民主党による「権力の乱用」という福田首相の主張の愚かさ


 いやはや、福田康夫がここまで愚かだとは思わなかった。もう少しましな政治家かと思っていたが、もはや手の施しようがないと言わざるをえない。


 そう思ったのは、朝日新聞の次の記事を目にしたからである。

首相、民主へ怒りおさまらず メルマガで「権力の乱用」
2008年04月10日23時40分


 「目先の政局ばかり意識して、国民不在の政治闘争を続けることは、参議院の第1党という権力の乱用にほかなりません」。福田首相は10日付の「内閣メールマガジン」で、9日の党首討論に続き民主党への憤りをぶちまけた。


 タイトルは「ねじれ国会。福田康夫です。」。渡辺博史前財務官の日銀副総裁起用をめぐる民主党の対応を「経歴だけを見て適・不適を決めるやり方は納得できない」としたうえで「『財務省だからダメ』という拒否理由をただ繰り返した」と党首討論での小沢氏の発言を批判した。


 「物事が決まらない時間切れの政治。拒否権を振りかざすだけの政治」と嘆いたが、一方で「いかなる課題についても野党の皆さんと話し合う用意があります。今後ともねばり強く、できる限りの努力をしていく覚悟です」と、自らに言い聞かせるように書いた。(北沢卓也)

 野党が権力を持っているという言い方は、私の語感にはどのようにしても合致しない。実際、野党がやっているのは単に反対していることだけではないか。反対することが権力の乱用? 権力の「抑制」ならまだわかるが。いずれにせよ、権力を持っているのは政府・与党の側であり、その権力の行使の仕方が間違っていたのが、今回の日銀総裁・副総裁選びの混乱の根本原因である。


 ところで、この新聞記事自体は厳しく批判されなければならない。首相のメールマガジンとはもちろん、首相にとってのプロパガンダの道具の一つではないか。そのプロパガンダの道具を単に紹介しただけでジャーナリストの責務が果たせていると思っているのなら、とんでもない間違いである。「と言っても、お前はその記事を読んで考えを新たにしたではないか」と言われるだろうか。とんでもない。福田康夫にあきれているのは今に始まったことではない。その考えが、今回のメールマガジンとやらで裏打ちされただけの話である。この記事がなくとも、福田康夫に対する評価は少しも変わりはしない。


 さらに言えば、朝日新聞の中には、橋下大阪府知事の言行をやたらと記事にする馬鹿記者もいるようである。自分がそうすることが、広告費をかけずに橋下が自分を宣伝することになっていることに、この馬鹿記者は気づいていないのだろうか。タレント知事にとっては、自分が注目を浴び続けることが次の選挙に勝つための必要条件である以上、橋下関連の記事を大朝日新聞が載せ続けることは、朝日が橋下の再選に向けての活動を応援しているということと同義だと言わざるをえない。私は新聞の中立性を無邪気に信じる者ではないが、それにしてもこの馬鹿さ加減は目に余る。ジャーナリストの風上にも置けないこういう連中を抱えていることを、朝日新聞は恥とするべきである。