どう考えてもおかしい公務員給与引き上げ


 朝日新聞の次の記事についてだが、

国家公務員給与、9年ぶり引き上げ 幹部賞与は据え置き
2007年10月30日13時47分


 政府は30日午前の閣議で、幹部を除く国家公務員の07年度の給与を9年ぶりに引き上げる方針を決めた。一般の行政事務に携わる行政職職員について、人事院勧告通り、係長級以下の月給と全職員のボーナス、地域手当を増額し、年収は前年度比で平均0.7%、4万2000円増える。ただ、幹部職員である指定職(審議官・局長級以上)については、景気回復の実感が乏しい国民感情を意識して、勧告にあったボーナスと地域手当の引き上げを見送った。


 人事院勧告の一部が実施されないのは、97年度に指定職向けの実施を1年遅らせて以来、10年ぶり。政府は臨時国会に給与法改正案を提出し、成立すれば今年4月にさかのぼって支払われる。国の財政負担は、人事院勧告通り実施された場合より約10億円少ない約420億円となる見通しだ。


 閣議では、防衛省厚生労働省などで公務員の不祥事が続いたことから、不祥事を起こした国家公務員に退職金を返還させる制度の強化について有識者検討会を設置し、来年春をめどに結論を出すことも決めた。


 人事院は今年8月、民間と国家公務員の給与に0.35%の格差が生じたとして、俸給(基本給)を係長級以下に限って引き上げるとともに、行政職と指定職のボーナスを0.05カ月分引き上げて4.5カ月分とし、都心部勤務者らに支払われる地域手当も0.5%増額するよう政府に勧告した。


 しかし8月以降3回開かれた給与関係閣僚会議では、地方や中小企業に景気回復の実感が乏しいことなどから、世論を意識して勧告の実施に慎重な意見が出ていた。


 政府は30日朝、閣議に先立って開いた4回目の関係閣僚会議で勧告の一部実施見送りを決定。町村官房長官は記者会見で「人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢にたった」としたうえで、「厳しい財政事情などを踏まえ、国民の理解を得られる結論を出すべく慎重に検討した。公務員への批判も考えなければいけないひとつの要素だ」と説明した。

 いったいこれが、財政危機を訴える政府のやることだろうか。長期間に及ぶ景気拡大などと大本営発表は言うが、それが社会の実感と懸け離れていることは周知の事実であり、しかも最近では中小企業の倒産が増えつつあるという。さらに、ガソリンの値段だけでなく、多くの物価が上昇ないしは上昇傾向へと転じつつあるように見える昨今である。景気拡大などというまやかしを基に人事院勧告を出すのはいかがなものか、と言わざるをえない。


 だいたい、政府が赤字の時に、つまり自分の所属する企業体(政府もまたBetrieb(経営体)の一つである)が赤字を出している時に、社員の給与が一般的に引き上げられるなどということが民間でありうるだろうか。まず無駄を徹底的に削減して、政府の赤字をなくすまで、といかないとしても少なくとも、プライマリーバランスを実現するまでは、給与引き上げなどということは考えるべきでないと私は思う。


 これが「厳しい財政事情などを踏まえ、国民の理解を得られる結論」だなどと考える政府の気が知れない。