ミャンマー当局によって殺された日本人ジャーナリスト


 ここ数日ミャンマーの情勢が緊迫しており、政府が軍隊を動かして僧侶たちなどの弾圧に乗り出している。その中で、日本人ジャーナリストの長井健司氏が兵士の銃撃によって殺害された。


 まずはその殺害の瞬間を記録したビデオへのリンクを2つ掲げておく。
Shot dead trying to show the truth In Burma (YouTube)
Shooting footage raises questions (Reuters.com)(10月3日現在ではこのリンクからは見られなくなっている)>



(長井氏が銃撃された直後の写真。Reuters.comから)



(上の写真の拡大版。毎日新聞この記事に付された写真)


 長井氏は至近距離から撃たれている。兵士が意図的に殺したことはもはや疑いない。当然ながら、今後の日本政府の対応はこの事実から出発するものでなければならない。例えば朝日新聞の記事によれば、町村官房長官は記者会見で次のように言ったとのことだが、

 また、町村官房長官は28日午前の記者会見で、在ミャンマー日本大使館の医務官が27日夜に長井さんの遺体を確認した際の状況を明らかにし、「銃弾が右胸下部より下から入って心臓を貫通し、左側の背中の上部に抜けた跡が残っていた。おそらく出血多量による即死であるという報告をしている」と説明。町村氏は「それが意図的かどうか、至近距離であったかどうかは、真相を究明すべきところだ」と語った。

まだ事実が把握できなかったのだろうから仕方ないが、上記リンクから見られるビデオを見れば、意図的な銃撃であることは全く明らかである。日本人が殺されたことを前提に、日本政府は対応してもらわなければならない。上記朝日新聞記事によれば、福田首相

 首相は、ミャンマー政府に対する制裁について「ただちに制裁するかどうかは、もう少し状況を見極めなければならない。わが国の援助は人道的な部分が多く、いきなり制裁ということではない」と述べ、慎重に対処する考えを示した。

などと寝ぼけたことを言っているようだが、政府の援助が相手国の政府を抜きにして行なえるとは考えられない以上、独裁政府を通じた援助が果たして有効たりうるかどうかは、北朝鮮の例を想起すれば火を見るより明らかだろう。直ちにミャンマーへの援助を停止するべきだと考える。


 現在国連総会が開催中である。さらに、国際社会の態度を示すために、ミャンマーを非難する決議が国連において採択されるべきではあるまいか。先日の「感謝表明」などという実にくだらないことのためにではなく、こういうことのためにこそ、日本の国連外交部は動くべきではないか。


 また、ジャーナリストたちは、自分のブログでであれ他の手段によってであれ、今回の件に対して声を上げるべきではあるまいか。確かに、この記事によれば、国際的なNGO組織である「ジャーナリスト保護委員会」はミャンマー政府を批判する声明を出しているようだが(なお、同委員会が長井氏の殺害について発表した記事はこちら)、一般的に見て、どうも出足が鈍いように思われてならない。一人一人がそれぞれの持ち場で声を上げることこそが何より重要だと考える。――なお、言うまでもなく、このことを私は、同時に一般のブロガー諸氏に対しても言っているつもりである。


 それにつけても、議員の世襲は政治から駆逐されなければならない。


追記(2008年4月8日)
 この日の記事で掲げさせてもらった写真が2008年のピュリツァー賞の速報写真部門の受賞対象となったようである。撮影したのはロイター通信のアドリース・ラティーフ氏(34)とのこと。記事に使わせてもらったので、記して記念としておくことにする。