最近の将棋


 今しがた終わったらしい王将戦第3局については、言うべきことは何もない。本ブログが「ひょろ弱」と呼んでやまない王将兼名人がまたやってくれた、というにすぎない。ひょろ弱先生、期待にたがわずボロ負けしてくれたナー。羽生にとって今年は絶不調の年となるのではあるまいか(もちろん私の知ったことではないのだが)。ともあれ、せいぜい頑張ってもらいたいものである。もちろん、深浦王位におかれては、今回こそA級残留を果たしてさらに飛躍してほしいと心から期待する。


 ということで、ここで取り上げたいのはむしろ別のタイトル戦、すなわち第34期棋王戦第1局である。
(ついでにこの際書いておくと、棋譜Java版とFlash版が選択可能な場合、私は必ずJava版を選ぶようにしている。理由は単純で、Java版の場合、updownキー(キーボードで矢印が表示されているキーのこと)で手順の操作を行なうことができるからである。王将戦はなぜかFlash版しか用意してないようだが、これほど明白に優れているJava版を使わないのは、全く理解に苦しむ。)



 問題の局面は41手目、先手がどう指すかというところである。直前に指された△5四銀から△6五銀という手は、私が言うまでもなく、いかにも振り飛車党という手で、こういう手が指せることが、最近の久保の好調を証ししているのだろう。ただ、ここで問題にしたいのは先手の指し手であり、つまり好調の久保を迎えて佐藤棋王はどう指すべきだったか、である。


 実戦では佐藤棋王は▲2四歩、△同歩、▲同飛、△2三歩、▲2八飛と指した。もちろん、こういう手で良いのなら、先手は既に大優勢ということになるだろうし、余裕の棋王が堂々と圧勝した、となるだろう。しかし、そこまで形勢が傾いているわけではなく、むしろ銀出の好手で後手のほうが指しやすいかというぐらいの情勢である。やはり先手は、余裕をこいているのではなく、それなりに応対するべきだったろうと思われる。


 ではどう応対するべきだったか。1つは、棋譜のコメント欄にもある▲5八飛である。これに対しては、同コメント欄によれば△4三金の活用が良いとあるが、しかし金が3段目に上がる形はあまりほめられたものではない(先手の金も既に3段目に上がってはいるわけだが)。以下▲7五歩と指し、▲7七桂或いは▲7七桂打から▲5六飛として、銀を捕獲しにいくのが良いのではないかと思われる。


 もう1つの手は、既に今の説明の中に出てきたが、▲7五歩と指すというものである。こうしておいて、次に後手が何をしても▲5八飛と回るのである(と言ってももちろん、△5六銀打に対しては当然、▲同金、△同銀、▲4一銀と指すわけである)。飛車を回った後の指し方は、既に上に書いたとおりである。因みに、▲7五歩の意味を述べておくと、この歩は、取られないために突くというよりむしろ、7五の地点に後手から桂馬を打たせないために突く、という意味合いのほうが大きい。実戦の進行を見ればわかることだが、後手から△7五桂が入ったことで形勢が決定的に後手に傾いている。思うに、佐藤棋王はこの桂打ちを軽視したのではなかろうか。


 もちろん、こういった手をプロは当然読んでいるはずであり、そしてもちろん、▲5八飛と回った後の指し方も単純ではない。例えば、7七に桂馬が来た後(私は、単にはねるよりむしろ桂打ちとするほうが良いと思うが)、直ちに▲5六飛と上がるのでは後手から△5五飛とぶつけられてよくない。そこで、銀が7六に逃げたなら、いったん▲5四歩と伸ばす必要があろう、等々、といった具合で、まだまだ簡単ではないが、しかし実戦よりはまだ先手は指せたのではなかろうか。


 ともあれ言えるのは、最近指された将棋の中では、鑑賞に値するのは王将戦ではなく棋王戦のほうだ、ということである。言うまでもなく、プロは、鑑賞に値する将棋を指してこそプロの名に値する。ヘボ将棋は要らないのである(王将戦第3局の終局図の後手の間抜けな形を見られたい)。



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 以前もつけたことがおありだろうと思いますが、以前も今回も文字化けを起こしており、トラックバックとして表示するのに適当でないので、削除させてもらっています。悪しからずご了承ください。