小沢民主党代表の秘書の逮捕をめぐって


 昨日以来、この逮捕をめぐっていろいろなことが語られている。秘書の逮捕以降、検察側からの情報のリークも着実に行なわれているようである。例えば読売新聞のこの記事

小沢氏側が西松建設献金請求書…「企業献金」認識か
特集 西松献金


 小沢一郎民主党代表の資金管理団体陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で、同会が準大手ゼネコン「西松建設」(東京都港区)のOBを代表とする二つの政治団体から献金を受ける際、同社に請求書を出していたことが、同社関係者の話でわかった。


 その後、献金は2団体名義で、請求書の金額通りに行われ、陸山会側からは2団体あてに領収書が発行されていたという。東京地検特捜部も同様の事実を把握しており、小沢代表側が政治団体からの献金西松建設からのものと認識していた可能性が強いことを示す事実とみている。


 二つの政治団体は「新政治問題研究会」(1995年設立)と「未来産業研究会」(98年設立)。特捜部の調べなどでは、陸山会は2団体が解散した2006年までの4年間に、実質的に西松建設からの献金と知りつつ、2団体名義で計2100万円の違法な企業献金を受け、2団体からの献金と記載していたとされる。複数の同社関係者などによると、こうした献金の要請は、小沢代表の秘書らから同社東北支店(仙台市)などに寄せられていたという。


 要請があると、同社では本社の総務・経理部門を統括する管理本部の本部長らが、政治資金規正法違反容疑で再逮捕された前社長・国沢幹雄被告(70)(外国為替及び外国貿易法違反罪で起訴)らの了承のもとに金額を決定。この金額を伝えられた陸山会側は、改めて請求書を作成し、西松建設に渡していた。


 その後、請求書は2団体側に渡り、献金額の振り分けは、団体の手持ちの資金に応じて、決定されていた。振り込みの手続きは、2団体の代表を務めるOBが行っていた。献金が終わると、陸山会側から2団体に領収書が送られてきたという。


 こうした手続きは毎年繰り返され、陸山会側から西松建設側に、「今年もよろしく」などと、前年並みの献金額を求めることもあったという。献金額は、新政治問題研究会が03〜05年に各500万円、06年が100万円。未来産業研究会は03、04年が各200万円、05年が100万円となっている。2団体には西松社員が会費を振り込み、後で同社が賞与などで補填(ほてん)していた。


 この事件では、政治資金規正法違反容疑で、陸山会の会計責任者で小沢代表の公設第1秘書の大久保隆規容疑者(47)が逮捕されているが、同容疑者は容疑を否認している。特捜部は、陸山会の請求書は西松建設に送っていることから、大久保容疑者が、2団体は西松建設のダミーで、実際は西松建設からの献金だと認識していたとみている。
(2009年3月4日14時57分 読売新聞)

 この手の情報はこれからもジャンジャン出てくるだろう。一々つき合うつもりはないが、例えばこの記事について言えば、「陸山会の請求書は西松建設に送っている」とあるが、果たして西松建設自体が宛先だったのか、それとも西松建設の何部の何の誰兵衛が宛先だったのかで話は大きく異なりうる。会社の住所宛てに送ってくれと団体側の人物が言って、それに呼応して陸山会側が送ったのであれば、なお個人への送付と判断しうるからである。


 ともあれ、今回の件で重要なのは、現在のところ容疑を否認しているとされる小沢氏の秘書の態度が否認を続けるか、それとも覆るかである。これについては、今後の成り行きを見守るとしか言いようがない。


 この件に関しては、鈴木宗男氏の「ムネオ日記」2009年3月4日の記事が非常に重く、考えさせられるものだった。以下に引用しておくことにする。

2009年3月4日(水)


 小沢一郎民主党代表の秘書が逮捕されたことを受け、昨夜からテレビ、新聞はこの件で持ちきりである。


 西松建設からの違法献金容疑と言われているが、それならば小沢代表の政治団体と同様に、西松建設側から献金を受け取っていた与野党の政治家はどうなるのか。何か釈然としない部分もある。


 秘書が実際は西松建設からの献金と認識し、ダミーの政治団体を隠(かく)れ蓑(みの)にしてもらっていたのなら問題である。しかし、献金を受けとる側が「このお金はどこから出ていますか」といちいち聞くことはない。善意の浄財(じょうざい)と思って受け取るのが普通である。


