安倍首相留任=政治の私物化の極致


 現在、まだ7月29日午後9時すぎの時点で書いているが、安倍自民党は大敗の形勢である。政党別獲得議席数(NHK)で見ると、既に野党が参院過半数を獲得したことになっており、自民党民主党にダブルスコアの差をつけられている。asahi.comの予想はもう少し慎重で、21時30分現在で与党27対野党52である。


 にもかかわらず、少なくとも与党は安倍首相の責任論を一切回避し、安倍政権続投で行こうとしているようである。例えば、自民党の中川幹事長は今回の選挙戦の敗戦はすべて自分の責任だとして、幹事長辞任のみで責任論を封印しようとしているようである。
参院選:「すべて自分の責任」自民・中川幹事長


 安倍に人望がないことがもはや明々白々であるにもかかわらず、その安倍を留任させようというのは、私のようなアウトサイダーの目には全く奇々怪々だが、しかしそれは「勝手にしろ」という話ではある。今後国会では衆議院参議院の間でねじれが生じ、対決法案がことごとく停滞するという機能不全状態が現出するだろうが、そうなれば総選挙の前倒しが強く求められるようになるだろう。その場合に選挙の顔として安倍が適当かどうかについては、今回の参院選が既に答えを出しているように思われる。なのに安倍留任というわけなのだから、「勝手にしろ」としか言いようがない。



 ただ、安倍首相の留任の理由が「自分の政策を実現させてゆきたい」というものであるのなら、それは全くの考え違いだと批判しなければならない。なぜそう批判できるのか。


 ここで、安倍政権が実績として誇る数々の強行採決法案についての評価を述べるつもりはない。言うまでもなく、改憲手続法にせよ改正教育基本法にせよ教育3法にせよイラク特措法延長にせよ、それらは私の目から見ればどれ一つとして評価になど全く値しないのだが、しかしそれ以前の問題が、政権を継続するという安倍の姿勢の中にはあるように思われる。ここではそれを指摘したいのである。


 その問題とは、そもそも時の政権が取り組むべき課題は何かということであり、その課題を安倍は全くわかっていないということである。時の政権が取り組むべき課題とは何か。それは「自分の政策」などではなく、その時々の状況が要請する諸課題である。例えば現在の状況に即して言うなら、制度に対する不信が極度に達している年金制度をどう改めて、国民の信頼を取り戻すかが、そのような課題の一つだろう。また、正規雇用と非正規雇用の間の格差、東京など(大)都会と地方の格差の問題にどう対処するかということも、そのような課題の一つだろう。さらに、今国際社会で農業問題が議論されているが、日本の農業をどうするかということもまた、焦眉の課題の一つだろう。時代の状況が突きつけるこういった問題に取り組むことこそが、時の政権の使命なのである。


 こういった問題について安倍政権は何をやってきたか。年金問題については、安倍政権は、最初のハンドリングを誤ったことに始まり、年金制度の一元化といった抜本策を示さずに選挙に突入した。日本年金機構も、今回の年金問題が持ち上がるより以前に構想されたものである。それに大体、年金を扱う組織を政府の組織でなくし、さらに「民間企業へのアウトソーシングの推進」などを謳うなど、全く狂気の沙汰である。国は信頼に値しないと、自ら言っていることになるのだから。社会保険庁国税庁に吸収合併して歳入庁とするという民主党案の方がずっとましである。いわゆる5000万件の浮いた年金記録についても、政府がやると言っているのは照合までであって、本当に必要なことであるデータの統合までは視野に入っていない。年金問題に関する安倍政権の対応は全く不十分だった。


 正規雇用と非正規雇用の格差については、本当に必要なのは非正規雇用者の正規雇用化だが、経団連に媚を売って、安倍政権は正規雇用化を進めていない。ここでも安倍政権は焦眉の課題に応えていない。


――といった具合である。こういう課題にきちんと取り組まずに、効果の怪しい(というより、率直に言って、単に間違っている)教育政策などを打ち出して、それを成果だと強弁する。要らないのだ、こんなことは今。



 時代の状況に応えずに自分のやりたい政策を推し進めようとする安倍政権は、政治を全く私物化していると断じてよい。こんな政権に日本の政治を任せているわけにはいかない。いよいよ、安倍政権を倒し、自民党を野党に転落させるべき時である。


 それにつけても、議員の世襲は政治から駆逐されなければならない。


追記
 注目していた東京選挙区で5議席目の当選確実に、なんと自民党候補の丸川珠代が入ってしまった。丸川と言えば、2004年に米国から帰国して以来、つい最近まで住民票を移していなかったという報道があった当人である。つまり、2005年の総選挙にも今春の東京都知事選にも投票せずと、政治意識の全く希薄な人間が、国会議員になってしまったのである。しかも、そういう自分が期日前投票をできると思い込んで投票所に赴いたことからすると、入場整理券を受け取りそれを持って投票所に行くという仕組み自体すら、知らなかった可能性がある、つまり、これまで1度も投票に行ったことがない可能性すらあるのだ。そういう輩を国会へ送り込んでどうすると私は思うが、何とも言葉がない。東京の有権者(正確に言えば、そのうち丸川に投票した人々)は、今春石原都知事を再選させてしまったのに続き、またもや世間に顔向けできない投票行動をしてしまったことになる。怒りを込めて、この恥ずべき事態を記しておきたい。


追記2(8月3日)
 上の追記で「東京の有権者(正確に言えば、そのうち丸川に投票した人々)は、今春石原都知事を再選させてしまったのに続き、またもや世間に顔向けできない投票行動をしてしまったことになる」と書いたが、どうやら実際にも、今春石原に入れた人々が丸川にも入れて、その結果丸川の当選という結果になってしまったようである。これに関する情報はこちら


 また、丸川が如何に変節漢、いや男ではないので、変節女かということが、このブログで指摘されている。


 聞けば聞くほど、知れば知るほど、丸川珠代は底無しにどうしようもない奴であることがわかってくる。