民主党の実力派議員、川内博史氏の話


 ビデオニュース・ドットコムが流しているいくつかの番組の中で、『永田町コンフィデンシャル』は、率直に言って、私があまり評価しないほうの番組である。司会者に問題があると思うからなのだが、しかしながら例外的にと言うべきか、今回は良かったので、ここで紹介しておきたい。一言で言えば、ゲストが良かったのだと思う。


 そのゲストである川内博史民主党衆議院議員は、BSE問題で注目を集めただけでなく、中古電化製品の流通に大打撃を与えかねない稀代の悪法として昨年話題となった「電気用品安全法」の問題でも活躍されており(これに関しては例えば議員のブログのこの記事を参照)、国会を舞台として活躍できる実力派議員の一人と言ってよい。そのような議員はやはり、傾聴に値する話をいくつも持っておられるようである。ここではその中で、豊洲新市場をめぐる問題、及び、沖縄戦をめぐる教科書検定の問題に触れておきたい。


 豊洲新市場に関する議員の話は極めて明快で、問題は2つあると議員は言う。1つはもちろん土壌汚染の問題であり、驚いたことに、土壌汚染或いは土壌をめぐる環境の問題は、法律ではもっぱら住宅建設などとの関連でのみ扱われているようで、つまり築地市場移転というようなケースは、法律では全く対応できていないのだという。また、川内議員は、残念ながら先般再選されてしまった石原都知事の不見識を指摘してもいる。すなわち、石原都知事築地市場の移転の必要性を言うために、築地市場の建物のアスベストの問題を言うが、川内議員によればそのアスベストは既に対策が施されているとのこと。のみならず、仮に築地市場アスベストに問題があるのであれば、それは即、管理者である東京都が現に法令違反をやっていることを意味することになるが、石原氏はそれを理解しているのか、と議員は指摘している。これまでに行なわれた豊洲新市場予定地の土壌調査は極めて粗いものらしく、30メートルメッシュ(要するに、土地を30メートル四方で区切って、その区画ごとに調査を行なうという意味で「メッシュ」と言っているのだろう)で深さはせいぜい数メートルだったが、近年改正された法律に従うなら10メートルメッシュで、汚染が見つかるまで掘り下げなければならないという。つまり、調査は明らかにやり直しの必要があるということである。


 豊洲新市場のもう1つの問題は、この予定地が埋立地であり、陸地とは2本の橋でつながるのみだということ。近未来に起こると想定されている東京大地震の際には埋立地液状化し、橋が崩落し、要するに市場が陸の孤島となる可能性があるが、そうなった場合、食料の安定供給はどうなるのかという問題があるという。これに対して、築地は関東大震災にも耐えた場所である。・・・以上紹介した議員の話に照らすなら、築地と豊洲と、どちらが適地かは明らかだろう。


 次に、沖縄戦をめぐる教科書検定の問題については、本ブログでもそれをめぐる委員会審議を過去に取り上げたことがあるが、その委員会審議では、内閣は検定には一切関与せず、専門家を委員とする教科用図書検定調査審議会が決めたことを受けて文部科学相が決定するという、手続きの流れが形式的に説明されていた。しかし驚いたことに、川内議員の調査によると、実態は全く異なっているという。


 つまり、今回の検定で、前回の検定と異なる修正要求が出るに至ったのは、専門家委員の発言によるものではなく(川内議員が調べたところによると、上記の審議会においては、専門家委員は沖縄戦の問題に関して何も発言していないとのことである)、検定の方針を示すものである調査意見書に文部官僚が、沖縄戦に関して前回の検定と異なる文案を載せたからだというのである。今回の検定が前回の決定と異なるに至ったのは、文部科学省側の態度変更によっているのであり、専門家委員はその変更を単に黙認した、というわけである。


 ではなぜ文部官僚はそのようなことをしたのか。この点について川内議員は、下村官房副長官が安倍政権成立の直前に或る集会の中で、歴史教科書の記述については今後は官邸がチェックをすると言った、また、安倍首相自身も幹事長時代に、教科書に関する自由民主党議員連盟の総会の中で、教科書の記述を変えさせるために文部科学省に働きかけをしなければならないと言った、と指摘し、安倍らのこのような動きを敏感に受け取った文部官僚の側が、言わば上の意を体してだろう、今回の検定での改悪に至ったということを示唆しておられる。さらに川内議員は、(例えば「狭義の強制性」という言葉によって従軍慰安婦問題全体を否定しようとする、といったように)一部を否定することによって全部を否定するという安倍の詐欺的なレトリックを指摘しておられる。


 川内議員のこの指摘は極めて注目に値する。上で述べた委員会審議で安倍が、自分は検定には介入していないということを盛んに強調しているだけに、なおさらである。


 その他にも、川内議員は、過労死の問題について「自己管理の問題。他人の責任にするのは問題」と言った奥谷禮子の暴言(当時厚生労働省労働政策審議会臨時委員(労働条件分科会会員)だった)を国会で取り上げるなど、今の国会になくてはならない人材である。今後の一層の活躍を期待したい。『永田町コンフィデンシャル』も、こういうゲストを今後どんどん取り上げるなら、もっと評価に値しよう(角谷氏は保守政治家にこだわっているようだが、それに限らず広範にゲストを呼ぶようにしてはどうだろうか)。


 それにつけても、議員の世襲は政治から駆逐されなければならない。