 検察が何を考え、最終的に何をしようとしているのか、推移を見守りたい。


 10時近くから小沢代表が記者会見をされたが、わかりやすかった。「秘書を信じているし、適切に処理されている」と明確に語り、「権力と闘う」と断言された。代表辞任についても一切触れなかった。現時点では当然の判断だと思う。


 平成14年7月23日、私の事務所の政治資金担当者である女性秘書が逮捕された。その女性秘書はその年の4月に子宮ガンの手術をし、その後放射線治療を受けていた。それにも関わらず、検察は彼女を逮捕した。20日間勾留されている間、治療は受けられない。


 検察の意図が私に不利な調書を取ることにあったのは目に見えていた。それでも私は「命が大事だ」と言い、早く20日間で出ることを優先する様にと弁護士に話した。案の定、その女性秘書の調書は検察の思い通りのものであった。


 公判でその女性秘書は「検察に言わされました」と証言してくれたが、日本の裁判は調書主義で、裁判長は法廷での真実の発言、叫びは採用してくれなかった。残念なことに、その女性秘書はガンが転移、進行し、翌15年9月、亡くなってしまった。


 亡くなる直前に私は保釈されたが、その女性秘書との面会は禁止という検察側の条件が付いており、お墓での対面となってしまった。


 その女性秘書を検察は起訴できなかった。最初から起訴できないことを承知で女性を拘束し、私に不利な調書をつくり、自分達の都合の良いシナリオ、ストーリーを描いていくのが検察のやり方である。


 小沢代表の秘書も、検察の誘導、弾圧的な取り調べに屈しないことである。正直に堂々と真実を述べ、信念を持って対処することが一番だ。


 今回の件を考えながら、政治とカネについて国会でしっかり議論を進めなくてはいけないと感じる。


 一つは、企業献金をなくすことである。


 国民一人当たり約250円、計約320億円もの国民の税金を政党助成金として戴きながら、企業献金、団体献金を受け取るのでは濡(ぬ)れ手(て)に粟(あわ)である。しかも、政治資金は税金のかからないお金だ。個人献金のみにして、その透明性を図ることが大事である。


 更には、政党助成金を廃止し、その代わりに幅広く国民に政治参加してもらうという意味で、パーティーセミナー等で浄財を戴く様にすることである。こうすれば、国民も理解してくれることだろう。


 また、企業、団体献金の制度を残しておくと迂回献金として利用されることになる。西松建設が二つの政治団体をつくり、そこを使って政治家の政治団体にお金を回すやり方は、典型的な迂回献金の手口である。政治の信頼回復を図る上でも、政治家一人一人が自浄能力、自浄作用を発揮することが急務ではないか。


 今回の件で、評論家宜しく、自分はさもさもきちんとやっておりますと言っている与党幹部、閣僚経験者、特に自民党の議員は、率先垂範(そっせんすいはん)して自民党国民政治協会のお金の使い方を公(おおやけ)にし、国民に提示するぐらいの自浄能力を発揮してもらいたい。


 幹事長決裁で何億ものお金が具体的にどう使われているのか、今の自民党の政治資金には透明性がない。他人の批判をするよりも、まず自ら国民に政治資金の使い方をガラス張りにし、透明性を確保することをお願いしたい。


 私は一人政党で政党助成金をもらっていないし、企業献金も該当しない。透明性においては一番だと自負しているが、ここは政治の信頼回復のため、与野党なく国民に政治資金の公開をしていこうではないかと訴えたい。もっともわかりやすい方法で。
(以下略)

 私は鈴木宗男という政治家を手放しで賞賛する者では決してないが(彼が逮捕以前に外務省に対して権柄づくで振る舞っていたとの報道は否定しがたいと私は思っている)、しかしここに書かれている捜査のやり方に関して言えば、特に鈴木氏の女性秘書に対する検察のやり方は、強引を通り過ぎて横暴・殺人的だと言ってよいのではないだろうか。


 しかも注目すべきは、「その女性秘書を検察は起訴できなかった」とある点である。つまり、今回の小沢氏の秘書の逮捕の件でも、この秘書を検察が起訴できるかどうかが一つの分かれ目であると言ってよいのではないだろうか。



