国政選挙の争点はただ一つ、現政権の継続を希望するか否か

 2日前の新聞の1面にこういう記事が出ていた。
首相、年金を争点化 「正面から取り上げないと勝てぬ」


 若干引用しておくと

 年金記録問題などで内閣支持率が下落している安倍政権は4日、この問題を参院選の争点にすえる野党に対抗しようと動き始めた。首相は公約の最重要政策に年金問題の解決策を明記するよう自民党政調幹部に指示。柳沢厚生労働相も同日、照合作業の具体的なスケジュールを示すなど巻き返しに出た。一方、自民党がこの問題で作成したチラシには党内からも批判が寄せられるなど歯車がかみあわない対応も出ている。


(中略)
 一方、自民党は先週末、年金記録問題についてチラシを作成し、都道府県連などに発送。チラシでは「基礎年金番号設計・導入時の厚相は菅直人民主党代表代行」と批判している。


 しかし、菅氏が厚相だったのは橋本内閣時代で、菅氏の後任の厚相は小泉前首相。責任転嫁ともとれる宣伝戦術に自民党内からも「かえって世論の反感を買う」との声が噴出。森元首相は4日の大阪市の講演で「自民党もみっともない」と批判。首相が演説などで菅氏批判を繰り広げたことについても「総理も一緒になってそんなことを言い出している」と不快感を示した。


 このため、自民党執行部内にはチラシを作り直すべきだとの意見も出始めている。(以下略)

自民党はよほど菅直人が嫌いらしいが、与党の政治家からこれだけ煙たがられることは、野党の政治家として名誉なことと言ってよいだろう。それにしても批判の低レベルなことといったらない。


 それはともかく、年金問題を争点としようとしているのは自民党だけでなく、民主党もそのようだ。


 しかし、いかなる国政選挙においてであれ、本当に争われるべきは、記事の表題にも書いたとおり、現政権の継続を希望するか否かということでなければならない。考えてもみてほしいが、2005年の総選挙は小泉が郵政民営化を争点とするということを言い出し、それを面白がったマスメディアの煽りを受けて、郵政民営化に対する姿勢(或いは、そういう政治課題に賭ける姿勢、とでも言うべきか)という点に選挙の争点が矮小化され、与党の大勝という結果がもたらされた。その結果国会はどうなったか。


 特にその弊害が顕著となったのは安倍政権になって以降である。すなわち昨年末以来、教育基本法改正、改憲手続法、少年法改正、米軍再編特措法、更生保護法などなど、ろくに審議を行なわずに数の力で採決を強行する国会運営が行なわれてきている(2005年の選挙の時にはこんなこと言ってなかっただろうに!)。選挙で争点を矮小化するとろくでもないことになる、これを我々は、いやというほど見せつけられてきた。今後も、イラク特措法や「教育再生」関連法案、さらに、出来そこないの年金関連法案や公務員関連法案などが順番待ちと来ている。こんなことで日本の政治は良いのか。断じて否。


 もちろん、個々の論点を論じるのは良い。大いに結構であり、やればよいのだが、しかし政治家が有権者に訴えるべき、そして有権者が選挙において心すべきこと、それはあくまで、現政権をこのまま続けさせてよいかどうかということである。政治家であれメディアであれ、いかなる人々が争点の矮小化を試みようとも、有権者は惑わされてはならない。