民主党政権は公約をひたすら実行せよ


 前原国交相が八ツ場ダム地元に「理解を得るまでダム建設事業の廃止手続きは進めない」と言ったとのことだが、もし本当なら、民主党政権交代を目指したのは何のためだったかを疑わせる。


 民主党政権の船出に合わせて行なわれた世論調査は、もちろんご祝儀も込めてだろうが、軒並み70%超の高率で鳩山内閣支持という結果を出した。しかしもちろん、それは無条件の支持ではなく、支持率調査と同時に行なわれた設問への回答では、新政権が財政の無駄を削ることへの期待が非常に高い。しかも八ツ場ダム建設の中止は選挙戦中に鳩山代表他が再三約束した事だ。今さら中止しない選択肢はありえず、それを先延ばしにする選択肢もありえない。


 地元の人々の生活への配慮はもちろん必要だが、それは意見交換会でなく説明会によって理解を求めれば充分だ。地元への過度の配慮は、地元以外の全国の有権者に対する背信行為になりかねないということを国交相及び民主党政権は認識すべきだ。



追記(9月28日)
 末尾に掲げたのは数日前の朝日新聞の記事だが、これについて少し触れておきたい。


 まず、この記事のうち、一晩にメールが4千通来たというのはもちろん真実だろうが、果たしてそのうち「8割が批判的な内容」というのは本当だろうか。もしこれが本当なら、少なくとも3200通の中身を一々チェックしてその内容を確認したのでなければならないはずだが、そんなことをやったとはまず考えられない。それにそもそも、8割が批判的だとすれば、残り2割つまり800通は批判的でない(ダム建設に賛成とまで言わなくとも)ということになるが、その割合は異常に高いように私には思われる。


 それはともかく、この記事の中にある「ネットの巨大掲示板」とはもちろん2ちゃんねるのことだろう。そして、私自身はもともと、2ちゃんねるなどという代物は全く評価に値しないと思っている。ただ、そう言った上で付け加えれば、この記事を読んで私は或る種の感慨を禁じえなかったことを白状しなければならない。


 つまり、長野原町に対して行なわれたのは、「まつり」とでも言うのだろうか(よくは知らないが)、ともあれインターネット側からのお騒がせなメール集中ということではあるのだが、しかし、長野原町の町役場にとってみれば、これほどのメールを受け取ることは空前絶後だろう(仮に複数のメールが同一人によって出されていたとしても)。これを単に「電話もひっきりなしで、仕事にならない。なぜ地元が悪者にされるのか」というふうに受け取るのは全く正しくない。先鋭的ではあれ、確かに世論の一部がこういう形で噴出したのであり、(上述のようにカウントが不確かだとしても)その圧倒的多数は自分たちの町がやろうとしていることに対して批判的なのである。これを全く無視するようでは、政治(行政もまた政治の一部である)に携わる人間として失格だと言わざるをえない。


 他方で、インターネットの側について言えば、今なお、自分たちの力の表現の仕方がわからずにいるように思えてならない。例えば、自分たちの思い思いの言葉で批判・中傷するというようなやり方よりもむしろ、今回の問題で言えば八ッ場ダムの建設がいかに無駄であるかを詳しく述べたウェブサイトへのリンクを紹介するメールが何千何万と送られていたならどうだろうか。こういう時には、攻撃は整然にして斉一的であるほうが遥かに効果的だと私は思う。インターネットの側は、力が依然限られているとはいえ、しかし全く無力ではないのだから、自らの力をより有効に使う方法を考えるべきではないだろうか。もう一段の成熟が、インターネットの側には求められているように思われる。


 上で言及した記事は以下のとおり。

八ツ場ダムの町、一晩にメール4千通 批判・中傷8割
2009年9月26日5時29分


 前原誠司国土交通相が建設中止を表明した八ツ場(やんば)ダムのある群馬県長野原町の町役場に、一晩で4千件のメールが殺到していたことが25日わかった。建設推進を求める地元に対し、8割が批判的な内容。町は「中傷が目立ち、メールサーバーへの負荷もかかる」として、メールの受け付けなどを25日朝、停止した。


 地元の住民代表らが23日の前原国交相との意見交換会への出席を拒否したことを受け「対話拒否はおかしい」「(民主党が総選挙に勝ったという)民意に背くのか」といった批判や、「ダムが中止になって、なぜ喜ばないのか」という意見が多く、なかには「ごね得」「非国民」などと中傷するメールも。


 同町によると、通常は一日数件が届く程度。前原国交相が現地視察をした23日は200件を超すメールが届いた。担当者が25日午前8時すぎに確認すると、前夜からの間に4千件届いていたという。ネットの巨大掲示板に役場のメールアドレスが書き込まれたことが原因らしい。


 担当者は「電話もひっきりなしで、仕事にならない。なぜ地元が悪者にされるのか」と憤っている。