南米版EUへの動き?

 <南米12カ国の相互観光、パスポート不要に>http://www.asahi.com/international/update/1128/024.html
という記事が目についた。一部引用すると

 ロイター通信などによると、南米の各国民は、それぞれの国で有効な身分証明書を持っていれば、観光目的の90日間の滞在が認められるようになる。パスポートは必要なく、ビザをとる必要もなくなるという。行き来をより活発にし、観光などの産業を盛んにするのが目的だ。


 これはEUを想起させる話である。もちろん、EUの場合には観光だけでなく域内での就労は原則自由なようだから、南米はまだそこまでは行っていないということになる(当たり前だが)。しかし逆に、各国で言語が異なるEUに比べれば、南米はもともと言語的一致度が高く(スペイン語をガムを噛んで話せばポルトガル語−−或いはその逆−−という冗談が確かあった)、いったん統合へ動きだせば、統合プロセスが急ピッチで進むことは決して不可能でないだろう。


 ここで注目すべきは、南米では今、反米政権が次々と出つつあるようだ、ということである。例えば次の記事
エクアドル大統領選も反米左派が勝利宣言>http://www.asahi.com/international/update/1127/003.html
によると、これで、ベネズエラのような反米政権の誕生は3つ目ということになるのだそうだ。


 しかし、南米を自分の裏庭と思っているアメリカはただでは済むまい。今後アメリカが南米に対してどのように出てくるかが注目される。


 なお、以上のニュースについては海外のメディアの反応も気になるところだが、さしあたりは見当たらなかった。見つけたら追記で書き加えることにしたい。


追記
 関連する記事を見つけたのでリンクを掲載しておきたい。
<土曜解説:左傾化止まらぬ中南米http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/kaisetsu/news/20061125ddm004070034000c.html
一部引用しておくと

 ラテンアメリカ左傾化現象が止まらない。背景にあるのは絶望的な貧富の格差だ。人々は右派勢力の口先だけの公約にそっぽを向き、貧困脱出の希望を左派勢力に託し始めた。(中略)


 90年代にこぞって、民営化を進めるなどの新自由主義経済を取り入れたラテンアメリカ諸国は、インフレを克服し経済を安定させた。しかし、その恩恵は一部にとどまり、むしろ貧困層は格差の拡大を実感するようになった。それが21世紀に入り左傾化現象が顕著になった背景にある。


 相次いで誕生した左派系政権は、いずれも貧困克服を最優先課題にするが、その姿勢は「穏健派」と「急進派」に大別される。穏健派の代表格は、新自由主義経済を維持しつつ貧困対策に力を入れるブラジルのルラ政権。一方、急進派はベネズエラチャベスボリビアのモラレスの両政権で、資源の国家管理を強化しキューバと連携するなど社会主義的な政策を目指している。(以下略)

とのことである。


追記2(12月5日)
 ベネズエラの大統領選挙でチャベス氏が3選を果たしたことを伝える記事
ベネズエラ:3選のチャベス大統領、穏健左派とは温度差も>http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20061205k0000m030043000c.html
の中で、「南米版EU」にかかわる話がいくつか記されている。以下抜粋しておきたい。

 ベネズエラは今年7月、南米南部共同市場(メルコスル)の5番目の正式加盟国になった。チャベス大統領は「メルコスルは共通の憲法・通貨を持つ『メガ国家』に向かわなければならない」と主張、メルコスルを足がかりとする地域統合の推進に意欲を示した。


 チャベス大統領は、米国が主導する米州自由貿易地域(FTAA)構想には対抗し、ベネズエラキューバボリビアの反米左派3カ国で経済・社会協力協定を結んでいる。同大統領は同協定をラテンアメリカ全体に広げて、影響力を拡大することを目指している。


(中略)
 南米12カ国は04年、政治・経済統合を目指し「南米共同体」を発足させた。同共同体は自由貿易圏の実現や南米憲法の制定などを検討していく方針で、今月8、9の両日には2回目の首脳会議がボリビアで開催される。チャベス大統領は地域統合のけん引役を果たそうとするとみられるが、中南米で多数派の穏健左派政権との温度差ゆえに、妥協を迫られる事態も想定される。