いつから朝日新聞は安倍の幇間になったのか

 「衆院補選 まずは合格点の安倍首相」
http://www.asahi.com/paper/editorial20061023.html#syasetu1
とあるが、いつから朝日新聞は安倍の幇間になったのだろうか。まあ、選挙の結果を採点してやったとでも言いたいのかもしれないが、今回の補選で書くべきことはほかにいくらでもある。



 まず、−−実際社説でも書かれていることではあるが−−民主党の力不足をもっと責めてよいのではないか。特に大阪での敗戦に関しては、例の細野議員と女性キャスターの不倫の問題で対処を誤ったことが響いたのではないかと思われる。当の女性キャスターは大阪方面で人気があったという話だからだ。細野とやらが自分で党の役職を辞任し(ところが実際には当初、進退伺を出すなどという馬鹿なことを細野はやっていた)、頭を丸めて坊主頭にしたところを報道陣の前に見せるぐらいのことをすべきだったと思う。或いは、−−道徳的に見て薦められないが−−不倫で突っ張ることもありえたのかもしれない(これは有権者の反応の如何によるだろうが)。



 また、未だに民主党は確固たる対立軸を見いだせずにおり、それが今回の選挙での敗北につながったわけだが、選挙結果を採点するぐらいならむしろ、何が対立軸たりうるかを示すことぐらい新聞はしてよいのではないか。例えば、今回の選挙でも神奈川16区は、自民党候補は明らかな世襲候補だった。世襲議員の存在が日本の民主主義にとってマイナスであることは言うまでもなく明らかである。そこの問題を民主党は当然突くのでなければならなかった。そして、言うまでもないが、世襲の問題は安倍が首相である限り安倍に対する有効な批判として機能しうる問題である。


 こう書くと、民主党もまた、小沢代表を始め世襲議員が数多くいるではないかという反論がありえよう。もちろん民主党は、世襲の問題を指摘するのなら、同時に自らの態度を改めることも必要となろう。世襲で議員になっている諸氏には、それぞれの努力で、自分が議員であるのは世襲によるものではないことを示してもらわなければならない(例えば自らの政策を本にまとめるとか)。もしそれができないようなら、選挙区を変えることもあってよいのではないか。そしてもちろん、今後については、民主党世襲議員は担がないことを宣言し、かつ、世襲候補の立候補の禁止(言うまでもなく、同一都道府県内からの立候補を禁止するということであり、親が政治家の人は選挙への立候補は全くだめ、ということではない)を立法化する旨宣言するべきだろう。現にそのような法律を有する国もあると聞く。


 言うまでもないが、世襲に関する本当の問題は、担がれる側よりむしろ担ぐ側にこそある。後援会組織を維持したいのなら維持するがよいだろうが、しかしそれは、世襲によってやるべきではない。何であれ世襲は民主主義的思想におよそ全く対立する事柄であるということを(したがって、二人続いて三代目政治家が首相をやるような国はおよそ民主主義国家の名にふさわしくないということを)、日本人は理解しなければならない。



 また例えば、格差の問題をどう取り扱うべきかを指南することも可能だったはずである。まあ、新聞社などは格差社会の勝ち組に属するから、そのあたりはあまりピンと来ないのかもしれないが、政府発表の「景気拡大がいざなぎ景気を超えた」などという大嘘を例えば大嘘と言うことがはじめの一歩となるのではないか。確かに、ここへ来て景気は回復しつつあるようであり、ここのところ自殺者は減少しつつあると新聞記事にあった。ここ1年ほどに関して言えば景気回復は真実なのかもしれない。しかし、その恩恵は人々に行き渡っているわけでは全くなく、むしろ一部の大企業が潤っているだけであるように見える。しかもこのたび、政府税調の会長が法人税減税論者に変わったとのことである。今の日本におけるいわゆる格差の多くの部分は大企業がもたらしているものだと考えてよいのではなかろうか。その大企業を一層優遇しようなどとは、言語道断と言わざるをえない。民主党は、この点で経済界を敵に回す覚悟で、例えば大企業に対する課税強化を主張するべきではないだろうか。また、大企業を敵に回してでも、雇用をめぐる不公正(そこにもまた、大企業が少なからず関与していると思われる)を指弾するするべきではないだろうか。これもまた、ちょっとやそっとでは揺るがない確固たる対立軸たりうると思われる。


 なお、単に大企業を敵に回すばかりでは日本経済の競争力が損なわれるという懸念に関して一言すれば、今の日本が目指すべきは、私が言うまでもなく、技術立国・知的生産大国という方向ではないかと思われる。このような方向性に合った政策を、大企業批判と同時に打ち出していくことで、民主党が単に経済の足を引っ張ろうとしているのではないという姿勢ははっきりするのではないかと思う。



 今回の補選結果を受けて、例えば民主党に対して以上のような批判(建設的な批判)を書くことも新聞にはできたはずである。安倍に合格点をやってどうするというのだ。馬鹿も休み休み言ってもらいたいものである。