インフレ目標論というデタラメと、日銀による新規国債引受というまっとうな政策


 経済について書く場合、本ブログの書き出しはいつも同様である。すなわち、私は経済に関するド素人だと言ってよいが、しかしそのド素人であっても、書きたいこと、書かなければならないと思うこともあるのである。


 11月29日の朝日新聞のオピニオン欄では、「デフレとどう闘うか」との題のもと、2人の経済学者の論考が掲載されていた。うち1人(池尾和人氏)の論考については特に何かを言うつもりはない。全く具体性を欠いた談話にすぎず、論評に値しないからである。


 ここで問題にしたいのはもう1人の論考(「寄稿」となっている)のほうである。その著者、岩田規久男氏は、いわゆるインフレ目標論の主唱者として有名だが、その氏は今回の論考の中で、自らの主唱するインフレ目標論的政策は実現に「時間がかかる」として、そこでそれに代わって「考えられるのが、昭和恐慌からの早期脱出に成功した高橋是清蔵相にならって、日銀による国債の直接引き受けを実施することである」とのたまっている。これを読んで、岩田氏の節操のなさ、いい加減さを感じたのは私だけだろうか。


 誤解のないようにまず言っておくが、ここで問題になっているインフレ目標論とは、物価上昇が昂進している時のインフレ目標論ではない。物価上昇が強まっている時のインフレ目標導入が有意義であることは、もとより論を俟たない。これは自明であり、そのような意図からする物価安定化は、先進国であればどこでも実施されているたぐいの政策だろうと思われる。これに対して、岩田氏ほかがこれまで唱道してきたのは、デフレ時におけるインフレ目標論である。そして、私の誤解でなければ、岩田氏ほかのインフレ目標論は、金融の超緩和を目指すという、金融政策的な議論だったはずである。


 金融の超緩和を目指すという、岩田氏ほかの言わば金融的インフレ目標論は、全くのペテンであると言ってよいのではないだろうか。だいぶ前にこういう話に多少首を突っ込んだことがあったが、その時にも、何度聞いても、金融の超緩和がどのようにしてインフレ醸成につながるかということが私にはわからなかった。もちろん、私の頭が悪いからだからなのだろうが、しかしもし私の頭が悪いだけなら、なぜアメリカでは、岩田氏と同様インフレ目標論を主唱していたバーナンキFRB議長になったにもかかわらず、そして、今のアメリカがほぼ間違いなくデフレ状況にあるにもかかわらず、金融的インフレ目標論者たちが主唱した金融的インフレ目標論(金融の超緩和などを伴う)は今日まで現実に実施されずに来たのだろうか。このことこそが、デフレ下のインフレ目標論なる議論の非現実性を如実に示しているように私には思える。


 これに対して、日銀による新規国債引受というのは、要するに紙幣を刷ってばらまくという政策であり、非常手段ではあるのだが、しかし決してデタラメではない。否、今の日本ではまさにこういう政策こそが、景気回復のために重要なのではないだろうか。なぜなら、紙幣を刷ってばらまけば、当然相対的にインフレが生じることになり(これはデフレの解消につながりうる)、かつそれに伴って、円は今の円高から(相当大幅な)円安へと振れるだろうが、そうなれば日本の輸出産業の競争力が回復することになる。


 但し、岩田氏のダメさ加減は、日銀による新規国債引受によって得られた資金で何をやるかという点が明確でないところに現れている。ここで意味のある政策を提言できないようではどうしようもない。


 ではお前には何が言えるのかって? もとより私は経済の素人であり、私と岩田氏を比較すること自体が間違いなのだが、それでもあえて言えば、今大都会の都市部では自転車の交通がめちゃくちゃである。片側一車線の道路で自動車に向かって走ってくる自転車(つまり、片側一車線の道路の右側を走る自転車)の数は最近とみに増えており、また、歩道を高速でぶっ飛ばす暴走自転車もある(その他、無灯火の自転車も実に多い、などなど)。これらの問題の一部はもちろんマナーの問題だが、実はそのほかに、今の交通体系の中で自転車の位置がきちんと定められていない点が、これら問題の原因の一つであるように私には思える。すなわち、今の交通体系では自転車は車道の左端を走ることになっているはずだが、実際には車道には違法駐車が多く、自転車がまともに走れない状況が存在する。また、仮に違法駐車がない場合でも、道路の幅が充分でなく、自転車のすぐわきを自動車が追い抜いていくような状況があり、これでは自転車を運転する側は、当然ながら、生きた心地がしない。つまり、車道の左端を走れなどという現行の規則を振りかざすだけでは問題は到底解消しないのである。


 ではどうすれば良いか。すべきこととは当然、自動車用の道とも歩道とも異なる自転車専用道の整備であり、例えばこれを、大都市部を中心に大々的に行なえばよいのではないか。そのために、日銀による新規国債引受で得られた資金を使って公共事業を行なえばよいのではなかろうか。


 もちろんこれに限った話ではないが、少なくとも私は1つの案は提示できたことになろう。