役所の審議会等々で委員を務める人間のレベルの低さ――年金記録改ざん問題の元調査委員長の場合


 周知のように、今日本の政治は、のんだくれの中川昭一財務・金融相の辞任劇で大変なことになっている。麻生政権が崩壊過程に入ったのは誰の目にも明らかで、あとはどうやって麻生首相を辞任させるかだが、これについては、私自身は、自民党衆議院議員が腹を括って内閣不信任案に賛成するよりほかに手だてはないと思う。ただ、今書きたいのはその点についてではない。たまたま目に止まった小さい記事についてコメントをしておきたいのである。


 厚生労働省年金記録改ざん問題の調査委員長を務めた御仁が民主党の会合で「ミスター年金長妻昭衆議院議員を面と向かって批判したのだという。この話を伝える朝日新聞の記事をまず引用しておく。

ミスター年金に「先生が問題」 元改ざん調査委員長
2009年2月17日22時13分


 「先生が問題なんですよ」。厚生労働省年金記録改ざん問題の調査委員長を務めた野村修也・中央大法科大学院教授が17日、民主党の会合で同党の「ミスター年金長妻昭政調会長代理を面と向かって批判する場面があった。


 年金記録問題では昨年6月、厚生年金記録のうち推計約560万件で紙台帳からコンピューターへの入力ミスの恐れがあることが社会保険庁の抽出調査で判明。民主党国民年金を含むすべての紙台帳(約8億5千万件)とコンピューター記録の照合を要求し、自民党社保庁はのまざるを得なくなった。


 野村氏は「紙台帳が正しいとは限らず、照合しても全面解決はできない」と主張。「無駄な作業にお金を使うなら、被害者救済に回すべきだ。対決モードでのあら探しに国民はついてこない」と声を荒らげた。


 長妻氏は「できる限りのことを全力でやるべきだ」と反論。同僚議員も「照合作業にはこだわりたい」と援護射撃した。

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 この記事で最もおかしいのは、誰が見ても容易にわかることだが、この野村とかいう輩の「無駄な作業にお金を使うなら、被害者救済に回すべきだ」という発言部分である。そもそも、被害者が誰かを同定することなしに(そしてもちろん、長妻議員は、被害者及び被害規模の同定を進めるために照合作業を全力で行なえ、と言っているのである)、被害者救済がどうしてできようか。こんな明白なことすらわからない調査委員長とはいったい何者だろうかと思いきや、これが大学教授だというのだから恐れ入る。


 容易に想像できるが、この野村とやらは調査委員長になって以来、厚生労働省及び社会保険庁の役人から「長妻議員の追及に困っています」というたぐいの話をいやというほど聞かされ、それが頭にこびりついた結果、こういう発言に至っているのだろう。そもそも、厚生労働省社会保険庁に対して批判的な見解を持っているような人間は役所から何とか委員などというものは任されないだろうから、既にその時点で偏りがあるに相違ないが、それに加えて話を浴びせ聞かされて、批判力のない大学教授氏はくだんの発言、というよりむしろ妄言、に立ち至ったのだと思われる。


 今、年金行政に対する国民の信頼は地に堕ちている。それを回復させるためには、もちろん大幅な制度改革が不可欠であり、そのためには(これまでの政権にはそのような改革ができなかったのだから)もちろん政権交代が必要である。しかしそれだけでなく、これまでの行政の不始末を白日のもとにさらすこともまた必要である。積年の膿みを出すためには大規模な手術が求められる。それをやれと長妻議員及び民主党は主張しているのであり、本ブログはこれに全く賛成である。くだんの元委員長氏は、問題の深刻さを全く理解していない木偶の坊だと評さざるをえない。