今期の囲碁名人戦の面白さ

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 などと言っても、ヘボ碁打ちにどれほど鑑賞できているかはわからないが、それにしても今期の囲碁名人戦は全局どれも面白く、見ごたえがある。ヘボ碁打ちとして言うなら、本来の実力から言えば明らかに張名人の方が一枚上で、そのことは名人の打つ手の踏み込みの鋭さ−−なぜこの局面でここまで踏み込むのか、と思わせられることが何度もあり、しかしそれが実際に良い手なのである−−を見れば明白だと思われる。それなのに今回の名人戦では挑戦者の本因坊の方が勝ち越している。たぶん、名人自身、どこが悪くて負けているかわからずにいるのではあるまいか。さもなければ、実力第一人者が手を改めてこないはずはない。


 ともあれ、踏み込みが鋭いことから至るところで石のぶつかり合いが生じ、それゆえヘボ碁打ちにも楽しめる展開となっている。碁はきつねとたぬきの化かし合いかと思っていたら、どうしてどうして、将棋と同じくやはり血の出る斬り合いなのである。こういう戦いをもっとプロがやれば、囲碁ファンはもっともっと増えるのではあるまいか。そういう期待を抱かせる、充実した手合いが今回の名人戦では続いている。フルセットまで進むことを期待してやまない。