 ところで、今回のような問題が起こる理由は、結局のところ、この国ではいまだに企業献金が認められている、という点にある。企業献金が認められているからこそ、それを個人献金と偽装したいわゆる迂回献金などというものも生じるのである。企業献金は全面禁止とするのが望ましく、この点では、鈴木宗男氏が書いていることに私は賛成である(ただ私自身は、政党助成金を廃止する必要はないと思っている)。


 企業が政治献金を行なうのは、どう考えても理屈に合わない。というのは、企業は自らの活動の結果として利潤を得ることを目指しており、そのために様々な出費を行なう存在だからである。つまり、企業が行なう出費は、皆利潤獲得という目的と結びついているわけだが、では、そのような出費の一項目として政治献金がある場合、政治献金はどのようにして利潤獲得と結びつくのか。利潤獲得と結びつくのなら、政治による利益誘導が図られたことになり、つまり政治の私物化が行なわれたことになり、これは社会的正義・公正に反する。他方、政治献金が利潤獲得に結びつかないのなら、そのような支出は当該企業にとって無駄であり、株主からその点を指弾されても仕方ない仕儀となろう。だから、どちらに転んでも、企業による政治献金は筋が通らないのである。


 今回の逮捕劇を期に、政治家は党派を超えて、企業献金の全面禁止のために尽力すべきではあるまいか。かねてから思っていたことだが、今改めてそう思う。


 最後に、備忘のために、共産党の機関紙である赤旗の2009年1月26日づけ記事を引用しておく。今回のようなケースで問題視されるべきは小沢氏だけでなく、多くの自民党議員もまたそうだ、ということをこの記事は示している。

西松建設政治団体
資金提供 全容わかる
小沢民主代表 3100万
尾身元財務相 2080万
二階経産相 868万


 準大手ゼネコン「西松建設」(東京都港区)の裏金疑惑にからみ、同社が企業献金の隠れみのとして設立したと指摘される二つの政治団体による政界への資金提供の全容が本紙の調べでわかりました。献金やパーティー券購入の形で、資金提供を受けていた政治家は、十七人(表参照、故人のぞく)にのぼります。総額では一億一千万円以上です。
本紙が調査


 麻生内閣二階俊博経済産業相は、個人と同氏が会長の政治団体「新しい波」(二階派)のパーティー券などであわせて八百六十八万円。


 自民党では、尾身幸次財務相が二千八十万円、加藤紘一元幹事長が千四百万円、藤井孝男元運輸相六百万円、建設大臣も務めた森喜朗元首相が五百万円など。麻生首相の地方再生担当の首相補佐官山口俊一衆院議員も二百万円です。


 民主党小沢一郎代表が三千百万円、山岡賢次国対委員長が二百万円のほか、小沢氏の地元、党岩手県連も九百万円受け取っています。


 このほか、ともに自民党出身である改革クラブ代表の渡辺秀央元郵政相、国民新党副代表の自見庄三郎元郵政相も。


 二つの政治団体は、「新政治問題研究会」(一九九五年十一月設立)と「未来産業研究会」(九九年六月設立)。政治資金収支報告書によると、両政治団体は、二〇〇六年の解散までに、「会費」と資金集めパーティーで、あわせて約五億九千万円のカネを集め、約四億七千万円を政界にばらまいています。


 同報告書の原本保存期間は三年。このため、総務省での閲覧で資金提供先が判明したのは、〇五年、〇六年の二年分だけでした。しかし、本紙は、資金提供を受けた側の政治家の資金管理団体、関連政治団体、政党支部などの収支報告書を二つの政治団体の設立時までさかのぼって調べました。


 両政治団体はともに、西松建設の土木本部営業管理部長だった人物が代表。今回の事件で、裏金を管理・支出する役割をもたされたとされる西松建設の子会社「松栄不動産」の役員も務めていました。所在地は東京都千代田区内のビルの一室に同居していました。


 両政治団体西松建設が正体を隠して、政界に献金するためにつくったトンネル政治団体です。こうした献金システムは、外為法違反容疑で逮捕された前社長、国沢幹雄容疑者(70)が発案したとされています。