してるって。現実、みんな「している」って言われているから、おれも。だから「うちは来ねーでくれ」って。だからホテルが一番言われないんですよ。分かります? だからあなたは、自分の都合だけで聞いている。ように、おれには聞こえるんだね。おれには。だからホテルが一番人から文句言われない。僕はそう思ってます。だからこれ、これまでのスタイルですし、これからも変えるつもりは、今のところありません。
 記者 お金に色は付いていないんですが、政治献金政党助成金という形でお金を出すのは高級な食事をするだけのためではないと思いますが。
 首相 自分のお金だから。政党助成金もしくは私のその種の金。幸いにして自分でお金がありますから自分で払っています。はい。


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 <首相が夜に訪れた店など>
 (いずれも東京都内)
 【ホテル】
 ●帝国ホテル(内幸町)計6日
 ▼客室3回▼会員制バー「ゴールデンライオン」3回▼バー「インペリアルラウンジ アクア」
 ●ホテルオークラ東京(虎ノ門)計4日
 ▼宴会場▼バー「ハイランダー」▼バー「バロンオークラ」▼バー「オーキッドバー」▼日本料理店「山里」▼中国料理店「桃花林」
 ●ANAインターコンチネンタルホテル(赤坂)計3日
 ▼中国料理店「花梨」▼日本料理店「雲海」▼バー「マンハッタンラウンジ」▼レストラン「イタロプロバンス ダイニング」
 ●ホテルニューオータニ紀尾井町)1日
 ▼日本料理店「藍亭」▼飲食店「カトーズダイニング&バー」
 ●グランドプリンスホテル赤坂(赤坂)1日
 ▼中国料理店「李芳」
 【その他】
 ●飲食店「馬尻」(六本木)計3日●フランス料理店「ペリニィヨン」(銀座)●中国料理店「維新號」(紀尾井町)●日本料理店「花がすみ」(元赤坂)●日本料理店「京寿々」(広尾)●フランス料理店「アピシウス」(有楽町)●ウナギ料理店「重箱」(赤坂)


毎日新聞 2008年10月23日 東京朝刊