泥沼にはまりつつある国策捜査、及び、西松建設側からの政治献金について


 昨日づけの記事で批判した政府高官の発言は、今日(3月6日)になって与野党から批判を浴びている。与野党を問わず、国会議員たちも、さすがにこれを看過するまでに堕落してはいなかったというのは、とりあえず安堵させる話ではある。と言ってももちろん、当の政府高官、すなわち漆間巌内閣官房副長官(事務)は罷免・更迭されなければならないのであって、それが完了しなければこの発言の問題は一件落着とは行かない。まず、与野党からの批判を伝えた朝日新聞の記事を引用しておく。

「自民立件ない」政府高官発言に与野党批判 西松事件
2009年3月6日22時31分


 西松建設の違法献金事件で政府高官が「自民党側は立件できない」と5日に発言したことについて、小沢代表の公設秘書が逮捕された民主党だけでなく、与党内からも厳しい批判が6日、相次いだ。


 自民党細田博之幹事長は記者会見で、党役員連絡会で「分かったようなことを言うべきではない」との意見があったと紹介し、「その通りだと思う」。大島理森国会対策委員長も「(政府高官が)誤解を受けるような言葉を絶対に言ってはいけない」と、河村官房長官に注意した。


 公明党の漆原良夫国会対策委員長も「捜査情報という機微に触れる話が入るはずがないのに、知ったかぶりをしてはいけない。捜査の信頼性を損なうし、民主党の『国策捜査』という主張を裏付けることにもなりかねない」と記者団に語った。警察官僚出身の平沢勝栄衆院議員はテレビ番組で「そんなことを言った人がいたとすれば、その人は失格だ。今すぐ辞めるべきだ」と辞任を求めた。


 これに対し、河村氏は記者会見で「国策捜査ということは現にあり得ないし、あり得べきことでもない。そのようなことを類推させるようなことが政府側から出ることはあり得ない」と釈明した。


 一方、民主党は批判を強めた。鳩山由紀夫幹事長は会見で「政府高官は馬脚を現した。なぜ捜査の行方に対し、こんなに確信的な言動が出来るのか。内閣と検察の間で何らかの会話が行われていたと疑わざるを得ない」と述べ、参院予算委員会で追及する考えを示した。簗瀬進参院国会対策委員長も「政府高官という立場の方が言うのは大変問題だ。自民党まで捜査するな、というサインのように思える」と指摘した。

 なお、この政府高官の名が上に記したとおりであることは、鈴木宗男氏の「ムネオ日記」3月6日づけの記事でも記されている。人定の点はいよいよ確かだと言ってよかろう。


 ところで、西松建設からの迂回献金をめぐる話は混迷度を増し加えつつあるようである。次の朝日新聞の記事を見るとその様子が窺える。

献金団体所在地、西松本社と誤記 自民政治資金団体報告書
2009年3月6日20時55分


 西松建設の違法献金事件をめぐり、自民党政治資金団体国民政治協会」の03年の政治資金収支報告書に、西松建設OBの政治団体新政治問題研究会」が、西松建設本社の住所を誤って団体所在地として記載していた。6日の参院予算委員会で明らかになった。


 政治団体献金のためのダミーだったことを裏付けるもので、麻生首相は「詳細について必要であれば党の方で説明させたい」と述べた。献金疑惑は民主党だけではなく、自民党にも飛び火した。


 共産党小池晃氏は、国民政治協会に500万円を献金した新政治問題研究会の所在地の確認を求めた。総務省の門山泰明選挙部長は、07年7月11日付で所在地の訂正願が出ていると説明、訂正前の住所は「東京都港区虎ノ門1の20の10」と明らかにした。この訂正前の所在地は、西松建設本社ビルにあたる。


 首相は「住所の誤りは、寄付した団体が間違った住所を伝えたためとの報告を受けた」と説明。これに対し小池氏は「そんな説明ではすまない。西松建設と同じ住所で、何の疑問も持たずにあなた方が総務省に届けを出した。これは自民党の問題だ。国民が疑惑を持ちますよ」などと詳しい調査を求めた。

 ひょっとするとひょっとして、東京地検特捜部が小沢民主党代表の秘書の大久保氏を逮捕した時に得ていた証拠とは、「政治資金収支報告書に、西松建設OBの政治団体新政治問題研究会」が、西松建設本社の住所を誤って団体所在地として記載」されていた、という程度のものだったのではあるまいか。だとすれば、ヤッター、東京地検自民党も調べなくちゃならなくなっちゃった。もちろん、政界をこの機会に大掃除することに、本ブログは何ら反対するものではない。ただ、やるのなら小沢氏だけではだめであり、ちゃんと自民党もやってもらわなければならない。



 そして、つらつら思うのだが、そもそもいったい全体これはどういう話なのか。


 西松建設のOBが作った団体は、確かに小沢民主党代表に対して、他の政治家に対しての献金と比較すると突出して巨額になる献金を行なっていた。拙ブログ2009年3月4日づけの記事を見ていただければ、そこに赤旗の記事から一覧表を転載してあるので、すぐにわかるだろう(もっと詳しい表も、他で見ることができよう)。しかしながら、同じ表を使ってちょっと計算をすればこれまた明らかなように、合計金額で見ると、民主党の政治家がもらっている金額よりも遥かに大きな金額が、小分けされて自民党の木端(こっぱ)政治家たちにわたっているのである。


 とするなら、こういうふうに考えることができるのではないか。すなわち、(迂回献金ということを事実として前提するとして)西松建設が本当に狙っていたのは与党である自民党からの便宜供与(受注獲得のための)であり、だからこそ、全体としては自民党に対する献金のほうが大きいのである。しかし、自民党ばかりに献金をしていたのではあまりにも目立ってしまう。そこで、バランスをとって野党の政治家にも献金をし、かつその際、一人に集中的に献金することによってそちらのほうを目立たせる(もちろん、真意をカモフラージュするために、である)。その対象ないし標的となったのが、小沢民主党代表だったのではないか。ううむ、これだと小沢氏がスケープゴートになってしまって、小沢氏はあまりにも純粋無垢ということになってしまう(!)。それはたぶん正しくないのであって、公共事業に関して、小沢氏側にも何がしかの影響力はあったのかもしれない。しかし、である。他の国会議員はいざ知らず、小沢氏は、その献金をすべて政治資金収支報告書に記載しているのだから、白日のもとにあるそのような金への見返りとしてもしも便宜供与を行なっていたなら、それは要するに「検察様、私を捕まえてください」と言っているようなものである。小沢氏も秘書も、いくらなんでもそこまで間抜けではないのではないだろうか。


 こう考えてくると、検察は今回の逮捕及び家宅捜索という強制捜査をどうやって収拾へと導くつもりなのか、俄然興味が湧いてきた。だって、これって一体収拾できるのかね?