日本社会のためにならないマクドナルド


 「マクドナルド、残業代払って店長手当て打ち切り」という記事(本文を末尾に引用しておくことにする)が今朝の朝日新聞に載っていた。実にけしからぬ話であり、そういうことを言う社長はどういう面をしているのかと思ったら、上記記事にちゃんと写真が載っている。こういう悪人の顔を我々は忘れるべきでない、と私は思う。


 記事には「店長には、これまで基本給、成果給に加え、店長手当などの「職務給」があった。今回の制度変更で職務給がなくなり、代わりに残業代にあたる「時間外労務手当」を払う」とあり、「店長らへの給与の支払い総額は、いまと変わらないという」とある。しかしまず、働き手の側の待遇を一方的に変更するようなこのような制度変更が認められてよいのだろうか。極めて疑問である。また、当然ながら残業代は、通常の勤務に比べて割増での支払いとならなければならない。それが100時間分支払われるようになって、支払い総額が従前と変わらないとはいったいどういうことなのか。マクドナルド側の今回の制度変更には疑義が少なからず存在する。メディアにはその点の追及もやってもらいたいものである。


 ところで、外国に旅行してマクドナルドなどファストフード店を使った時を思い返すと、マクドナルドは日本には本来不要なものだという思いがしてくる。何が言いたいかということだが、本来外国においてファストフード店が流行ったのは、外国では、特に昼食を割安で済ませる方法がファストフード店以外になかったからではなかろうか。最近でこそ、多少バラエティーに富んできたかもしれないが、しかしそれでも、外国におけるファストフード店の割安感は、日本での場合とは比較にならないように私などには思える。


 これに対して日本では、ラーメン屋やそば屋、それに(比較的新しい――といっても、できて既に数十年になるのだろうが――)牛丼屋など、日本式のファストフード店、しかも割安なそのような食堂がもともと多数存在する。マクドナルドなどファストフード店が割安だという印象は、少なくとも私には全くないし、たぶん一般にも、あれが他の食事処と比べて格段に安いなどと考える人はまずいないのではなかろうか。となると、後はそのような食事形態が好ましいかどうかという点が問題になるが、ファストフードなんてそんなにおいしいものかねえ。私などはそう思ってしまう。


 いずれにせよ、もともと日本では存在意義が薄く、しかも従業員に対する待遇の点で極めて反社会的なマクドナルドのような企業を、ファストフードを食べることによって儲けさせていてよいであろうか。もともとファストフードなど食べたいと思わない私のような人間がいくら不買運動をやっても無意味だが(もともと買わないので)、ふだんファストフードをよく食べる人は、マクドナルドのような企業を本当に儲けさせ続けてよいかどうか、今一度考えてみるべきではなかろうか。


 冒頭で引用した記事の本文は以下のとおり。

マクドナルド、残業代払って店長手当て打ち切り
2008年05月20日23時02分


 ハンバーガーチェーンの日本マクドナルドは20日、直営店の店長約2千人に、8月から残業代を支払うと発表した。権限が大きくないのに残業代が支払われない「名ばかり管理職」だと指摘されていたためだ。ただ、店長手当は打ち切り、支払う給与の総額は増やさないといい、待遇改善の効果は薄いとみられる。
  

 残業代を払うようにするのは、直営店の店長のほか、複数の拠点を管理する「エリア営業管理職」数百人。社内では管理職との位置づけは変えないが、法的には「経営者と一体的な立場」とされる「管理監督者」ではなくなる。上に立つ管理監督者は、「ディレクター・オブ・セールス(販売部長)」が務める。


 店長には、これまで基本給、成果給に加え、店長手当などの「職務給」があった。今回の制度変更で職務給がなくなり、代わりに残業代にあたる「時間外労務手当」を払う。残業代の支払い総額の見込みは示さなかったが、店長らへの給与の支払い総額は、いまと変わらないという。


 「労務監査室」を新設し、店長の勤務時間を管理。残業代を申請しない「サービス残業」の発生を防ぐと説明している。


 マクドナルドに対しては、直営店の店長が未払いの残業代の支払いを求めた訴訟を起こした。東京地裁が今年1月に訴えを認め、約750万円の支払いを命じる判決を出している。


 20日に会見した原田泳幸(えいこう)・日本マクドナルド会長兼社長は、「『名ばかり管理職』の報道の度に、弊社の裁判のケースが出るのは残念だ」と話したが、一方で「本制度の発足と係争中の裁判のことは、別々で独立した議論だ」と述べ、すぐに和解はしない考えを示した。店長への残業代も「(過去に)さかのぼって支払うことはない」と明言した。


 今後、残業を厳しく抑制する方針を示しており、店長らが会社からの評価が下がることを恐れ、申告しないまま残業を増やす可能性も指摘される。