「道路特定財源・暫定税率問題に関する公開討論会」を見て


 民主党全国知事会の共催になる同討論会については、各メディアで一応記事として取り上げられている。
東国原知事と民主・菅氏、道路めぐり公開討論」(朝日新聞
民主党と知事会、道路特定財源で火花・都内で公開討論会」(NIKKEI NET)
民主の主張理解して−菅氏 道路財源で東国原氏と討論」(東京新聞
道路特定財源:菅代表代行、東国原知事らが公開討論会」(毎日新聞
【道路討論1】麻生全国知事会長「暫定税率維持を」」(MSN産経ニュース


 民主党にとって残念なことに、この討論会を伝える新聞或いはテレビニュースと同じ枠で伝えるべきニュースとして、例のイージス艦の事故の報が入ってしまったため、討論会の扱いが小さくなってしまった。しかし、討論会の様子は、このページからオンディマンドビデオで見ることが可能である。道路特定財源問題に関心のある人なら、自ら進んで視聴する価値はあるように思われる。特に、日頃メディアの報道に対して不満をいだいているなら、なおさらである(自分で生の情報源に接することができる機会なのだから)。


 そこで、私も見てみたが、大きく言って2点の感想を得た。まず、道路特定財源問題に関しては、討論会の後の共同記者会見の中で(ビデオで12分ごろ)、NHKの記者の質問に対して菅民主党代表代行が答えた言葉が、問題の核心を言い当てているように思われた。その点を、(言葉どおりにではないが)私なりの要約で紹介しておくことにする。

ナカジマ(NHK):
 菅代表代行に尋ねる。両知事から言われた「対案を出せ」ということに答えていないのではないか。地方側の不安は解消されていないのではないか。


菅:
 我々は対案を出している。①暫定税率の廃止、②道路特定財源の廃止、③財源配分については、地方の減収にならないように対応する。国幹会議については(廃止すべきとの)私見を述べた。


 今言われている「対案」とは箇所づけを含む案(道路の中期計画)のようなもののことだろうが、しかし我々はその土俵自体がおかしいと言っている。こういう決め方そのものがおかしいと言っている。国土交通省がこういう形で決めていること自体がおかしいと言っているのだ。

 若干補足の必要があるが、国土交通省による道路整備計画の決め方がおかしいという点は、記者会見の前の討論会において、4人の論者(菅氏、民主党衆議院議員の逢坂氏、福岡県知事麻生氏、宮崎県知事東国原氏)の間の共通認識として確認されていた。つまり、今の道路整備(つまり、どの道路を整備するべきか)についての決め方はおかしい、ということになったのである。であれば、菅氏の言い分は極めて正論であり、本来これには、認識を共有する他の3人も当然賛成するべきはずである(そしてもちろん、そのうちの1人である逢坂氏は賛成している)。


 付け加えるなら、野党が出すべき対案とは、まさにこのようなものでなければならないと思う。つまり、これまでの政治のやり方それ自体を批判することがすなわち最も根本的な批判であり、その意味で最も根本的な「対案」なのである(実際、上記記者会見での発言の最後に菅氏は、まさにそのような「対案」を民主党は出しているのだと述べている)。野党に対案がないという人々は、自らの不見識を露呈していると言ってよい。


 しかしながら、討論会に参加した2人の知事は、民主党の言い分に対して全面的賛意を表するには至っていない。特に東国原などは、何とかの一つ覚えで「民主党は対案――言うまでもなく、国土交通省が策定した中期計画のように詳細な対案を言っているのだろう――を出していないから信頼できない」と言っていた。不見識もさることながら、民主党と距離を置こうとするこのような姿勢は何に由来するかと言うと、(言うまでもないかもしれないが)要するに、民主党に対して秋波を送ることで与党の政治家に睨まれたくない、そういう配慮に由来するのだろうと思われる。そしてなぜ与党の政治家に睨まれたくないかと言えば、これまた言うまでもないだろうが、睨まれることで、自分の地域(都道府県)の道路整備が後回しにされることを恐れるからなのだろう。東国原知事らのこのような姿勢は、与党の政治家が、必ずしも国家的見地に立ってでなく、むしろ政治的思惑によって、道路整備のあり方を決めているのが現状なのだということを、言葉でなく態度で示していると言うことができる。そしてもちろん、東国原らはそのようなあり方・現状を追認しているのである。


 知事の立場ではこのような態度をとらざるをえないということは、賛成するかどうかは別にして、理解できないことではない。しかしそれは、あくまでも知事の立場での話である。国政レベルで見るなら、道路特定財源の維持がもたらす税支出の無駄は、既に種々指摘されている。そこも改め、かつ道路整備についての決め方も改めるのなら、どう考えても民主党の言い分こそが正論だと言うほかないのではなかろうか。