「ワーキングプア」の本当の問題

 NHKスペシャルで放映された「ワーキングプアⅡ 努力すれば抜け出せますか」が話題になっている。こういう番組の放映には何ら異存はない。どんどんやると良い。ただ、こういう番組を見て一抹の嘘くささを感じるのは私だけだろうか。


 どこに嘘くささを感じるかということだが、今や日本の企業の中で正社員対非正社員という構図が存在しない企業は少数なのではなかろうか。何しろ非正規雇用が雇用人口の3分の1を占める現状である。だから、問題は何よりもまず、自分のいる場所、会社、企業、役所等々という身近な場所にあるのである。番組を放映したNHKも例外ではない。その身近な問題にまず目を向けることこそ必要なのではないか。


 具体的に言えば、NHKの場合、番組作りのどれほどを関連会社或いは外部のプロダクションなどの外部に委託しており、そしてそういう外部の人々が得る報酬は、番組制作にかかわるNHKの人間が得る報酬と比べて多いのだろうか、少ないのだろうか(言うまでもなく、「少ない」ケースが圧倒的に多いと想像される)。そして、仮に少ないとして、それは良いことなのだろうか。良くないのなら、なぜ変えないのか。


 全く同じことは新聞社についても言える。格差社会の問題を暴くべき記者が、新聞社内で安価なパート労働を使っておいて自らは高給を食み、それで格差社会に関する記事を書いたとして、そんな記事に何の意味があろうか。もちろん、社会的に意味がないとは言わないが、しかしそれは、書いた記者の中に深刻な矛盾を生じさせていると言わないわけにはいかない。


 ワーキングプアの問題は、自分の周囲の出来事を棚に上げて話せる問題ではないはずである。言い換えれば、今の社会の状況は我々一人一人が自ら作り出しているのである。それを自覚して、自らの周囲の状況を変えることから始めることこそが重要である。


 それにつけても、議員の世襲は政治から駆逐されなければならない。