やはり期待すべきはオバマ大統領――米国大統領選の行方


 という表題を掲げたものの、最初に書きたいのは、アメリカの大統領選については、我々日本人はもう少し突き放した見方をするほうが良いのではないか、ということである。こう思ったのは、以前に本ブログで米大統領選に関する記事を書いた数日後に、民主党の前衆議院議員生方幸夫氏がブログで次のように書いておられるのを見たからである。

(前略)
 政府やマスコミが米国に弱いということは、いま米国で行われている大統領選挙の予備選報道をみればよく分かります。お隣の国の一政党の候補者を決める予備選挙を毎日毎日これほど大量に報道しているのはおそらく日本だけでしょう。せいぜい、民主党の候補者を選ぶ大会を報道すればこと足りることです。異常なことだという認識がないのが不思議です。


 確かに米国の大統領に誰がなるのかは大きな関心事ではありますが、その過程をこれほど報道する価値があるとはとても思えません。自分から米国の植民地のような態度をとっていたのでは、いつまでたっても本当の独立ができるはずもありません。こんな報道ぶりから脱却しない限り、米軍基地の撤退など、本格的には論じられません。

 確かに「大きな関心事」ではあるが、しかし確かに「たかが米大統領選」、つまり他国の話なのである。日本が対米外交を行なうのに、別にアメリカの国内政治の事情に配慮しなければならない(そのためにアメリカの国内政治の事情に通じていなければならない)などということは、基本的に全く不要なはずである。アメリカのことなどはもっと突き放して見たほうが良いと、今となっては思う。


 そう言った上で、米大統領選に関するいくつかの情報に触れておきたい。まず、元外交官、天木直人氏のブログで、米大統領選が人種問題というアメリカの原罪に触り始めた、という指摘がなされている。今回の大統領選の本当の意義がそこにこそあるということは、上で言及した本ブログの過去記事で既に指摘したところであり、だからこそ――と私は言いたい――、バラク・オバマ米大統領に選ばれる必要があるのである。例えば、言うまでもなく、日本人という有色人種に対してだからこそ、アメリカは原子爆弾を使う決定を下すことができたのである。アメリカの人種差別は根深く、それは他国にも影響(もちろん、悪影響)を及ぼす性質のものである。ゆえに、オバマが大統領になることを機に、この問題にアメリカ人自身が正面から向かい合うことは、アメリカにとってだけでなく、他の国々にとっても願わしいことなのである。(なお、既に周知なのかもしれないが、オバマ自身はケニア人たる黒人の父と白人の母から生まれた人であり、奴隷を祖先とする黒人ではなく、彼の妻が、奴隷を祖先とするいわゆるアメリカ黒人であるとのこと。)


 次に、ビデオニュース・ドットコムでアメリカ大統領選を取り上げた番組があったので、これに触れようかとも思ったのだが、面倒くさいのでやめにする。アメリカにおける保守とは、建国の理念である民主主義を守るといった意味になりえて、したがってアメリカでは(フランス革命を批判したエドモンド・バークに見られるような、本来の意味での保守主義とは異なった)理想主義的保守というものが成立しうる、といった話は面白くなくもなかったが、これはまあ、書いてみればそれまでの話ではある。


 ついでながら言うと、アメリカ通をゲストに呼んで、アメリカ通を自認する神保氏が司会となって話したにしては、触れられていなかったことがある。田中宇国際ニュース解説の2月12日の記事で言及されていた共和党ロン・ポール候補のことである。こういう候補が広く支持を集めるところにこそ、アメリカのアメリカたる所以が垣間見られるのではないかと私などは思うのだが、そういう面白い話題を取り上げそこなったという意味で、ビデオニュースのくだんの番組は100点とは言えない。宮台氏が、話題にrelevantな知識以上の知識量を披露していた(要するに、しゃべりが過ぎていた)のも、番組に対する評価という意味では逆効果をもたらしていると言えよう。


 もう少し書くつもりでいたが、時間も経ち、面倒くさくなったので、これまでとする。