石原都政検証記事の転記(4・完)

 石原都政検証記事の転記を始める前に一言。昨日或る集会で聞いた話だが(引用の100%の正確さは保証しないが、大意は間違いないと思う)、石原慎太郎氏は1975年に都知事選で美濃部都知事(当時)に挑戦した際に、脳みそが軟化した70過ぎの老人には都政は任せられないと言ったのだそうである。自らの発言に責任を取るのが政治家なら、論理的に言って氏は、自分は70すぎで脳みそが軟化しているから、今回の選挙では自分には都政は任せられない、と言わざるをえないことになる。まあもちろん、昔と今では高齢者の元気さは異なるとか何とか言って、前言を撤回せずにごまかすのがオチなのだろうが。


 ところで、昨日に続いて転記を行なうことにする。今回もまた、一度に2つの記事を転記することにする。それにしても、石原現知事の発言の品のないことといったらどうだろうか。帰島1周年の三宅島島民に対して「甘ったれちゃいけない」(誰が甘ったれているだろうか)とか、瑞穂町議会の決定に対して「頭がどうかしてるんじゃないのかよ。・・・ほえ面かかないようにした方がいいよ」とか、これは一体何様の発言だろうか。石原現知事を支持する都民は彼の実態をあまりに知らなさすぎるように思われる。人間の品格の面でも「朱に染まれば赤くなる」ということはあるのだと、思いを致す必要がある。


 まずは1つ目の記事

朝日新聞 地方版
8年の軌跡 石原都政検証(5) 自治体と遠のく距離−−都の「恩恵」配分に不満−−(2007年3月17日)


 「アジアを代表する産業拠点(多摩シリコンバレー)に育てます」
 石原慎太郎知事は15日発表した選挙公約「八つのプログラム」のうち、1項目をわざわざ多摩・島しょ部の振興にあてた。


<五輪・国体で溝>
 3選立候補の旗印に掲げる五輪招致をめぐって、多摩の首長たちに不満がくすぶるのを意識せざるをえないのだ。
 都の開催概要計画で、競技会場として多摩で選ばれたのは、調布市東京スタジアムだけ。五輪が都市整備を促すといっておきながら、これでは恩恵にあずかれないというのが多摩の首長たちの本音といえる。
 競技会場を都心部に集中させたのは、選手らの負担を軽くする「コンパクト五輪」が最近のはやりだからだ。しかし、自治体関係者の中には「『首都東京』という物言いを好む知事にすれば、多摩は文字通り遠いのだろう」という指摘もある。
 石原知事は公約で、13年の多摩国体を「多摩再起動」の起爆剤にすることも掲げた。ただ、首長たちには「会場が来るのはいいが、整備を押しつけられるのはかなわない」という声が強い。昨年7月には、競技実施に関する都の補助基準では市町村の財政負担が重すぎると、都市長会と都町村会が連名で知事に申し入れた。


<「自前の財源」>
 一方、今年で特別区の制度発足から60年となる23区の区長たちには、都との関係で特別区ならではの思いがある。
 都と23区は毎年、協議会を開いて約1兆7千億円の「調整3税」の配分比率を決めている。都は消防や下水道などの「大都市事務」の財源とし、区側は各区の財政事情にあわせ財政調整交付金として配分を受ける。
 調整3税の中心となる固定資産税や法人住民税は他県なら市町村の直接財源だ。00年に都の内部団体から基礎的自治体に昇格した区側には、「本来は自分たちが使えるカネ」という意識が年々強まっている。
 最近は「大都市事務」を掲げる都側と、事務分担に見合った財源配分を主張する区側の意見が衝突する場面もある。
 昨年1月、三位一体改革の影響額などを巡って両者が合意できず、27年ぶりに協議が決裂した。当時の区長会長が石原知事に非公式に2度も都案の変更を請願したが、いれられなかったためだ。今年もようやく合意できたのは、都が新年度予算を発表した後だった。
 こうした協議の場に石原知事が姿を見せるのは年に1回程度だ。対応は副知事に任せている。


<「配慮足りぬ」>
 ある区長は
「都民生活に対する目配りや配慮が足りない。区長会の声が知事に届いたことが果たしてあるのだろうか」
と不満を募らせる。
 杉並区の山田宏区長は、石原知事が「国のかたちを変える」と物言う姿勢にふれ、
「東京の内なる分権をテーマにした都区制度改革にも、当然、国に対するのと同様の姿勢で取り組まれるべきものだ」
と注文をつける。
 昨年から、区長たちにとっては気になる新たな動きがもう一つ出た。これまでタブー視されていた23区の再編論議が事実上解禁されたのだ。
 昨年11月には、東京の自治制度について都に助言・提言する「東京自治制度懇談会」が
特別区の再編統合については、都区が議論を深め、メリット・デメリットを明らかにする必要がある」
として議論を促す口火を切った。
 そして12月都議会。石原知事が23区の区割りを抜本的に見直す必要があると言及した。ある区長はこれを聞いて、「権限や財源を都から譲ってもらいたいのなら、再編を真剣に考えろ」というメッセージではないかと受け取った。逆に言えば、再編は簡単には進むはずもないから、権限委譲も簡単にはいかないというのが知事の考えなのではないかと。
 いずれにせよ、都と区のせめぎ合いの新ラウンドは4月の選挙後に本格化する。


