少しも変わっていない自民党政権――テロ特措法問題での居直り――


 本ブログでも既にこの記事この記事などで指摘しているが、いわゆる対テロ戦争がテロに対する対処の仕方で全く誤っていること、とりわけ対イラク軍事攻撃は、攻撃を行なったアメリカの側にいささかの理もないこと、これは今や全く明白である。この誤りを認めることが、いわゆるテロリズムに対する対処において今何よりもまず、いの一番に必要なことである。


 その観点から見るなら、日本政府の居直りぶりには目に余るものがある。対イラク攻撃開始時にイラク大量破壊兵器が存在しなかったことは既にアメリカにおいてすら認められている。日本政府がアメリカの対イラク攻撃を支持した理由が大量破壊兵器の存在にあったことを思えば、今や日本政府は、対イラク攻撃を支持する理由を全く有しないと言わなければならない。少なくともこの点については、政府は自らの判断の誤りを認めるべきだが、日本政府はそれすら行なっていない。


 加えて、今日出た朝日新聞のこの記事である。

海自洋上給油、米の補給先「承知せぬ」 答弁書閣議決定
2007年10月02日13時55分


 インド洋で活動する海上自衛隊の補給艦が03年2月、イラク戦争開始直前の米空母キティホークに米補給艦を通じて間接給油していた問題に関連し、政府は2日の閣議で、「補給を受けた後に従事する活動の内容は各国が決定するもので、政府として詳細を承知する立場にない」との答弁書を決定した。間接給油後の最終的な活動内容まで政府として把握していないことを認めたもので、給油活動継続のための新法をめぐる国会での論議にも影響しそうだ。


 政府が江田憲司衆院議員(無所属)の質問主意書に答えた。


 答弁書は、米軍はじめ他国の艦艇への給油にあたっては、テロ対策特措法の範囲内とすることなどを明記した交換公文を交わしたうえで提供しているとした。


 その一方、海上自衛隊から米補給艦を通じて燃料を間接給油した米艦艇の活動については「日本がテロ対策特措法に基づいて補給を行った趣旨を踏まえて各国が決定する」とし、「政府としては、その詳細を承知する立場にない」と答えた。


 さらに01年12月から07年8月末までの米艦艇への給油は計約38万5000キロリットルで、そのうち6割強にあたる約23万6700キロリットルが「補給艦への給油」であることを明らかにした。


 江田氏が、これまでの自衛隊の給油先の艦船名や国籍、給油地点などを明らかにするよう求めたことに対しては、「自衛隊および諸外国の軍隊等の運用に支障を及ぼすおそれがある」として明らかにしなかった。


 キティホークへの間接給油について、防衛省は先月、当初20万ガロン(760キロリットル)としていた給油量を80万ガロン(3030キロリットル)に訂正。対イラク作戦への流用がなかったか、米側に改めて確認中としている。

 自衛隊が提供した燃料がイラク戦に従事する艦船に使われていたなら、それは明らかに戦争の後方支援を成すものであり、明確に憲法違反となる。いくら交換公文を交わしていようとも、この点は日本の国是に関する点であり、決して譲ってはならないものであるはずである。ところが、今の政府――自民党政権――には、その国是を守ろうという気概のかけらも見いだせない。これはいかがなものか。


 民主党を始めとする野党はあらゆる手段を駆使して、自衛隊が提供した燃料の使い道を国会の場で明らかにしてほしいと希望する。その結果、間違いなく、対イラク戦への流用の事実が判明するだろうが、何よりもその事実解明こそが今の国会で最大の重要事である。事実を明らかにせずに新法を通そうとする政府・与党の居直りには絶対妥協してはならない。