Winny開発者に対する有罪判決の意味

 数日前の話題だが、やはり看過できない重要な出来事なので、ここで振り返っておきたい。まず、判決の記事及び関連記事を掲げておく。
1 ウィニー事件:開発者に有罪、罰金150万円 京都地裁「著作権侵害に利用認識」
2 ウィニー事件:京都地裁有罪判決 「技術開発に悪影響」 被告ら激しく批判
3 ウィニー事件:京都地裁判決(要旨)
4 開発者(金子勇氏)の講演の記事


 Winnyの仕組みについては、私自身は使ったことがないしプログラムに詳しいわけでも全くないので、たぶん漠然と理解しているにすぎないのだろうが、おおよそ次のようなものなのだと思う。すなわち、インターネット上につながっている個々のパソコンが、お互いに信号を出し合って認識し合い、そして「各自が欲しいデータを提示し、所有者が提供する」、これがWinnyの仕組みなのだろう。ここで、互いを認識することとデータの提示とは、言うまでもなく同時に行なわれるのだろう。所有者が提供の際に承諾をしてから提供しているのか(たぶん、そうではないと思うが)、また例えば1つのデータ要求に対して複数の提供可能性がある場合や、複数のデータ要求が1つの提供者のところに集まる場合にどういう処理が行なわれるのか、といった技術的な点が気にはなるが、それらはここで問題にしたい点ではないので、とりあえずここでは等閑視しておくことにする。なお、さまざまなデータ流出問題が起こったことから想像するに、データの提示・提供の際には、Windowsで言えば「エクスプローラ」のような形でファイル一覧が作られているのではなかろうか。否、つながっているそれぞれのパソコンのエクスプローラそれ自体が、他のパソコンから見えるような仕組みになっているのではなかろうか。


 ところで、Winnyと同様の技術を使っていると思われるソフトとしてはSkypeが有名だろう。あれもまた、信号を出し合って認識し合い、そしてSkypeの場合には音声データのやりとりを行なうというわけである。


 そしてSkypeと比較すると、Winnyの性格がよりはっきり見えてくる。すなわちSkypeの方は、基本的には限られた人とのやりとりのために使われるから、そこでのつながり方は限定的である。これに対してWinnyの方は、手に入れたいファイルを誰が持っているかはわからないので、それを見つけるためにはなるべく多くの人とつながった方が良い。したがってWinnyの場合、つながり方は開放的・非限定的である。この点、すなわちつながり方が開放的・非限定的であることこそが、さまざまなファイル流出問題を生じさせる要因となったと言えよう。コンピューターのプログラム自体は、人間の意図(悪意)を見破る手立てを持っていないからである。


 それから、Winnyの特徴は匿名性が高いという点にあるという・・・ただ、信号を出すのに暗号化を行なっているのか否か、そのあたりのことは私にはわからない。とはいえ、Winny使用者同士がつながるようになっているところからすれば、少なくとも、或る時点でネットワーク上でどのパソコンがWinnyを使っているかを第三者が同定することは、可能なのだろうと思われる。


 そこで判決についてだが、まず基本的に妥当な判決だと言えよう。想像するに、法的論理構成の面では相当無理があったかもしれない。しかし、Winny製作の目的がファイル交換(4の記事である開発者自身の講演では「ファイル共有」という言葉が使われているが、共有はファイルの交換ないし転送があって初めて可能なのだから、「ファイル交換」が目的であると言うことは誤りでないだろう)であり、しかもそのファイル交換が匿名で行なえるようにするところにWinnyの特徴があるのであれば、Winnyが、著作権侵害を構成するファイル交換を幇助するソフトであることは明白であり、したがってその開発者は罰を免れない、と言うべきである。


 しかし言うまでもなく、真の問題は、Winnyを使ってファイル交換をするという行為にどう対処するか、である。そしてこの問題は、著作権をどう考えるかという点にまで及ばないわけにはいかない。


 −−これをやりだすと長くなるので、また、まだ考えがよくまとまっていないので、後日を期することとしたい。