<石原知事発言録>
「区割りの制度も含め、どういう形で東京における『道州制』を実現していくか。試案は都が出すもんじゃない。(区側の)皆さんの方から出していただきたい」(05年5月、自民党の都議・区議による都区制度改革促進決起大会で)
「(観光振興の)アイデアはいくらでも出すけど、決めるのはあなた方(島民)なんだから。都に金出せって言ったってだめだ。甘ったれちゃいけない。都にも国にも限界がある。都なりに一生懸命やりますから、後は皆さんがやらないと」(06年2月、三宅島帰島1周年記念の懇親会で)
「私だってあちこちでやりたいけども、(会場を)散らばすことができない。それだと国際コンペに勝てないわけですからね。まあ、そこまで三多摩の市長さんたちはご存じないんだろうけども」(06年6月、五輪施設の都心集中配置案に多摩地域の市長から異論が出ていることについて、会見で)
「頭がどうかしてるんじゃないのかよ。やっぱり頭を冷やした方がいいと思うね。オリンピックが仮に決まって、その前に三多摩は(国体が)あるわけでしょう。その時になってほえ面かかないようにした方がいいよ」(06年6月 瑞穂町議会が五輪招致決議案を否決したことについて、会見で)
「都からの事務移管をさらに進め、(区は)これに見合った権限や財源を持つべきでありますが、各区の行財政規模にかなりの格差があるなど、現状の区割りのままでは、その役割を十分に果たすことはまことに困難であります。60年間変わっていない特別区の区割りを抜本的に見直す必要があると思います」(06年12月、都議会の答弁で)

 2つ目の記事は、本文は識者のコメントから成っている。それなりに面白いと言えるが、ここではその部分の引用は割愛し、<石原知事発言録>の部分だけを転記することにする。連載の掉尾を飾るにふさわしい、石原現知事の暴言の数々から成っている。間違えないでほしい。この発言の主が、東京都の今日只今の知事なのだということを。

朝日新聞 地方版
8年の軌跡 石原都政検証(6・完)(2007年3月18日)


(中略)
<石原知事発言録>
「不法入国した多くの三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返しており、大きな災害では騒擾事件すら想定される。警察の力に限りがあるので、みなさんにも出動していただき、治安の維持も大きな目的として遂行してほしい」(00年4月、陸上自衛隊練馬駐屯地であった「創隊記念式典」でのあいさつで)
「『文明がもたらした最もあしき有害なものはババア』なんだそうだ。『女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です』って」(01年11月発売の週刊誌のインタビューで。学者の言葉を引用しながら)
「あの田中均なる、非常にけしからん審議官も訳が分からんですね、外交を断りもなしに展開する。私は外務省がやってきたことは一種の背信行為、売国でありまして、万死に値すると思いますね」「投げたルアーに、片言隻句に喜ぶバカなメディアがダボハゼのごとく食いついてですね」(03年9月、都議会で。北朝鮮との交渉役を務めた外務審議官の自宅で発火物とみられる不審物が見つかった事件で、「爆弾を仕掛けられて、あったり前」などと発言したことを質問され)
「フランス語は数を勘定できない言葉だから、国際語として失格しているのも、むべなるかなという気もする。そういうものにしがみついている手合いが結局、反対のための反対をしている」(04年10月、首都大学東京の支援組織の設立総会で。都立大の組織改編に反発した、仏語を含む同大の担当教員らを批判して)
「国連なんてそんなに大したものなんですか。神様みたいな存在ですか。冗談じゃないよ。今頃、国連憲章なんてまともに信じているバカいませんよ」(05年9月、都議会での答弁で)
「(08年北京五輪は)ヒトラーのやった、非常に政治的なベルリンのオリンピックに、ある意味似ているような気がする」「『(東京が招致を目指す16年五輪に)北京が反対するから悪口言うな』と言われるが、言わないわけにはいかない」(06年7月、都内での講演で)
「怪しげな外国人が出てきてね。生意気だ、あいつは」(06年8月、JOC選定委員会で福岡市の応援演説をした姜尚中・東大教授が「金持ちのためのオリンピックで世界に勝てますか」と東京を批判したことを受けて、直後の祝勝パーティーで)
「不法入国の三国人、特に中国人ですよ。そういったものに対する対処が、入国管理も何にもできていない」(06年9月、危機管理がテーマのシンポジウムで)