会期延長――これぞ究極の党利党略

 国会の会期を大幅に延長するという方針を与党が固めたようである。その結果、参議院選挙が1週間遅れて7月29日投票ということになる。
自公両党、国会会期を12日間延長する方針を決定
参院選、1週間遅れに 公明代表、会期延長に同意


 まず質問だが、これによって、選挙準備のために余計に支出されることになる金額は、いったい誰が払うのだろうか。数十億円か、それとも数百億円の単位か。いずれにせよ、この余分の支出は、徹頭徹尾無駄な支出である。やるのは同じ参議院選挙なのだから。さらに、もともと別の選挙と同日にやる予定で準備を進めていた自治体もあると聞く。そういうところの支出は、これを自治体に負わせるべきなのだろうか。むしろ、自民党公明党政党交付金を削って回すべきではあるまいか。否、筋から言えば、支出の原因は与党の決定にあるのだから、自民党公明党こそが、政党交付金を返上して追加費用を負担するべきである。


 余分の支出ということで言えば、選挙運動をやる方も1週間余計に運動をしなければならなくなり、アルバイト代その他も1週間分余計に支出しなければならない。これはどうしてくれるのか。みみっちいことをと言われるかもしれないが、しかし特に、既成政党(つまり、政党交付金を受け取っている政党)の支援を受けずに候補者を立てる団体にとっては、選挙が1週間先になることの負担は馬鹿にならない。


 全く以て、ふざけるな、である。これを党利党略と言わずして何と言おうか。


 与党の言い分は知れている。曰く、重要法案だから今国会中に可決・成立させなければならない、と。しかし本当に重要法案であるなら、なぜ最初からきちんとスケジュールを立てて、それなりの審議時間を確保するようにして、そして今国会に臨まなかったのか。これ、ホントにおかしくないか。とにかくお粗末極まる国会運営だと言わざるをえない。


 積み残しのいわゆる「重要法案」のうち、上で引用した記事で挙げられているのは、社会保険庁改革関連法案、年金時効特例法案、国家公務員法改正案の3つである。しかしこのうち本当に緊急性を要するのは2番目の年金時効特例法案だけだろう。しかも、聞くところによれば、安倍が大見得を切った「1年間に5000万件調べます」という、その調べ方は、従来から行なわれていた、通り一遍のやり方であり、それでは何ら問題の解決には資さないのだという(先日のサンデープロジェクトでの民主党長妻議員の指摘)。これが法案に盛り込まれているのかどうか、法案の文面を確認していないが、拙速に提出し強引に通しただけあって、同法案が碌な代物でないことは明白なようである。とするなら、この法案を可決させる意味はないと考えざるをえない。また、社会保険庁改革と公務員改革に関して言えば、私には、いずれについても民主党の提案(社会保険庁を解体して歳入庁を創る、公務員が天下った企業は公的支出に係る入札の資格を失う、というもの)の方が優れているように思われる。よって、3つの法案とも、会期延長を正当化する理由とはみなしがたい。


 ではなぜあえて与党は会期を延長するのか。思うにそれは、法案をスピーディーに可決させる「実行力」と、その可決によって得られた「成果」とを参議院選挙の選挙戦において強調するためなのだろう。国民は法案の中身まで一々見ないだろうと思っているからである(現に私も、法案の文面を一々確認するのは面倒だと、上で言ったばかりだが)。これを党利党略と呼ばずしてどうする。


 ろくでもない人間に政権を任せるからこういうことになるのである。会期延長というこのどうしようもない無駄も、我々は次の参議院選挙の投票の際には考慮材料としなければならない。