国民に嘘をつく政府――テロ特措法関連――


 開店休業状態の国会が近く再開するのを前に、出るべきものが出てきたといった感じである。2つの記事の引用から始めることにする。


米艦への給油量訂正、イラク流用の可能性 防衛省

2007年09月22日10時20分


 インド洋で活動する海上自衛隊の補給艦が03年2月、対イラク戦争開始直前の米空母キティホークに間接的に給油していた問題で、防衛省は21日、当初20万ガロン(760キロリットル)と国会答弁などで説明していた燃料の供給量を80万ガロン(3030キロリットル)に訂正した。同空母は、給油を受けた後、ペルシャ湾内に入って対イラク作戦に従事していたことが判明している。日本が提供した燃料がテロ対策特別措置法の目的外で使われた可能性が高まっている。


 この問題は、03年5月にキティホークを率いる第5空母戦闘群のモフィット少将が横須賀に帰還した際、海自から間接的に燃料補給を受けたと証言して発覚。当時の福田康夫官房長官は会見で「キティホークの燃料消費は1日20万ガロンで、(海自提供の燃料は)ほとんど瞬間的に消費してしまう。イラク関係に使われることはあり得ない」と述べていたが、80万ガロンに訂正したことで、説明と食い違いが生じる。


 防衛省は21日に会見し、岡真臣・国際協力課長が「海上幕僚監部で集計した際、データの入力に誤りがあった」と誤りを認め、イラク作戦に従事していたか、米側に確認中だと説明した。防衛省はこれまで、給油する艦船について対テロ戦争目的であることを確認する交換公文を交わしていることを理由に、対テロ戦争に使われたと説明してきたが、この日の会見では、米補給艦に給油した後の燃料の使途について「逐一について全部把握しているということではない」と語った。


 間接給油に関しては、市民団体「ピースデポ」が20日、米情報公開制度を通じて入手した航海日誌などから、03年2月25日に海自補給艦「ときわ」から米補給艦ペコスに給油。ペコスを通じて同日に給油を受けた米空母キティホークが直後にペルシャ湾内に入り、対イラク作戦に参加していたことが判明していた。


 自民党国防族の有力議員は朝日新聞に対し「市民団体の指摘の通りだ。日本が提供した燃料がイラク戦争に使われた可能性は否定できない」と明かした。複数の防衛省関係者も「日本の燃料がイラク関連の作戦に流用されたおそれがある」と証言している。


 アフガン周辺の「対テロ戦争」を後方支援するテロ特措法は、インド洋活動での目的を「国際テロの防止・根絶に取り組む国際社会に寄与するため」と規定。イラク作戦は目的外にあたる。


海自補給艦、イラク作戦の米艦に給油 元艦長が証言

2007年09月22日15時03分

 テロ対策特別措置法の補給対象となるアフガニスタン周辺の対テロ作戦だけでなく対象外の対イラク作戦にも従事していた米軍艦船が、海上自衛隊の補給艦からインド洋で直接、補給を受けていたことが、この艦船の当時の艦長の証言でわかった。同じ艦船が複数の作戦にかかわることは米軍の運用上、かねて指摘されており、「対テロ」目的に限定して補給しているとする日本政府の説明と実態が食い違っていることを示している。


 ペルシャ湾に展開する米空母エンタープライズのロナルド・ホートン艦長(47)がこのほど艦上で、朝日新聞記者のインタビューに応じた。ホートン艦長によると、艦長は05年当時、佐世保基地に所属する米軍揚陸艦ジュノーの艦長としてペルシャ湾周辺に展開。「当時は、いまよりも頻繁に海自の補給艦から給油を受けた。日本の貢献は絶大だった」と述べた。


 艦長の説明や米海軍の資料によると、ジュノーは05年当時、イラクの自由作戦(OIF)の一環として、沖縄に駐留する海兵隊イラク国内に投入するためペルシャ湾北部に派遣。この間、インド洋のアデン湾などで海自の補給艦から3回にわたって燃料、食料の補給を受けたという。


 ジュノーは同時に、米国主導で01年10月に始まった対テロ戦争不朽の自由作戦(OEF)」として、テロ組織のメンバーや武器の移動を阻止する「海上阻止活動」にも組み込まれていた。作戦の時期が明確に区別されない限り、海自から補給された燃料がどの作戦に消費されたかを特定するのは困難とみられる。


 テロ特措法は、アフガン周辺で対テロ作戦にあたる米軍艦などへの後方支援に海自の活動を限定している。しかし、国際テロ組織アルカイダの活動がアフガン周辺からイラク国内にも拡大したのに伴い、米海軍は「対テロ」と「対イラク」作戦を同時に展開。エンタープライズ空母攻撃群などの米軍艦は現在、ペルシャ湾内側の作戦海域で「対テロ」と「対イラク」作戦を同時に実施している。特措法は、一連の作戦航海で複数の作戦を実施する米軍艦に補給することを想定していない。策定した01年当時の支援活動地域の概念が実態に合わなくなっている形だ。


 今年8月現在、米・英・豪などの艦船が、ペルシャ湾外側の作戦海域(CTF)「150」のほか、ペルシャ湾南部の「152」、同北部の「158」の3海域で活動している。海自は「150」で補給活動を実施しており、対イラク作戦に従事する米軍艦に燃料を補給することはないと主張してきた。


 だいたい、内陸国であるアフガニスタンでの活動のために洋上ガソリンスタンドをやるなどということ自体がそもそもおかしいのだが、果たしてその活動の正体がここではっきりしたというわけである。とってつけた安保理決議などよりも、イラク戦争のための艦船に燃料を補給していたというこの事実の方が遥かに、テロ特措法論議の延長をめぐる議論で重要視されなければならないだろう。


 そして何より言わなければならないのは、日本の政府は国民に対して嘘をついていたということである。


 それにつけても、議員の世襲は政治から駆逐されなければならない。


追記(9月23日)
 今回の記事に直接関連する番組がマル激で見られたのでリンクをつけておくが、率直に言って、前半を見るのは時間の無駄である(私はほとんど全部見てしまったが)。これに対して、神浦氏をゲストに迎えた後半部は実に面白かった。結局のところアメリカがやっている対テロ戦争はだめだ、テロの原因をアメリカはもっと考えて態度を改めよと神浦氏は指摘しているが、全くそのとおりである。また、テロ特措法の議論との関連で番組で指摘されていたことだが、アフガニスタンに対してアメリカ及びNATOが行なっている軍事行動は、それ自体はあくまで個別的自衛権アメリカ)または集団的自衛権NATO)の発動によるものであり、国連決議に基づいたものではないということ(NATOの行動については後に安保理決議が加えられているが、ここで言いたいのは、もともとNATOが関与するに至った事情のことである)、この事実は、テロ特措法の議論で政府・与党の主張にごまかされないためにしっかり抑えておくべき点だろう。つまり、今自衛隊がインド洋上で行なっていることは、どう言いくるめても、憲法が禁止している戦争の後方支援でしかないということである。