自民党総裁選の馬鹿騒ぎに冷水をぶっかけるにはどうしたら良いか


 今のメディアの惨憺たる状況を思うなら、今後展開されるであろう自民党総裁選をめぐるメディアの馬鹿騒ぎに対して警戒するべきなのは当然であり、政府・与党を批判する者はゆめゆめ警戒を怠るべきでない。郵政民営化をめぐる茶番劇にメディアが乗っ取られた2005年の総選挙がどういう結果になったかを思い起こすだけで、警戒心を緩めるべきでないことは明白だろう。


 ところで、その馬鹿騒ぎに対して冷水をぶっかけるにはどうしたらよいか。求められるのは、当然ながら、説得力のある「冷水」ということになるが、例えば次のようなのはどうだろうか。すなわち、自民党は今「開かれた総裁選だ」「フレッシュな総裁選だ」と騒いでいるが、その前にやるべきことをやっていないのではないか。やるべきこととは、なぜ1年の間に2度も首相が職を放り出すような事態になったか、その原因を明らかにすること、これではないだろうか。なぜなら、「2度あることは3度ある」から。2度首相が職務を放り投げたのだから、このまま反省せずに進んだなら、次の首相もまた放り投げるのではないか? 「2度あることは3度ある」のだから、と。


 「2度あることは3度ある」、これをぜひ民主党の政治家に使っていただきたい、しかも多用して、国民の耳に残るようにしてもらいたいものである。


 首相が辞めたのはもはや過去のことだと言う向きもあるかもしれない。が、本当にそうだろうか。2度にわたる投げ出し、職務放棄、これくらい国民を馬鹿にしたことはなく、しかも安倍も福田も、国民に対して何らお詫びを言わずに辞任会見を行なっている。この事実をなぜ等閑視してよいだろうか。冗談ではない。批判すべきことは徹底的に批判するべきである。


 ただ、批判だけでは充分でないという考え自体は、理解できないわけではない。そこでもう1つ。


 テレビや新聞などの大メディアは自民党総裁選の馬鹿騒ぎにうつつを抜かすこととなってしまうかもしれないが(まだしも新聞には少なくとも相応の冷静さを期待したいところだが)、ではその状況の中で民主党はどうするべきか。私は、民主党の政治家が週刊誌や月刊誌(特に後者)などの活字メディアを使って、様々な論考を発表していくことを期待したい。もちろんその場合、書いていることが人によってバラバラというのでは逆効果だろうが、例えば民主党の大多数の政治家が共有しているであろうマニフェスト(次の選挙用のものが未完成なら、とりあえず直近の選挙のもので良いだろう)を踏まえて、それを具体化するというような形でそれぞれの政治家が論考を書くべきではなかろうか。当然ながら最終的な文責は個々の政治家にあるわけだが、そのあたりは「民主党マニフェストを踏まえて書いたが、最終的な文責は自分にある」という具合にしておけば良い。とにかく、自らの考えを活字にまとめて発表するという形で、自民党総裁選の軽重浮薄な馬鹿騒ぎと全く異なる、実質ある発信をする、というのがこのやり方の狙いである。総裁選でメディアが騒げば騒ぐほど、対照がくっきりしてくることが期待できる。


 付け加えると、週刊誌や月刊誌は、販売部数こそ少ないが、中づり広告といった形で(少なくとも見出しだけは)非常に多くの人の目に触れる可能性のある媒体であり、その意味で、テレビや新聞に対する対抗手段に充分なりうると思われる。


 総裁選報道に対する適切かつ有効な対策を(単に自民党議員と同様にテレビなどに露出する機会を増やそうなどというのではなく――或いは少なくとも、それだけではなく――)しっかり講じて、民主党は、ほどなく来るであろう総選挙に臨んでほしいものである。