石原都知事の大罪――「新銀行東京」延命のたくらみ


 今日、新銀行東京の延命が都議会の委員会で決議される予定だという。本ブログでは既に何度かこの問題を取り上げ、石原都知事の責任は大であり、新銀行東京は直ちに清算となるべきだと主張してきた(詳しくは、古い順にこの記事この記事この記事を参照)。しかし石原都知事と都議会与党(自民党公明党)は、あくまで問題の糊塗と先送りを図っているようである。その現れの一つが、朝日新聞の次の記事に見られる「監視機関」とやらの設置である。

新銀行東京で石原知事「おわび」 監視機関設置へ
2008年03月26日03時03分


 経営難に陥っている新銀行東京に東京都が400億円の追加出資をする議案について、都議会の自民、公明両党は25日、銀行の経営監視など3項目の付帯決議をつけることで合意した。議案は26日の予算特別委員会で、過半数を占める自民、公明の賛成で可決される見通しだ。野党からは「再建策などの疑問点がまだ解消されていない」と批判の声があがっている。


 自民、公明は25日の予算特別委に先だって、付帯決議の内容について調整した。(1)銀行の経営を監視する機関を設置する(2)再度の追加出資を禁止する(3)今回追加出資する400億円を棄損させない――との3項目を示す方針で合意した。


 自民はすでに賛成の方針を決めている。公明は同日夜、議員総会で協議。26日の委員会で「都民に一番負担の少ない案は他にない」と追加出資を容認する構えだ。


 25日の委員会では、経営悪化の責任を問われた石原慎太郎知事が「都の監視責任について、最終的な責任は私にある。このような事態になり、大変申し訳なく深くおわびする」と述べた。そのうえで「専門性のある外部委員による監視機関を整備する」との意向を示した。


 公明は公認会計士の都議が質問に立った。都は新銀行の不良債権について、延滞などで回収困難な約1100件、約145億円分について今年1月末までに債権回収会社に売却したことを説明。売却額は示さなかった。不良債権は「12年度にはほぼ解消する」との見通しを示した。


 野党側からは追加出資の妥当性や再建策の実現性に疑問を示す声が相次いだ。


 民主は質疑の持ち時間全129分を新銀行問題にあて、「大手銀行が中小企業融資に参入しており、新銀行の役割は既に終わった」などと主張した。再建計画での融資の詳細なデータを問いただしたが都側は十分な回答をせず、「企業秘密だ、守秘義務だと言ってほとんど銀行の実態が伝わってこない」と質問者がいらだつ場面もあった。


 追加出資議案は26日に委員会で採決され、28日の都議会本会議で正式に議決される。

 全く、馬鹿も休み休み言え、である。監視機関だと? そもそも経営の監視は銀行の経営陣がきちんとするべきであり、そしてその背後にいる出資者たる都もまたきちんと監視するのでなければならない。それでも足りずに屋上屋を架する挙に出たと、これを評するほかないが、当然ながら監視機関の要員には別途費用がかかるのではあるまいか。金の無駄、極まれりである。


 もちろん最大の無駄は、新銀行東京の存続それ自体に存する。この問題が本来先送りできないのは、新銀行東京は存続することによって日々赤字を増大させていくからである。清算が1年遅れれば1年分の損失が余計に加わるのだ。こんなことが許されてよいわけがない。


 この間、新聞やテレビでは新銀行東京の問題をめぐって石原都知事に対する批判が種々行なわれている。大変結構、と言うよりむしろ、極めて当然のことである。しかしながら、朝日新聞が行なった世論調査の次のような結果には驚かざるをえない。

新銀行東京 追加出資に73%反対 本社世論調査
2008年03月24日22時00分


 朝日新聞社が22、23日、東京都民を対象に実施した世論調査(電話)で、経営難に陥っている新銀行東京石原慎太郎知事が400億円を追加出資する考えについて、「反対」が73%にのぼり、「賛成」は17%にとどまった。新銀行東京は「清算するべきだ」が61%に達した。経営悪化について石原知事の責任は「大いにある」が44%、「ある程度ある」が49%で、合わせて9割を超えた。


 新銀行東京は石原知事が選挙公約に掲げ、都が1000億円を出資して設立したが、今年度末に累積赤字が1016億円に膨らむ見通し。石原知事は経営再建を目指し、追加出資案を都議会に提出している。


 追加出資について男女とも7割以上が反対し、すべての年代で6〜8割が反対した。石原知事の支持層でも58%が反対し、石原都政を支える自民の支持層で62%、公明支持層でも大半が反対した。民主支持層では82%が反対だった。


 都が銀行経営に参入したことについては「うまく経営する方法はあった」が54%、「もともと無理があった」が35%で、中小企業支援という当初の目的に一定の理解がうかがえる。しかし、新銀行東京の今後は「経営再建を図るべきだ」は26%にとどまり、「清算するべきだ」が61%を占めた。


 新銀行東京の経営悪化に対する石原知事の責任は「あまりない」が4%、「まったくない」が1%で、大半が知事に責任があると見ている。特に50代以上では「大いにある」が「ある程度ある」を上回り、視線はより厳しい。新銀行の経営難や再建策に関する石原知事の説明が「不十分だ」は83%にのぼり、「十分だ」は6%にすぎなかった。


 新銀行の経営悪化について、都議会がこれまでチェック機能を「果たしてこなかった」が85%で、「果たしてきた」の4%を大きく上回り、都議会への不信感が示された。


 石原知事の支持率は47%(前回07年7月は53%)で、不支持率は39%(同32%)。不支持率はこれまでの調査で最も高かった。

 追加出資に反対なのが圧倒的多数なのは当然だが、しかしそれにもかかわらず、石原都知事の支持率が不支持率を上回っているのはどういうわけか。今回の問題の焦点は、数百億円の損失を東京都にもたらす、それこそ石原都知事の大罪にあるのであり、しかもその新銀行東京が存続すれば、損失はさらに拡大することが目に見えている。新銀行東京をつぶせない石原都知事にやめてもらうのでなければ、この問題の解決が図れないのは明々白々ではないか。なのになぜ、支持率が不支持率を上回っているのだろうか。今回の新銀行の問題は「都政の中の一つの問題にすぎない」というような些細な話だろうか? 断じて否。ならば、都知事に世論が不信任(しかも、圧倒的な不信任)を突きつけるのでなければ、どうして問題が解決できようか。或いは、どうして石原氏に変心を期待することができようか。


 究極的には、多くの都民のこの愚かさこそが、今回のような問題を招来しているのだということを、都民(私もその一人だが)はもっと自覚する必要がある。同じこと(つまり、いつまでも与党や権力者を支持し続ける態度の問題性)は、都政に限らず国政についても言えるところである。