日本の外交の完全な失敗――アメリカ、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除


 既に日が経っているニュースだが、その重要性に鑑み、本ブログでも一言しておきたい。アメリカが北朝鮮に対して圧力をかけてくれることを期待して、つまり他力本願で、組み立てられていた日本の対北朝鮮外交が、完全に失敗したことを今回の出来事(指定解除)は示している。このことは、少なからぬ人々が予想していたところであり、本ブログも、予想していたとまで言うつもりはないが(当方は予想屋ではないので)、今回のニュースに接して少しも驚くところがない。


 しかも、私自身は直接目にしなかった話だが、天木直人氏のブログのこの記事によれば、アメリカの対北朝鮮交渉担当者であるヒル国務次官補とやらは、アメリカの上院秘密公聴会で日本をさんざんに言っていたとのことである。そのような担当者が交渉を進めれば、どのみち今回のような決定は必然だったのではなかろうか。


 つくづく外務省の人間の馬鹿さ加減が窺われるというものである。外務省は本当に馬鹿である。その馬鹿さ加減は、例えば朝日新聞のこの記事での外務省の人間の狼狽ぶりによく示されている(末尾で引用する)。


 しかも新聞記事によれば、今回のアメリカの決定に対して麻生首相は「理解を示した」とのこと。外務省の振り付けによる発言ならば、外務省は恥の上塗りをしていると評さざるをえず、そうでなく麻生自身の発言なら、このことは、麻生には外交当事者能力がないということを示している、と言わざるをえない。なぜ「遺憾である」の一言すら言えないのか。実際、日本のこれまでの対北朝鮮外交の最大の手がかりとしてきたはずのものが、あっさりと瓦解してしまったのだから、少なくとも「遺憾である」ぐらいは言うべきだったろう。独立国家としての気概が日本の首相及び外務省にあるのなら(上述の意味での他力本願が、独立国家の外交方針としておよそふさわしくないというのは、それは全くそのとおりなのだが)。


 ただ、他力本願が叶わないこととなった今、日本は、もし本当に拉致問題を解決したいのなら、自力で解決することが求められていることになる。これは、日本が本当に独立の外交を始めるための良い第一歩かもしれない。これに関して本ブログは、この問題に関してどのように事を進めるべきかについて、過去の記事で既に考えを述べたことがあるので、ここではそれを繰り返すつもりはない。


 しかし、今の外務省には何もできないだろう。何しろ馬鹿だから。その意味でも、ぜひとも政権交代を行ない、外務省には外部から相当数の人間を採用して、米国追従一辺倒である省内の雰囲気を一新するべきである。外務省に従来からいる馬鹿どもに全く期待できない以上、こう希望するほかない。


 上で言及した朝日新聞の記事を引用しておくことにする。

「蚊帳の外」に置かれた日本 テロ国家指定解除
2008年10月12日7時5分


 米政府が北朝鮮テロ支援国家指定の解除について日本側に伝えてきたのは、発表の直前だった。「蚊帳の外」に置かれた日本は、米国への信頼が揺らぐ事態に衝撃を受けている。


 「ブッシュ大統領麻生首相に直接電話で伝えたい」


 シーファー米駐日大使から日本外務省に連絡があったのは、日本時間の11日夜。電話がつながったのは米国がテロ支援国家指定解除を発表するわずか30分ほど前だった。


 麻生首相浜松市内のホテルで開かれた日本青年会議所歴代会頭らの懇談会の2次会に顔を見せていた。酒席を中座してのあわただしい電話協議だった。


 米国によるテロ支援国家指定解除の発表を、日本政府は直前までまったく予期していなかった。「蚊帳の外」に置かれた格好の日本側にとって、同盟国・米国との信頼関係が大きく揺らぎかねない事態。拉致問題の行方にも暗雲が漂い、支持率が伸び悩む麻生政権にとって新たな痛手となりそうだ。


 突然の指定解除は、日本政府にとって悪夢だった。


 主要7カ国財務相中央銀行総裁会議G7)のため訪米中の中川財務相兼金融相は11日朝、ライス国務長官にテロ指定解除の動きについて、「認められない」と訴えた。


 しかし、ライス長官は「(解除は)形式的なもので、まったく意味のないことだ」と取り合わなかった。中川氏は日本の拉致被害者家族の存在を指摘し、「解除する際は大統領から日本にメッセージを出してほしい」と申し入れるのがやっとだった。


 11日に、米メディアが相次いで米政府の指定解除の方針を報じても、外務省幹部は「まったくの誤報だ」「今日あったとしたら、私もだまされたということだ」と断言していた。政府高官も同日夜「麻生首相は、今の米国の説明に絶対に納得していない。そのことは、はっきりと伝えてある」と語気を強めた。


 自信の根拠は、これまで培った日米連携の盤石さだ。日本は昨年来一貫して「拉致問題で進展がない場合はテロ支援国家指定を解除しないで欲しい」(高村前外相)と米国に要請。これに応えた米側が、6月に議会にテロ支援国家指定解除を通告するのに先立って北朝鮮に強く働きかけたことで、6、8月に日朝実務者協議が実現した。


 今回日本は、テロ指定解除が「既定路線」だということは分かっていた。それでも「北朝鮮の核の脅威を最も受ける国」として、検証計画の中身について米国に厳しい態度を要求。中曽根外相は10日夜、ライス長官との電話会談で「さらに確認すべき点が残っている」と日本の立場を伝え、「一両日中の解除はない」(政府関係者)との感触を得ていたはずだった。


 11日中の解除を否定し続けた外務省幹部は米政府の発表を受けて「(ブッシュ大統領は)検証のやり方について日本の意見に完全に共通の理解を示した」と、説明を取り繕った。


 中山前国交相辞任で船出につまずいた麻生政権は、米国発の国際金融危機への対応でリーダーシップを発揮し、支持率回復へとつなげる戦略を描いたが、米朝融和は日本に冷や水を浴びせる結果になりかねない。政権発足直後に訪米した麻生首相は日程調整がつかず、ブッシュ大統領との首脳会談が実現できなかった。日米首脳間の「個人的な信頼関係」を結ぶ機会がないまま、首相は受け身の外交に向き合わざるを得ない状況だ。