都知事選のもう一つの問題−−都議会

 都知事選もそろそろ終盤戦にさしかかってきた。これまでに書いたことのうち重要な点を要約的に再度取り上げることもしていかなければと思っているが、それはともかく、今回は都政を考える上で重要なもう1つの点を取り上げなければならない。それは、都議会の問題である。


 都知事選と都議会とは、もちろん関係があるとはいえ、直接今回の選挙にかかわるわけではないのではないか−−こう思う人が少なくないかもしれない。ところがどっこい、そうではないのである。少し前のものだが、朝日新聞で次のような記事が出ていた(幸い今でもインターネット上で見ることができる)。
議員提案条例、「成立ゼロ」4割 都道府県と政令市調査
 見出しはともかくとして、注目すべきは記事の中の次の箇所である。

 統一地方選を前に、朝日新聞社が議員提案による政策的な条例の成立状況を、47都道府県と15政令指定市の議会を対象に調べたところ、06年までの10年間に、34道府県と5指定市で計109本の条例が成立していたことが分かった。地方分権一括法が施行された00年以降、「改革派知事」のいた自治体を中心に、役所まかせだった政策条例づくりに乗り出す議会が増加。10本を超えた議会がある一方で、62議会のうち4割近くはゼロ、1本だけも2割強あり、議会の温度差が浮き彫りになった。

 調査は2〜3月上旬に実施。都道府県と指定市の議会事務局に、97年から06年末までに成立した議員提案の政策条例の数と内容などを聞いた。


 都道府県議会での成立は99本。最多は宮城の14本で、三重(10本)、鳥取(8本)、高知・島根(7本)、岩手・広島(4本)と続く。「改革派」とされた知事のいた議会が目立つ。


 成立年別では99年までの3年間は計5本だけだが、00年は8本に急増。01〜04年は年11〜14本で、05年には22本を数えた。06年は15本だった。

 00年には地方分権一括法が施行され、条例をつくれる範囲が拡大。8本が鳥取、宮城、三重、高知など「改革派知事」のいた議会に集中した。知事に対抗するため活性化策として取り組んだことがうかがえる。


(中略)


 一方、1本も成立しなかった議会は青森、東京、群馬、愛知、石川、兵庫、福岡など13都県に上る。このうち群馬や山梨、新潟などは96年以前も成立した例がないことが確認された。(以下略)

言うまでもなく、議員提案条例が最多となった宮城県は、今回都知事選に出馬している浅野史郎氏が2005年まで知事をやっていたところである。往々にして、浅野氏らいわゆる「改革派知事」は議会の多数派の支援を受けずに当選してくるため、議会との対立関係・緊張関係が生じることになる。それが良い方向に作用した現れが、議員提案の条例の増加だと見てよいだろう。


 これまた言うまでもなく、石原都知事は「改革派知事」ではない。それにちょうど呼応するかのごとく、都議会では議員提案の条例が一本もないと、上の記事にはある。


 しかし、都議会の問題はこれだけではないのである。都知事選との関連で都政について多少知ろうと思い、都議会の会議録を見ていて、こういう委員会があるのに驚いた。


都議会議員後藤雄一君の調査活動等に関する調査特別委員会


 名前から容易に想像がつくように、これは特定の議員に対するいじめのための委員会である。後藤雄一氏については、もちろん私は縁もゆかりもないが、東京都の世田谷区で行革110番というのをやっておられる方で、確か2度目の挑戦で都議会議員に当選されたのではなかったかと思う。氏の調査活動に行き過ぎの面があった場合もあるのかもしれないが、しかし基本的に氏がやっているのは、情報の開示を求めるといったことであり、それ自体は少しも問題のないことである。むしろ今の都政では、本ブログの別の記事でも書いたように情報公開はまだまだ不十分なのだから、都民の目から見て後藤氏の活動は全く歓迎されてよい。都議会が税金を使っていじめをやるとは、実に嘆かわしくまた腹立たしいことだと言わざるをえない。


 こんな委員会が設置できるのは、都議会が都知事に対するチェック機能を全く麻痺させており、むしろそれがあらぬ方向に向かっているからだろう。今の都議会のていたらくを象徴していることのように私には思われる。


 石原都知事が再選されれば、惰眠をむさぼるがごときこのような都議会に喝を入れることができないであろうことは、明々白々である。これもまた、都知事選の論点の一つ、重要な一つと言ってよいのではなかろうか。